八百二十ニ生目 厄介
ちょっと土を整えた。
そんなことをしていたらミアも来たらしい。
「おまたせしました! 話を聞いてきま……ええっ!? 何をやっているんですか、これは!?」
「あ、ミア。今実験的に土をいじっているから、少ししたら結果がでらと思うよ」
「そんなことが出来るんですか!? すごい……!」
さてこっからだな。
私はビンを取り出して借りてあった大きめの桶の中にたらす。
土いじりしていい畑を聞いたときに一緒にもらってきた。
……悲しいことにどの畑でもしていいといわれた。
逆に言えばヨソモノにいきなり触らせていいほどに畑が困窮している。
"無敵"で親しくとか考える必要すらなかった。
そして水魔法を使って桶の中に水を注ぎ入れた。
……そうなんだよね。
私は理論的には全ての魔法が使える下地がある。
ただやはりスキルで覚える魔法は正しい型があるというか強力よくばりセットだからね。
こういう落ち着いた環境で利用するなら問題ないがマニュアルで相手に強烈な力を叩きつけるのはなかなか怖い。
より効率的かつ強い力を知っている上でのアレンジが強いのだ。
今の私の水魔法は型無しである。
もちろん知識としてはどんなものがあるか知っている。
まだ身に付いたというには他のスキル魔法たちに大きく遅れをとるだけだ。
「何をしているんですか?」
「ちょっと変わった溶液を使って、うまく大地が蘇らないかと思って」
「な、なんですかそれ!?」
ミアは驚いてこちらを見るけれどまあ少し見ていてほしい。
……実はこれ私の血なんだよね。
私の血を色々混ぜ込んで1つの金に輝く変わった液体に仕上げてある。
私が依頼して研究所に作ってもらった。
いろんな効果を持つが一時的に魔力をブーストさせ回復する効果も持つ。
土の加護が作用して大地からエネルギーを貰えるわけだ。
前朱竜戦のときに2度目の死滅が……ハウコニファーが出てきたときにも多分使ったはずだ。
復活が早かった。
私が事前に渡しておいた。
ちなみに中身については語っていない。
畑にまくにしても飲むにしてもこう……血を? という問題がある。
実際は私の血を媒介にした魔法を構築し新たな液体として完成させている。
なので私の血は原料だが血そのものではないのだけれどそれを説明したところでというやつだ。
なのでこれは魔法の溶液それでよし!
さらさらっと少量を水に混ぜ込んだので希釈率が高く見た目は水だ。
これを全体的に……まずは目の前の畑へかけていく。
さらに地魔法を使おう。
[アースクリエイターズ 地面に干渉し大地を操り生み出す]
シンプルなテキストから漂う強ワザ感覚。
実際にこれはかなり大きく動かしてしまうがその分便利だ。
さっきまでの土魔法が細々と細工するものならこっちは大雑把に範囲をいじるものだ。
同時に私は"守護領界"を使う。
自身の感覚の延長だ。
私の血を介在させたところを自分の範囲内に収める。
街全体を自分だと判定するのは気が狂うけれど私の血だからね。
感覚的に畑の部分を自分のように把握できる。
さらに地魔法"ジオラークサーベイ"を使う。
地面を精査して調べ上げ私に情報を集める魔法だ。
大きく畑たちの地面が揺れ動かしながら私は情報を集めていく。
かけただけでは深く浸透しない水も今深く広く混ぜ合わせているのだ。
「な、な、な、ゆ、ゆ、ゆれ!?」
「あ、大丈夫大丈夫。今私がいじっているだけだから」
「ええっ!? どういうことなんですか!?」
ミアと話しつつも意識の方は地面の底へと向けていく。
はるか、ふかく、まざりあう。
わたしははたけ、じめん、いわ。
さっきまで重ねていた魔法たちはそれぞれにシナジーを持つしスキルもそこにシナジーがある。
ここまでやれば原因がなんであれ解決するか解決の芽が見える。
さてさて……
地面の底。
私の奥深く。
より遠くおちていく場所。
飲み込まれる?
一体どこに。なんなんだこの流れは。
それに……来ていない。
本来必要な力が……
うーん……
……これは……
「っふは!」
「ど、どうしました!?」
「少し深く潜りすぎた……戻ってこれたけれど」
大地に私の血液溶液と魔法とでどんどんと活性化しているのがわかった。
けれど一回意思を切り離しスキルを解く必要が出たのだ。
はぁ……! ちょっと疲れた!
「どういう……ことですか?」
「具体的な話はともかく、結果だけ言うとなぜか龍脈が枯れている。龍脈はその流れ跡だけが活発に引き込んでいて、たりない分を大地からのエネルギーで補おうと無理やり引っ張っている……これじゃあだめだ」
「ええっ、つ、つまりこのままだと、畑はダメということですか?」
ちょっと厄介な事になっていそうだ。




