七百九十ニ生目 混雑
「ふんぬッ……!」
最後の最後。
魔法に出来得る限り頼らず使っても特殊な結果か錬金術で仕上げたもので済ませてあって。
そのせいでなんと扉が開きかけて止まった。
……仕掛けが錆びついていた。
もう鍵はあいているので大丈夫だろうということで最後の最後で結局力で開くことに。
こう、なんというか。
しまらないなあ、もう!
ぐっと力を込めて押せば最後の仕掛けがやっと動き出す。
扉がガラガラと開いていく。
単なる岩の壁に見える扉が部屋の中へと導いてくれる。
中に入るとそこは1つのこじんまりとした廊下。
城の中で空白を練って造られているためか進むたびに曲がる。
それにしても……
ここを開いてついに空間の把握ができた。
今まで私の脳内マッピングにまったく引っかからなかったのに……
すごく慎重に造られている。
未知の力を感じる……
当時の異世界人たちが力を合わせてつくったチート力かもしれない。
廊下は次々に下へ降りていってどうやら地下へ向かっているらしい。
途中から廊下が広くなり地下に突入したことがわかる。
「……って! え、エレベーター!?」
さらに下っていくとなんともまあ宙に吊るされた鉄格子の小部屋が。
まあこれをエレベーターと呼ぶのは憚られるかもしれない。
意味は同じでもなんとなく昇降機と呼びたくなるレトロかつ重厚な雰囲気が漂う。
私は中に慎重にのりこみ落ちないことをチェック。
中にあるバカでかいレバーを全身使って引けば何かが噛み合ったらしい音と共に昇降機が振動する。
不安に思っているとゆっくりとだが下降しはじめた。
装置は安定しているらしい。
いまのところ目立つきしみの音はない。
ただ金属の音がガラガラと騒がしく響くのみだ。
途中でガチャリと何度も音を立てながらわりかしスムーズに落ちていく。
ギアチェンジでもしているのか加速しているようだ。
……どこまで下がるんだろう。
たっぷりと時間をかけてやっとついた。
鉄格子が開き外へと出してもらえる。
扉をくぐると……
1つの大きな部屋。
散々下ってきたのを扱うためのような広い天井。
そして……円卓。
石を磨いて作ったのだろう机と座り心地の良さそうな木の椅子たち。
それらが強力な保存魔法をかけられていまだここにいた。
時ごと止めるほどのものではないがそれに近い効果をもたらしている。
「そうかあ、ここか……ここが会場なんだ。ここが始まりなんだ!」
私は駆け出しそうな気持ちを抑えきれずスキップを踏むように駆け寄る。
文献にしかなかった伝説の場所!
その日に作られ解体されたものかと思っていた会場!
「本物だ! 本物の異世界来訪者大集合会会場だ!! これは歴史的発見だ!! アハハヤハハーーッ!」
私は飛んだり跳ねたりしつつ早速会場の解析および探索に移った。
ここだ! ここに絶対なにかある!
私がさっきから周囲に感じている張り巡らされた魔法の感触もある。
おそらくこの会場全体が儀式!
たっぷり刻まれつつも自然に見せた魔法記述たちを見せつけられて黙っているほど大人しくない。
そして……
報告に戻ったらここは国が認知してしまう。
そりゃあ歴史的文化遺産だもの。
私がしばらく立ち入りできなくなるかもしれない。
それまでに私が最悪書き写す。
文献もあればなおいい。
この広間けっこう広くてさっきまでの嫌らしい隠し方をみるにまだまだ何か仕込まれていそうだし。
そして何より過去の異世界人たちが語りかけてくるような気分になるのだ。
すごく挑発的な部分が読み取れる。
この自分の力使えるものなら使ってみろと。
やってやろうじゃないか!
相当な自信家だ。間違いない。
過去の偉人たちが残した挑戦状……買った!
1時間後。
私はフラフラとした足取りで地球の迷宮改め鋼鉄の迷宮管理室にたどり着いた。
「なぁんいどたかぁぃよぉ〜〜……」
管理者の座るあたりに倒れかかる。
いやあ無理。
自信の裏付けみたいな量と質だった。
特にアレはどうやらひとりで書いたらしい。
そしてひどいクセがある。
簡単に言うとブラックボックスと化した挙げ句スパゲティコードだった。
当然のようにセキュリティコードもたくさん仕込まれていてまずはアレをどうにかしないとまともに見させてはくれない……というところまではたどり着けた。
凄まじく疲れたが……
探索と同時にやったせいで余計に。
私が戻ってきたのは時間もあったからだ。
直通のゲートを作っておいたからいつでも戻れる。
私はこっちでもやることがあるから途中で切り上げざるを得なかった。
楽しみはあとに取っておこう。
今はこっちだ。




