七百九十九生目 連打
アンデッドの騎兵たちは予想通り簡単に吹っ飛んでくれた。
向こうに勢いがあるから逆にこっちは単純なつっかえ棒に徹すればいいのだ。
剣ゼロエネミーは長くなり足元を撫でるように進み……
銃ビーストセージはマシンガンモードで私のイバラトゲを連続でなぎ払うように連射していく。
命中精度なんて気にしていない。
全面敵だし。
そもそも天然のアンデッドが発生するなんてどれだけ血に濡れた土地に飛ばされたんだ。
向こうは勢いをつけて突っ込んできているため騎鳥が倒れてそこに突っ込んでしまい……と玉突き事故が起こっている。
ひどく渋滞するようになってしまいやがてここを避けて突っ込んでいく。
よし今だ。
私は"ミニワープ"で上空に逃れる。
そのまま高速で飛ぶ。
飛び交う矢は私狙いではなく互いの軍狙い。
能力をフル活用してあたりの情報を探り……
いた神力持ち。だいぶ遠くの後方!
鱗と爪の首飾りを触って神力開放!
一気に制限されていたものが解き放たれ……それをうまく操り練っていく。
神力塊を作成。
その間にも加速して私は一気に接近。
向こうも気づいた。
けど関係ない。追加……加速!
また"ダイヤモンドブラスト"を背後に吹っ飛んで身体をぶっ飛ばす。
私を狙うかのような山なり射撃たちが背後に遠くの場所へ。
さよならーアンドこんにちはアンブッシュ!
一瞬で人形にたどり着いた私は急角度で蹴り飛ばす。
人形の姿はミナーヴァと違う。
こちらも容姿端麗だが。
ミナーヴァが細身で中性的ならばこちらはガッシリとしたイケメンだ。
ただ顔立ちがよすぎたり骨格がニンゲンのそれではないため性別が曖昧に見えるだけだ。
つまり"観察"した結果種族も違うことがわかっている。
それに……
「だ、誰、だ! グっ……! 自機ニ許しなく蹴りヲ入れる愚か者ハ……!」
よし情報は伝わっていないな。
敵幹部が囲っているところから攻撃を繋いだり無理やり短距離ワープに巻き込んで距離を取った。
この範囲なら相手を隔離できる。
神力塊を1つ使って世界を変える。
"大地の神域"!
一気に場の雰囲気が変わって戦場の荒れた平原からゴツゴツして緑豊かな荒野へと変わる。
「っ! 神! 限定神域展開、投擲鎗!」
速攻で投げるための槍が光で造られる。
神力でできたその武器はおそらく必中か貫通の概念を得ている。
速度は良いけれどやはり練度が弱い。
これなら。
「もう見たことがある!」
「ハアァッ!」
私が準備している間に力強く投げられた槍。
不自然なカーブを描いて私に襲ってきた。
なるほど必中のほうだ。
それはありがたい。
私は鎧針を生やして……
強烈に弾いた!
「何っ!?」
「真似っ子だよ!」
限定神域分の神力塊を使って私の鎧針と爪そして牙に神力の芯が通った光を纏う。
そのまま突撃。
むこうは砕かれた槍を再構築しているようだが間に合わない。
槍より先に私がたどり着く。
そして大振りの1発!
深く突き刺さるようにヒット!
補助魔法も飛びながら必死に攻めに集中して用意してあった。
深々と入った武技"地魔牙砕"。
相手を砕くまでにはいかないまでも致命的に入った。
ミナーヴァよりも大柄とはいえ多少程度の差しかない。
回復が追いつかないほどな叩き込んでやれば倒せる。
もちろんそれは力量差と知識差ゆえだが。
さっき観た限りではミナーヴァよりも弱い。
世界の報告を聞くに多分ミナーヴァが強かったのであって目の前の相手は一般的なレベルで強かったのだろう。
しかしやはり1回上位と戦っておいたおかげでもはや中位は気をつけて畳み掛ければいいまでに落ち着いてしまった。
冒険者の魔物狩りは知識との戦いでもある。
何の魔物がどういう生態でどのような活動をして何が強く何が弱いかを把握していなければ。
的確に弱点を突かれればどのような相手もハメるレベルで倒せるだろう。
まあ今回はそこに力量差が入るからね!
正直今回は遅延作戦もないしとにかく特攻して落とす。
「グッ、突然わけのわからない相手に……!」
向こうも慌てて持ち直そうとしているけれど一気に崩していく。
限定神域武装以外は普通に通るのだ。
イバラを連打し土槍を放ちまくり前脚の爪で投げ槍を切り裂いて鞭剣ゼロエネミーによる武技"回転斬り"を当て乱打しつつショットガンビーストセージの武技"爆散華"で弾丸を撒き散らし。
「なっ、手数が、ぐっ!?」
投げ槍を噛み砕いて尾のイバラで毒を浴びせイバラによる武技"猫舌打ち"そして武技"連牙"してつなぎ武技"拷問払い"で執拗にうちつけたあと火魔法で炎を吹き出してかかとを叩き込み槍を鎧針で受けて壊した。




