七百九十三生目 自爆
鋼鉄の迷宮管理室では私がこの場にいてだいたいの機能を使えるよう拡張してある。
管理者権限便利。
さて時間通りならばできているはずだ。
私が人形のパーツを拾ったのは墓に埋めるためではない。
材料あつめでもない。
ゴーレムの解析に……かけるのだ。
解析は作成と結構別ジャンルで他人のをのぞくには専用の機材がいる。
鋼鉄の迷宮ではたくさんの生きたゴーレムたちが生み出されている。
そのノウハウ蓄積も多く意外とやろうと思えば出来そうと思いついてはいた。
ただやるものが特になくて……
こうあるよね。
とりあえずできた機能はあるものの使う先がないこと。
その機能の1つである解析と再生機能が役立つ時が来た。
そう……この機能のメインは再生である。
破損したゴーレムをちゃんと調べてもとに戻すという機能だ。
これに人形の部品をぶちこんでみた。
悪いが来世への予約はキャンセルさせてもらう。
ただ……自爆したので重要な部品はほとんどバラバラかつくろこげ。
正直成功確率は五分より悪い。
少なくともハードウェアの復旧は無理だ。
サルベージさせてソフトウェアの救出をしている。
私はモニターを起動して指示を出し状況を見る。
モニターの中に書かれているのは……
ふーむまずハードウェアの復旧はまず無理だ。
翠の大地にしかない木材を持ってして造られていると書かれていた通り金属では代用できないらしい。
ぶっちゃけ並の鍛えた金属より断然硬く軽かったもんね。
なんなんあの木。
なのでソフトウェアのサルベージなのだが……これは……
うーん……とりあえず起動!
モニタ内のウィンドウが新たに開き黒い画面が開く。
やがてノイズが流れ出しモニタにドッド絵が表示された。
……人形の姿だ。
人形がピコピコと動いている。
[システムデータ:起動中……]
画面下部に文字とゲージが表示されだした。
[メモリ初期化中]
[システムファイル起動中]
[システムファイルが一部破損しています。出荷時設定で起動……]
[セーブファイルを探しています]
[セーブファイルが破損しています。セーブ・ロードをなしで起動し]
[類似セーブファイル介入確認]
[疑似状態で開始]
[こんにちは、ゲストさん]
おお起動した。
一瞬やばかったけれどどうやら無理やり破損した記憶に整合性を持たせて直接繋いだらしい。
よかった端子が黒焦げで使えなくなっていたからかなり無茶なハックをしないといけなかったんだよね。
ただ逆に言えばサルベージがうまくいくかは……あやしい。
起動が進んでいることを示す円の回転が順調に進んでいる。
やがて完全にロード画面がなくなった。
「おはようごザいます、ゲストさま。ところデ、ここハどこでしょうか? システムデータに登録されタ肉体と違うようだガ」
「おお! 動いた! 半分成功!」
「フむ、これは低コスト化して2次元上に肉体を再現しタ状態なのですネ。ゲスト様、お手数ですガ、今の状態を解説してもらってモ?」
「ああ、うん」
私はピコピコ動く人形の姿を見ながらざっくりかいつまんで話していく。
種族名フラプース。識別番号NF3778。自爆して破損したところを連れてきた。
「――でまあ、キミが大勢を傷つけようとしていたから、私たちが止めた。だから端的に言うと、あの瞬間は私とキミは敵対関係にあったね。ただ、そっちの背後関係等は全然話してくれなかったんだ」
「……エラー。該当する記憶ハ見つかりません。なんだか遠い誰かの話ヲ聞いているようダ」
「それもまあ仕方ないかなぁ。記憶領域ごと多くは壊れちゃっていたし……」
気の抜けるようなSEと共にエラー文字が出る。
顔もなんだか遠い目をしているようにも見えた。
とりあえずあれだな……いきなり暴れ出さないで良かった。
一応プログラムにチェック走らせてはいたけれどやはり素体は危険ではなかった。
あくまで後天的学習で人類敵対を学んでいる。
ええと。
「ところで、実はそんな出会いだから私はそっちの機体の目的を知らないんだけれど、どういう目的の機体なの?」
「ハイ、では当機の説明ヲしますゲスト様。当機NF3000シリーズはより美しク、よりスマートにヲコンセプトとして開発された、連携型オールマイティ活動機体。従来ノモデルヨり、見た目とサイズ感にこだわっており、前機体が巨大さだったものを小型化シ、見た目モニンゲン界においての美貌を搭載。複数の型がアり、どれを選ぶかデ個性が演出できる」
「あーっとごめん、そこらへんかっ飛ばして、結局何を目的とした機体なの?」
「……デは、改めて。この機体モデルは、多くの生物と交流、または引率をして、防衛に重きを置いたお手伝いロボ。どうぞ宜しく」
色々言いたいことはあるけれど……
お手伝いロボに自爆機能をつけるな。




