七百九十五生目 執筆
現代と過去の違いで果たしてこれでただしいのか悩むのはともかく。
とにかく全部見せてくれてちゃんと動くよと言った上で『だが使わせるとは言っていないし解読して理解できるとは言っていない』というものになっている。
機械が簡単なねじで止められていて裏の蓋を外したら大量の未知な配線と基盤があらわになってなんもわからん状態。
しかも出来るのは裏蓋を外せるだけであり電源すらどうやってつけるのかわからない。
コンセントからちゃんと給電されてるのか……それとボタンはどこにあるのか……起動後のパスワードって何をどうすれば……
本当なら腰を据えてじっくり解析したいが残念ながら世界的にそれどころではない。
さらに言うと私はここを報告する義務を担い……
報告されたあとしばらくは立入禁止になる。
ようは国かギルドの管轄になるわけだ。
私としては調べられないのが困る。
しかし無駄に手を入れて壊しちゃいました! でごめんなさいでは済まない。
とにかく今は細部にいたるまで記憶し記録をとるフェーズ。
アノニマルースで再現出来るのが理想。
どこになんの材質が使われているか肌触りまで書き込んでおく。
魔法記述そのものはなんとか頭の中に入っているけれど材質とか雰囲気や仕上がりや大きさ1つ1つはどんどんわからなくなっていくし調べないとわからない。
今この場で細かく測り見ていくしかない。
それに地下だということも大事かもしれないので魔法を駆使し地上まで何十メートルなのかも測っておく。
とにかく熱中して書きまくる。
今しかない。いましかないのだから。
どうせこのあとはしばらく前線行きなの確定しているから!
しんどい未来に想いをはせつつひと息つく。
やっととりあえずここまで書ければってところまでたどり着いた。
ふぅ……よしペンを置い
「ローーズ!!」
「うわああぁ!?」
私の真横から突如声が!
びっくりして見やればそこには見覚えのある顔。
……ホルヴィロスだ。
「え? ホルヴィロス? なんでここに、いつの間に!?」
「いや、さっきから呼んでいたのに無反応だったじゃん。どれだけ集中して……うわイバラ大量に使って同時執筆している!」
いきなり猫が喋ったみたいなリアクションをされた。
ソワソワしているしうちの子天才……!? みたいな目で見られている。
「便利だよねこれ」
「そうじゃなくて、ローズ、全然帰ってこないよね? それに軽く診た感じ魔法で継ぎ接ぎしてあるだけだよね? また寿命が減りそうなことを……」
「ご、ごめん。とにかくこれを仕上げたくて」
「他のコたちはむしろ順調に寿命が伸びていそうなのにローズはどうしてこうなるかな……」
ホルヴィロスはその白い毛皮らしき植物の身体で私のそばにいた。
いつの間にか私のもとにワープしてきたらしい。
承認したかな? ……ログにした形跡があるや。
それにしても寿命か……
確かにトランスやレベル上昇それに医療と食生活の充実や文化圏の形成そして十二分な鍛え方のおかげでみんなの寿命は伸びている……とホルヴィロスに聞いた。
魔物では珍しくないらしい。
ニンゲンも1回はトランスしておくのはそのあたりに意味合いあるし。
特にアノニマルースで特別な力の混合に長く触れていて……ようは神力だと龍脈だの迷宮の濃いただようエネルギーだのに触れていて徐々にだが変質していっているらしい。
まだわからないが大幅に生物の質が向上する向きがあるとかなんとか。
ちょっと検証不足だが。
よく半精神体だと寿命が極端に長いとか言うやつかな。
まあ半精神体になる魔物ってそんないないけれど。
神秘的な存在に近づいているのかもはしれない。
そして一方私は順調に弱っていくのであった。
なんでなんだ!
まあそこも……なんとなくわかっている。
みんなの寿命向上は魂の活性化が肉体にもいい影響を与えむしろ溢れ出しそうだから。
しかし私は魂が大食らいすぎてなおかつ喰らいたくないダメージ背負って肉体に負荷がかかると魂にも負荷がかかっていく。
異世界から転生して特殊な混ざった魂故にあまりよくない……とはユウレンからずっと昔に聞かされていたとおりだ。
蒼竜が裏でなんやかんややっているようだからそれ待ちだ。
そこはホルヴィロスもわかってはいる。
わかってはいても心配するのをやめられない感じだろう。
「っとそうだ! ローズ! ほら、帰るよ、そして治療!」
「ええっ、ちょっと今まだ良いところで……」
「ほらほら、ローズの身体の疲労は取らないと、魂は専門外なんだからちょっとでも万全な状態にしておかないとね」
「ぬおおー、し、資料は集めさせてー!!」
実際のところ私が元気なのはホルヴィロスでいつも完璧に仕上げてくれているという自覚はある。
結局私は資料を一通り集めて退散するはめになった。
……外は1日経っていた。




