八百十八生目 金木
その日村長さんに案内されミアさんは休みを私は村長さんと共に色々話を聞いていた。
「ほほー、余所の大陸から!」
「ええ、だからかなりここらへんの事情に疎くて」
「村長、ほら、冒険者さんなら登録を……」
「おお、そうじゃったそうじゃった」
村長さんが村長の奥さんにあれこれせっつかれ物置から1つのものを取り出してくる。
ああこれって……
見た目は磨かれているだけの無価値な手のひらの上にギリギリのる石に過ぎない。
しかしこれには魔法的要素が込められている。
……ギルド管理システム。
ギルド証の詳しい内容を見たり登録して仕事を受けられるようにしたりする。
冒険者ギルドが各村にあるだなんていうのは幻想だ。
そのかわりこの石でいろんなギルドが管理できる画期的な魔法道具だ。
ちなみに冒険者ギルドが街で使うのは美しく設置型だし性能もいいがこれは汎用できる代わりに性能が悪くあと見た目も凡。
ちなみに量産対策と盗難対策らしい。
まあそうだろうね。
寒村に宝を抱えられたらあっという間に狩られるよね。
大半は農業ギルドに利用される。
ただ冒険者も来るのでここで紹介する。
これで冒険者を名乗るゴロツキかゴロツキのような冒険者なのかが見分けがつくのだ。
ついでに身分登録して市民権というほどでもないが身元保証が受けられるわけだ。
私は冒険者の証をかざすと石が淡く輝く。
これで登録は完了したらしい。
村長が石から浮かぶ情報を受け取っていく。
「フムフム、確かに。冒険者の方で……えええっ!?」
「ど、どうしました!?」
「おや? これは?」
「ランクがV……嘘じゃろ?」
「そんなにすごいのかい?」
「すごいなんてもんじゃない! 生ける伝説じゃないか!」
「まあ!?」
村長が腰を抜かしてしまった。
慌てて奥さんとともになんとか椅子に座らせる。
……金属椅子だが触ったときすごく軽いし肌触りが柔らかい気がした。
椅子批評はともかく随分と驚かれてしまった。
ふたりでわあわあと言い合っている。
「あ、あのー……落ち着いて。あくまでこの大陸には初めて来ましたから」
「なんと! それはようこそ。確か噂では、外の大陸はこの大陸とまったく違うのだとか。周囲には島国しかないゆえ、それほど多くの情報が入ってくるわけでもないのでのう」
「ええ、まだ来たばかりですが、随分と驚かされています。例えば、木々と石についてなのですが、他の大陸では木は安価で金属が高価で……それに木がこんなに武器になったり、重々しいものじゃなかったので」
「なんと! 外の大陸では、木は安価なのですか! いやはや、だとすれば……やはり、この大地が翠竜様の恵みに満ち溢れているからでありましょうなあ」
翠竜か……今のところ繋がりの薄い5大竜である。
一応全員には合ったけれどほぼ顔を知っただけだ。
あのときはまるで人形のような姿ではあったものの同じ人形の姿で問い詰めるのは既に他の神がやっているだろうし。
そしてそんな安易なつながりを晒すほど愚かなタイプには見えなかった。
まあ人形はともかくとして。
翠竜の働きで価値が逆転しているならえらいこっちゃだ。
そして翠の大地に関することなんだけれど……
実は皇国や蒼の大陸では情報が恐ろしく少なかった。
ある程度目で見てみたいからそこまで追求していなかったのはあるけれど。
それでも近くの島ならともかく翠の大地情報が薄いのはひとえに立地の問題だ。
翠の大地は大陸という名の孤島と言われている。
他の大陸同士は赤道を跨いでもまあまあの距離感で繋がっている。
しかし翠の大地だけはどこからも繋がっていない。
点在する島国たちが唯一近くにあるだけ。
それで他の大陸よりもずっと情報と物資の交換がしにくいと言われている。
朱の大地は朱竜によって近づきにくく翠の大地は海に隔離された
場所としてそれぞれ独自性を保ってきた。
ちなみに今回船で来なかったが潮流や岩場の配置も最悪で船が消える魔の海域もあるらしい。
あと海の魔物が強くてそんなこんなでどんどん手を深入りできなくなっていたのだとか。
まあ〜誰だって最後の航海にはしたくないからね。
皇国と位置が違うせいか……そしてアノニマルースの気温調整機能がないから。
肌寒いが暖房に火をくべているので遠赤外線があったか……まって!?
薪だ!? 木だ!?
「あれ? 火にくべるのは木なんですね」
「それは同じなのかしら? 石は燃えないものね」
「この薪、1回入れれば1年は燃やし続けても持ちますからのう。話を聞く限り、そこらへんは違うかもしれませんの」
ごめんやっぱり知っている薪じゃなかった。




