八百生目 強制
手を休めない。
本来ここまで攻めることはそうそうできないがこれはまさしくうまくハマっているから。
スタミナの続く限り殴っているようで実はちゃんと攻撃に境目を作り回復を挟んでいる。
魔法な時はスタミナを癒やすことが出来るし殴っている時は魔法の準備が出来る。
何度も反撃を狙ってきているのを的確に壊してさらに時間をかせぐ。
吹き飛ばすして逃げるのを許さないように立ち回り殴打を重ねていく。
自爆が……自爆はどうしようか。
私は戦闘を止めないようにしながら脳内で別のことを考えていた。
自爆だ。
とりあえずざっと自爆位置を調べてもらったところ胴部のエネルギーをもとに頭部でオーバーロードして爆発させていた。
簡単に言えば首チョンパすれば機能停止し自爆だけはまぬがれるのだがそれはかなり難しい。
首はしっかりと保護されており腕をひっこ抜くより困難。
あと基礎がちゃんとできているから普通に顎を引いて首を隠しているため簡単には狙わせてくれない。
なんとかこう自爆寸前に狙いたい。
……っと!
反撃を打ち込まれる瞬間に強く弾き過ぎて吹き飛ばしてしまった。
つまり後ろへ下がって勢いを殺されたのだ。
とはいえ吹き飛んだのは事実。
地面に叩きつけられるように転がされていた。
私は距離を取らせずに間髪入れず接近。
向こうは人形特有のダメージがあろうと怯まぬ動きですぐ立ち上がり反撃のためひエネルギーを巡らせる。
私は……
「消えっ……!?」
こういうときこそ小技。
"ミニワープ"で背後に回り込んで展開し構築していた大槍を振るうのを遅らせる。
本当は関係なく投げれば届くはずなのだ。
これまで散々まともに通じていないという恐怖さえ植え付けられていなければ。
一瞬の遅れが致命打となった。
私は蹴り込んでさらに刺し針は追ってイバラで追撃。
さらに連続で叩き込んでトドメに"龍螺旋"!
うねったイバラが襲いかかり2回の爆発を引き起こした!
爆発の影響で吹き飛んだ相手を剣ゼロエネミーが先回りしている。
大剣型になり重みで一気に武技"叩きつけ"。
地面へと向かってぶっ飛ばした。
地面に穴を開けて倒れ込む人形。
その体は見るからにボロボロで。
「ム、無念……」
凄まじいエネルギーの高まりと共に自爆機能が……!
スパリと。
細長い曲線を描く曲刀ゼロエネミーが空から高く振り下ろされた。
"峰打ち"なし空高くギロチンのように最も無防備になった瞬間に。
途端に警戒音のように鳴り響くエネルギーの唸る音が萎んでいく。
やった自爆が止まった!
首チョンパされた人形は確かに耐久力はゼロである。
ただ機能停止しているだけなので死んだわけではないが。
最後の瞬間の耐久力調整すごい気を使ったし一瞬ヒヤッとした。
なんとか今回自爆を防げたのは大きな進歩だ。
情報共有して身体と頭を回収してなんとか武装だけ解除して蘇えさせられないかな。
魔術回路1つでも残っていたら自爆かワープかそれか火でも出されて逃げられたら洒落にならない。
少なくとも世界中どこからでも手軽に念話出来るみたいな能力は戦闘する人形たちにはなさそうだ。
あってもさすがにずっと交戦している時では難しいか。
……それで。
私帰っていいのだろうか。
……だめかな。
戦争止まってないもんね。
アンデッドたちは生者に勢いよく喰らいついているしニンゲンたちはニンゲンたちで争い合っている。
これを戦争は終わったというやつはいないだろう。
ここからの骨折りを想像して私は深い溜め息をついた。
結局そのあとのほうが大変だった。
戦闘の緊迫感は他に代えがたいものの剣ゼロエネミーの効果でどんどん戦意自体を奪っていったり。
私が威圧と"無敵"でなんとかしたり。
強い相手はもう殴ってなんとかするしかなかった。
"無敵"は今やアンデッドにも効く。
こういう自然発生したやつらには割と浄化が入るんだよね。
聖魔法ももちろん使っていくけれど。
果たして何時間走り回り飛び回り戦いまわったのだろう。
ぶん殴るべくは時にはアンデッドよりもニンゲンだなというのを実感した。
こういう時精神を惑わす類のスキルを使えれば……と思わざるを得ない。
それぐらい『みんななかよく(強制)』は難しかった。
アンデッドたちは案外浄化されればおとなしくなったり消え去って大いなる流れに還ったりそもそもの首謀者がいなくなったことに気づいて賢いやつが相談にきたりしたが……
そもそも2つのニンゲン軍はアンデッドは余計な横槍でしかなかった。
もう止まらない止まらない。
物理的な方とちゃんとした方の話し合いを何度もしてやっと停戦できたのだった。




