表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け後編
1909/2401

八百十六生目 救助

 初心者冒険者が夢を見るのはやはりドラゴンと戦い姫を助けるみたいな栄光の部分だろう。

 そう思いながら薬草採取に苦しむのだ。

 ただ実際のところ……


 それの感じだと中位あたりからだいたい苦しむ事になる。

 上位勢はみんな冒険者の基本をおろそかにしない。

 冒険者はハンターではない。

 冒険者は危険を冒して探検し探るものだ。


 簡単に言うと今私がやっているみたいに有用そうなものを直感と知識で高速採取しつつ移動しなおかつ出来得る限り環境を荒らさないようにすることだ。

 道すがら使えそうな花や草は普通に取るし冒険者の解体ナイフは枝切り鋏だというネタもあるくらいだ。

 ちなみにこんなことに剣ゼロエネミーは使わずちゃんとナイフでやってます。


 断面を美しく切り落とすのは前提だ。

 爪とか指でやると断面が荒く傷の治りが遅くなる。

 あと化膿しやすい。


 さてうまい冒険者はそんなこんなを意識の片隅でしつつもちゃんと進むのが大事。

 追跡がおろそかになってはいけない。

 においの方向は辿れている。


 うーん……ただ。

 これはなんなんだ。

 追いかけた先から血のにおいだ。


 しばらく行けば出血の跡があった。

 ここで複数のニンゲンが争ったような痕跡がある。

 血は比較的新しい。


 探そう。出血量は小さくまだ助かるかもしれない。

 少し移動して……


 足跡は複数続いている……弱々しく隠れようとしているような足跡がひとり分。

 他ははしりまわりながら探している。力強い。

 さらに移動。


 血痕が続いている。

 出血量は少ないが出血を止められていない。

 怪我したのはもしや足か。


 そのまま移動していく。

 なるほど……追跡者はここで分かれている。

 おそらくはにおいで追えるタイプじゃなかったし見失ったところだろう。


 ただ正解者がいる。

 よろしくない傾向だ。

 そのまま追いかける。


 よし……音を捉えた。

 そのまま背後に忍び寄るように。


「だ、誰かーーっ!!」


 叫びだ。どう聴いても悲鳴である。

 女性の叫び。

 さて急いで向かえば間に合うはず!


 続いて耳に飛び込んで来たのは木材らしき音と弱者を追い詰めた下卑た声。

 こういうのどの大陸でもあるんだなあほんと!


「∃∏∅∑∌∂∝∇∥√∑∝∃∏!?(く、苦労をかけさせやがって……へへっ、見えねえところなら

傷ついても価値は落ちねえ、よな!?)」


「∏∅∏∑∅!!(こないで、こないで!!)」


 よしついた!

 見えた光景は……


 山賊風の薄汚れた格好をした男が倒れ込んでいる女に向かって木製の剣を差し向けていた。

 なんだこの光景。

 木剣だからチャンバラ……ではないよね。


 "観察"したが盗賊は強くない。

 しかもひとりだけか。

 どれだけ弱いかと言えば私が真後ろに回ってなかなか人様に見せられない顔をしているのに気づいていない。


「え、あ……?」


「ヒヒヒ、ビビって声も出せなくギャッ!?」


 ぽかりと"正気落とし"。

 1発でキレイに落ちてくれたようだ。

 よかったよかった。


 "正気落とし"は相手を気絶させることに特化した武技。

 つまり弱っているか確たる差がないとスキだらけの武技なんだよね。

 今はこれで大丈夫。


 ただ私は大丈夫で盗賊もあわ吹いて倒れたけれど女性だ。

 粗末な靴が破損してそこから血のにおい。

 休めなかったから出血が止まらなかったのか。


「あ、あなたは……!」


「"ヒーリング"……はい、応急処置を終えました」


「えっ!? ……血が止まってる……」


 もちろん"観察"時に言語は学習済み。

 相手は戸惑いつつも治療を受けてくれた。


「私は冒険者。まだ他にも相手がいるみたいだね。他にあなたの仲間は?」


「えっ、あっあの……」


「おっと!」


 そんなこと話している間に遠くから矢が飛んできた。

 しょっぱかったので手でつかむ。

 シャフト……矢じりじゃない部分が金属で矢じりが木製?


 とりあえず来た方向に魔法を使う。

 地面から土槍でかちあげられた盗賊がそのまま倒れ伏す。


 さらにふたりがそれを見て額に汗を流し突っ込んできた。

 ん〜……突っ込むのが1番いいか。

 高速で踏み込めば向こうが反応する前に前へ出られる。


 腹に掌底叩き込む。

 もうひとりは流れに合わせてひざで蹴り込んだ。

 型を習っているか習っていないかというのは結局のところ流れるような動きが出来るかどうからしい。


 やはり攻撃1つなんとか当てるというものはスキが大きくそれにいつまでも攻めができない。

 足さばきと攻撃とその次の動きが淀みないように動かせるのが型だそうだ。

 今私が残心をして倒れ伏している山賊風の彼らたちを見るとそう思う。


「き、気をつけて! まだひとりいるは……キャッ!」


 私は言葉を聞き終える前に駆けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ