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十七生目 調理

 生きるとは!

 からだが生命活動が行われている、まあこれは最低条件。

 逆に言えばただの最低基準。

 生命いのち謳歌おうかし楽しくハツラツと日々を過ごし全力で明日もまた楽しみと言える状態こそ理想!

 つまり!

 私はこれから"料理"を行いたい!

 わーパチパチパチパチ!

 セルフ拍手だ。

 ただし肉球は音を見事に消してくれるため無音。

 前足が180°ほどなら回転してくれたので拍手そのものは楽なんだけどね。

 座り込んでからするだけだ。


 さあ用意した材料はたくさんのきのみ!

 その代わり観察を行って慎重に集めたもの。

 観察レベル3で状態異常にしてきそうなスキルを持っていないか調べれるようになったけれど、そのさいに魔物では無くとも植物にも有効なのが分かった。

 一見そっくりな2つの赤く縦に長めに丸い小ぶりのきのみ。

 片方はみずみずしくやや生臭いものの美味しいきのみ。

 もう片方はなんと食べる事で毒に苦しむ危険な代物!

 観察をしたら状態異常にしてくるものとして毒と表示されていました。  うっかり前見かけたのと同じだと思って収穫しかけた……危ない。


 回収されたきのみたちの味わいは様々。

 私は驚いたけれど私の知っている前世のきのみはここまで多種多様な味はしないと思った。

 唐辛子のように辛い水気が豊富なきのみや塩漬けでもしたかのような酸っぱくかたいもの。

 塩そのものを食べたのかと思ったくらい小さなベリーみたいなきのみは驚いた。

 私の身体が人ではないという面が大きくて舌の感覚が違うのは確かだ。

 ついでに嗅覚がかなりの割合をしめて統合的に味になる。

 なるほど単品ではこれらを食べるのはなかなかつらい。

 だが! だからといって諦める私ではない!

 柔らかくするなら離乳食ではなくてももうそろそろ大丈夫だろうとお墨付きは貰っている。

 さあ、レッツクッキング!


 残念ながら火魔法を使える群れの仲間はいなかったが土魔法なら使えるとの事。

 器は土魔法で飛び出した槍から切り出したもの。

 崩れる前に切り取ればその欠片はもとには戻らないらしいのを利用した。

 切り出し役はイタチ。

 アイツもはや当たり前のように群れにいるからシャクだが依頼。

 斬るという事が一番得意なのはアイツだからね。

 こいつを地道に削り器の形にする。

 硬質化した土は焼かなくともかなり頑丈で水に浸しても溶け出したりしない。

 その代わり硬いから削るのに時間がかかった。

 私の頭にかぶれる程度の大きさに器を作成。

 さすがに私が持ち運べないほど大きくしては意味がない。


 なんとか形にした後に水飲み場の水をすくう。

 魚が来たら刻んで料理に浸してやろうかと思ったがいなかった。

 水を想定した量に調整し私の前足を清めてからきのみをあれやこれやたくさん入れる。

 ある程度は潰すのを忘れない。

 全部潰すと食感が失われるので難しい所。

 アクだらけながら栄養価は高いあれらは使わない。

 アクをうまく除く方法が思いつかないんで……

 よくよく混ぜ合わせ、塩のようなきのみを削り入れる。

 味を整え、単品だと味がよわいものの毒もなく汚れもとったキノコを砕いて投入。

 器が小さいから見つけた無毒キノコはそこそこ細かくしないと入らなかった。

 味が染み渡るようよく混ぜ合わせ完成。

 一応検証を重ね作っていったものだから大丈夫だとは思うが……

 ちょっと味見。

 ん! うまい!

 いや、そりゃあ人間が食べる物比べちゃ劣るけど、私がこの世界に来てから一番うまい!

 完成!

 きのみたっぷりピリ辛風キノコ混ぜ合わせ!

 酸味も効かせたので味に深みがある。

 ちなみに私はコレを作るのに1週間はかかったと思う。

 そう思うとちょっと泣けてくるなぁ……

 兄弟に振る舞って好評なら量産も考えよう。


「お姉ちゃん何しているの?」

 ちょうど良い時にハが!

「ちょっと試しに作ってた」

 料理という概念がないせいで言葉も無い。

 発音言語のみの人同士ならやりやすいのに……

「へぇ〜、あ、そうそうお姉ちゃん、今なんか凄く背中がかゆくて。届かないからかいてくれない?」

 興味はありそうだがそれよりも背中がかゆいと言わんばかりに目の前で伏せた。

 まあ、わかる。

 背中は針があるから押し付けづらいし足は届きづらいしね。

 大人たちは後ろ足で器用にやってるけど。

「はあい。……ここらへん?」

「もうちょっと上? あ、そうそうそこらへん」

 針の周りかな?

 そう思ってかいてやった。

 ……音もなく針が取れたよ?

 しかもごっそり。

 殆どの針が抜けてしまった!

 こ、こりゃあ不味い!

「うん? お姉ちゃん何か使っている? 魔法とか」

「いやあ、ちょっと、ちょっとね、鍛えるためにね! ヒーリングしているだけ!」

 おおぉ、セーフ!

 何とか生え揃った!

「あー、スッキリ! ありがとう!」

「かゆいー、あ、ふたりとも良い所に!」

 おっと入れ変わりでイが来た。

 今度はイの背中をかいてやる。

「あれ? お姉ちゃん、これボクの針じゃあ……」

「え? どれどれ?」

 ……イがよそ見した瞬間に私の腕が当たって針が抜けた。

 こ、これは……

 やはり、全部触ると抜けた。

 同じようにヒーリングで生やしてやる。

「ふぅ〜、スッキリした」

「わ、お兄ちゃんも針が抜けてる! もう生え直しているけれど」

 これはもしや……

「生え変わったのかもね、針」

 そう、いわゆる毛の生え変わりならぬ針の生え変わり。

 私も針が折れたさいはヒーリングすれば生え変わる。

「妹のは抜けないの?」

「私はつい先日抜けたからねー」

 外に連れ去られた時に、ね。

 バキッと折れたからね。

「そっか」

 イは理解はしていないだろうが納得はした様子。

 それよりも気になるものがあるという様子で視線を動かしている。

「なあ妹」

「うん?」

 私は落ちた針を集めていた。

 特に意味はないが何かに使えないかなーって。

「イタチがさっき妹が作ってた何かを食べてるが、良いのか?」

 思考が瞬間的に切り替わる。

 恐らく私史上最速で料理の方に目を向けた。

 イタチいいぃ!!

 私の作った料理食ってやがる!!

「イタチ殺すッ!!」

 跳ぶような勢いで喰いかかる。

 速攻でイタチも逃げる。

 あいつ、殆ど食べやがったな!

 肉食獣という部分どこへいきやがった!

 遠慮はいらない、殺意を、"私"を引き出す。

 いいいたあああちいいいいぃ!! 


「お姉ちゃん行っちゃったね」

「何だか途中で妹の雰囲気変わらなかったか?」

「怒ったからじゃない?」




 結局イタチは取り逃がした。

 足の速さと森の中でも自由に動ける土地勘で本気を出されると逃げられてしまう。

 厄介だ、やはり罠を仕掛けて置こうか。

 ……兄弟たちが引っかかりそうだからやめておこう。


 まあ、料理はまた作れば良い。

 気を切り替え別の作業で気を紛らわそう。

 すっかり時間が開いた名前付けの話。

 まあニックネームみたいな扱いになるけど。

 ここまで色々と考えて見た。

 統一感は欲しい。

 イロハ縛りも頑張る。

 私には確かに前世の記憶は殆ど無いがその分純粋な知識は比較的サルベージしやすい。

 そこから考えを引っ張り出すのに時間をかけた。

 色……は安直ながら便利。

 元素……うーん少しかたいかな?

 硬いと来たら石は?

 なんて悩み悩んで転がっていった結果最後に宝石にたどり着いた。

 宝石でついでに色も統一させた。


 インカローズ。

 ローズオーラ。

 ハックマナイト。


 長いのでインカ、ローズ、ハックかな?

 全て種類はあるものの赤色も含まれる宝石だ。

 明らかにマイナーな宝石を引っ張り出せるの、時間さえかかるのを何とか出来たら他のことにも使えるそうだ。

 役立ってくれよ、私の前世知識。

 そしていつか記憶も戻ってくれ……!

 ちなみにローズオーラは人工の宝石だ。

 私だけ人工、まあ特別というより変な物を引きずってるという感じで。

 まあ我ながらネーミング結構良い線言ってると思う。

 問題は誰とも共有化出来ないってことかな……

 サウンドウェーブでの発声、もうちょっと努力してみよう。


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