七百九十六生目 代償
私の研究話はともかくとして。
私が回復用植物ポッドベッドに浸かっている間にも世間は動き出していた。
一応街の方に連絡係を置いてきたので即戦場帰りできるがその出番はなかった。
とりあえず1度撃退来たところは再度襲われることはなかった。
ただ警戒を緩める理由にはならないだけで。
現在も警備体制は強めにひかれている。
世界中からの情報が集まるたびに多くの者……私含む多くのものが頭を悩ませることに。
まず基本的に大都市を目指して行進している。
これは間にあれこれ村があるところも向かう方向的に都市が毎度あった。
次に世界中だった。
やはり広い範囲で全大陸襲われており把握できるだけで50箇所を超えている。
ちなみに国の中でたくさん襲われているというところは少ないが国土が広い帝国なんかは何箇所か襲われている。
つまり世界中まばらにニンゲンが集まっている箇所を襲撃されている。
逆にニンゲンのいない場所……迷宮や山奥は至って平和だ。
まるで魔王がニンゲンたちを苦しめようとしているみたいだとちまたの噂で流れ出している。
なお当の魔王は先日の戦闘でイカれてしまった魔王の乗り物リバイアサン修復に忙しい。
なんとかしのいだ街も少なくはない。
さすがに快勝といえるところは少ないが勝ちを得たところは少なくない。
ただやはり多いのは拮抗状態に陥ったところ。
なんとか盛り返しても人形が全部跳ね返すことも少なくないらしい。
軍事行動にはない謎の閃光やら謎の結界が人形から守ったり人形を封じたりしてなんとかなっている。
まあこれはわかる。
土地の守り神たちがファイトしているのだ。
ただ多くの守り神たちはそこまで強くない。
人形の強さはムラがあるようなのでどうにか良いのがひければといったところ。
5大竜たちは静観の構え。
正確には裏でめちゃくちゃ情報とびかっている。
珍しく……本当に珍しく……蒼竜から連絡がきて詳細を聞かれたし
祖銀ともメッセージをやり取りした。
こんなこと出来るのは大神以上確定だからだ。
もしこれが大神による大神への挑発行為ならば5大竜は断じて許すことはできないだろう。
私が人形の材料が翠の大地だと知らせたら翠竜に即連絡が飛んだらしい。
ニンゲンたちは割と積極的に5大竜を信仰してくれている。
ゆえにニンゲンの都市を襲うというのが少なくとも5大竜たちの癇に障るようだ。
わざとであれ未必の故意であれ。
そしてごくわずかだが私が治療している1週間前後で攻め落とされた都市もあった。
やはり小国が厳しかったらしい。
あとたまたま防衛に回せなかった都市。
攻め落とされた街では人形たちが居座り砦を築きだしている。
目的はわからないが……少なくともニンゲンへは敵対的だ。
そしてンメル族への取り調べも進んだ。
幹部クラスをアノニマルースでの聞き取りに成功。
彼らはまずンメル族元族長と人形が果たし合って人形が瞬殺した。
今では考えられないが強さそのものは他の氏族とそんなに変わらなかったせいだ。
人形はンメル族を従え力を増していった。
空気中のエネルギーを濃くしていく方法はいくつかあるが人為的に行い効率的に氏族を強化……つまり上位個体ゾーンにした。
アノニマルースも似たようなことが勝手になっているのでみんな良い方向に変貌していっているわけだ。
城みたいなポイントの真上はだいたい龍脈上で龍穴も近くにある。
ということで本丸を占拠し人為的にエネルギーの濃い場所を作って強化して……目標を告げた。
ニンゲンの街占拠だ。
人形は部下たちに見返りを提供した。
さらなる強さ……さらなる繁栄……そしてだれにも脅かされない生活。
甘い言葉だった。特に人形の力に匹敵するやもしれないほどのものが人形の主から与えられると効けばなおさらだ。
あまりに怪しい話だがすでに族長が殺されている以上彼らは目先の欲にあっさり釣られた。
代償として聖戦を棄てることとなっても。
文句があるものも多かったろうに氏族の結束が悪い方に向いた瞬間だった。
そしてあとは知ってのとおりだ。
後の祭りである。
そして今皇国の都のほうで捕まえたらしい魔物を取り調べている段階だ。
ただこれまでの流れからすると有力な追加情報はないだろう。
とりあえず主に対して全然情報を渡さないようにしておきながらその素晴らしさだけふんだんに聞かせられうんざり気味だったらしい。
情報統制しっかりされてらあ。
逆に言えば嫌な予感しかしないものの次の情報は落とされた都市からぐらいだろうとも予想されている。
犯人につながる情報が少しでも集まれば良いのだが。
ただ……人形レベルで強く出来るって……いやまさかね。




