八百一生目 帰宅
アンデッドたちは浄化された分は普通の暮らしをするか何かを成すために帰っていく。
何をするか迷っていたのはアノニマルースに誘えた。
というか大半の死体元がここの軍たちのせいなので正直かなりどうにかできたのだ。
生前から記憶や知識を引き継ぐ者は少ないながらにいるしそうでない者たちは元気にゴーレムやら霊体やらとして死にながら蘇ってる。
彼らはむしろ忠実な存在として生者に尽くすだろう。
あと普通にわいわい生活するだろう。
問題はニンゲンである。
これはもう何度も言いたいがどんなに強くなったとしても四方を囲まれてぶん殴られ続ければだいたいの相手は死ぬ。
朱竜すらも最低条件である必勝の神威を剥がせば脆弱なニンゲンたちと弱小のわたし達が囲んで叩くだけで最後は死ぬのだ。
つまり私はもっと簡単に倒される。
そんな状況で戦場の熱で昂ぶってまともに話が通じない掛ける2つの軍をやらなくてはならない。
私にも攻めまくるし相手の軍もどんどん斬り込むし今こんなアンデッドだの人形だのしているところで正気か? となる。
当然アンデッドたちも反撃してシンプルな思考のアンデッドも多いため反射的にそのまま戦闘にもつれ込むし。
なんか最終的に私も怒りながら空からメチャクチャ爆撃していた気がする。
出来得る限り派手なやつ。
神話の神が天から雷槌を鳴らして鎮める側の気持ちを理解したくはなかった。
口を開いてもこっちが正義だ向こうは怨敵であり邪悪とかしらねえーー!
戦争に正義はねえ!
こんなこと言うとアノニマルース軍の士気が下がりそうだが実際はもともとジャグナーが言っている。
とある日軍略系の本を読み終えて感想を聞かせてくれたときの言葉だった。
正義がない戦争だからこそこんなことしないで済むために手を尽くしそしてもしも起こってしまったら誠心誠意戦いすぐに終わらせなければいけないと。
むしろ早く戦争起きないか、とかの精神は不要ですらあるとも言い切っていた。
まあそこは私も同意である。
たださすがにニンゲン同士の争いはこの後はしらない。
私ここがどこか未だにわかっておらずなんなら個々の面々が争う理由もよくしらないし。
歴史背景なんか本来はあるはずだろうから私が止めるのはあくまでこの三つ巴になったメチャクチャな戦場だけだ。
あとはもう自由にしてもらうしかない。
そこは依頼にないし多分私がどうしても遺恨が残るだけだろう。
というわけでなんとか3軍とも止まったときには私はズタボロ毛玉だった。
生命力だけは癒やしてある。
ただし体力と精神力はそれでは治らないだけで。
本来なら行動力も枯渇するぞ……私が効率型だからなんとかなっただけだぞ……
ヒイヒイ言いながら軍隊を返していたら私の身体が輝き出した。
……もしかして。
「あ、もしかして終わりも勝手に判定さ――」
「――れるのかなって気持ち悪!」
私はいきなりワープさせられたようだ。
ただフラフラなところに唐突なワープしかも他人とくるとグルっと三半規管が揺れる。
ううっ吐きそうだ。
ただ吐くと後がつらいのでグッとこらえる。
そもそも何時間十何時間と叫びまわっていて吐く中身があるか怪しいものだが。
水くらいは補給していたけれど。
さて落ち着いて周囲を見てみると冒険者ギルドに戻ってきていた。
……ワープで。
みんなこっちを見ている。
「ど、どうも……」
メチャクチャ目立つ。
戦場の神はどうやら戦場以外はとんでもなくポンらしい。
受付がバタバタと慌てて駆け寄ってくる。
「ローズさん!? 突然消えたかと思ったらまた突然現れた!?」
「うん、今急に戻された……あの紙が原因みたいで。とんでもない依頼だったよ」
「こっちも依頼内容を把握していないままで、どうしようかと……! でもまあローズさんならなんとかするかなって」
「ギリギリねギリギリ! とりあえず報告をしたいかは書類をまとめるね」
「はーい、こっちの個室へどぞ」
案内された個室へ向かって……
さあてどう説明したらいいのやら。
もう疲れたので家に帰って寝たいんだけれども。
クタクタになって家に帰った時にすでに丸1日経過していたことに気づいた。
正直ギルド側も……つまりイタ吉たちも初の処理に手間取っているらしい。
私は[あたためて食べてネ]と書かれているメモ木片と盛り付けられた食事を見る。
あと鍋にスープ。
適切に火を入れ温め直しちゃんと食べてからベッドで即寝落ちした。
「おはよ〜……ございます〜……」
「………………」
「ああっ! 布団をかぶり直さないでっ! そういうのじゃない、そういうのじゃないですから!」
ぐっすり眠ったと思ったら古城で目を覚ました件について貴社に問い合わせをお願いします。




