八百三生目 大石
金貨は"鑑定"したところ詳しいことはよくわからないけれど少なくとも亡国したレベルで古いものだった。
私の"鑑定"って生物の方に強いからこういうモノを知識で観るのは別ジャンルなんだよね。
なので他の石2つも……と言いたかったのだが。
[神格の石 大神級が生み出し渡した、希少な石。取り込むことで神格が大幅に上昇し同時に戦場の神ゼクシオのお墨付きを与える。また戦場の能力が得られる。ゼクシオは通常臣下にすらこれを与えない、厳しい試練を乗り越えたものへの勲等。手腕に惚惚して迷惑料込みで支払うに相応しいと感じたらしい]
[神使の石 小神級が神使を結ぶ際に使える石。つまりは神の見習いを増やせる。しかし使える相手は限られ、具体的には自分の関係者であり神力に目覚める兆候があり、同時に適合するいくつかの条件を満たす必要がある。カーリが大事に選んだ石。これは贈り物であり、神々は信頼の証として扱う。つまり少なくとも、ほぼ初対面の相手に贈るには少々重量があるものだ]
何か……何かが来てしまった!
ただこんなにわかる理由は触ってみてすぐに納得した。
頭の中にふと……この石たちの扱い方が思い浮かぶのだ。
どうやら石から脳か魂にインプットする力があるらしい。
それはそれでこわいなあ……
まあ湧き出る感じだったからどちらかといえば神として思いつく感じかな。
さてやることはたくさんあるんだけれど……
まずなによりも。
「ホルヴィロスー! おはよう! 昨日のごはんありがとう、おいしかったよ!」
「ローズおはよう! そうかなあ、フ、フフ……ほら、朝ごはんもできるよー!」
ホルヴィロスはしっぽをブンブンに振っていた。
「なるほど……神々の試練……」
私は早速食事のあとホルヴィロスに事情を説明した。
石も2つ並べてある。
水晶のように透き通り淡く輝いている神格の石とすべすべとしたつややかな神使の石だ。
「とりあえず他の神にも説明するけれど、便利な小間使いにされるのは凄い困るのと、あと押し付けられて揉めるのはすごく気が重いというか……」
「こういうときこそやっぱり蒼竜へどうにかしてもらうように言うのが1番ではあるんじゃないかなあ」
「まあ、本来はね」
一応連絡はするけれど返事すら期待していない。
そういう目をしているのがホルヴィロスにも伝わったらしい。
「……なるほど。わかった! 私の方でも動いてみるよ。まずはこのあと現物を見てみないとね。それでこれは?」
「この石? 報酬に貰ったんだよね。ただ、神格の石は使っちゃって良いのか、そして神使の石はつかうにしてもどうしようかと思って……」
「神使の石……! ようし、私が使われるぞう!」
「いや神を神使にすることはできないから」
そりゃそうである。
同格かなんならホルヴィロスは私より格上だ。
これは神力に目覚めさせるきっかけであり生まれつき使えているものには意味がない。
分かっているはずだろうにしょげていた。
「あと別にできたとしてホルヴィロスを神使にはしない」
「そんなあ」
「ともかく、神使に関しては優先度は低いと思っている。やっぱりまずは、依頼かな」
「それなら、やっぱり神格の石は取り込んだ方が良いんじゃあないかな。自分の強化もそうだけれど、自分は蒼竜の神使で戦場の神に認められている、というだけですごく意見を通しやすくなるだろうし」
「そう……なんだ?」
「簡単に言うと、大いなる神の力を取り込んでいる者は、大いなる神に保護または守護されているとみなされるからね。渡すさいも、そういう……少なくとも重要な友誼を結んだぐらいの、しっかりとしたものだからね。それに、蒼竜の神使なのは雰囲気でわかってしまうけれど、そういう石の力は見せようとおもったら見せれるというのも大きいかな」
「い、印籠だ……」
控えおろう控えおろう。
戦場の神を忌み嫌う相手には隠しておいて知らない相手や利用しようとしてくる相手にも普段はバレない。
そして戦場の神に親しんでたりそうでなくても恐れているあいてにはここぞというときに使えば大暴れもせずに済みそうだ。
「じゃ、使ってみてよ」
私は促されて石をイバラで持つ。
その意思を力を込めて砕く。
見た目よりもずっと脆いため簡単に崩れた。
私の周りにかけらが散る。
キラキラと美しく輝く宝石。
やがて私の身体へと飛び込みそこに物理的な何かがないかのように潜り込んだ。
なんだか体中がムズムズする。
私の身体が淡く輝き目の色が光に覆われるように黒く変化して。
さらにムズムズが私の中へと溶け込んでいくと光も目も元に戻った。
「落ち着いた?」
「うん、なんだか……不思議な感じだ。神格の欠片だったらもっとすんなりだったけれど、やっぱり大きいから違うみたい」




