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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け
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七百八十八生目 歓声

 何もかもを飲み込むような轟音。

 そして衝撃波。

 私ももはや途中から無我夢中で何がなんだかわからない。


 ただ私が五体満足で少し離れた場所に頭を地面に埋もれる程度でいるということはワープが成功したということだ。

 よかった……爆発系って何段階も衝撃が来やすいしなにより凄まじく威力が高く生半可な防ぎは全部取られる。

 私は……生きていた。そう私は。


 全身土にまみれ口から何かを吐き出せば砂利と牙と血。

 ううーん……内臓から出てないよね?

 あいたっ全身の痛みが戻ってきた!


 骨! 絶対骨いってる!

 内臓ギリ生きているかもしれない!

 か、回復回復!


「いだだだだだ…………」


 立とうと思って結局私は倒れ込んだ。

 ちなみに牙は魔法で後で生やす。

 サメの牙とは違って永久歯のはずなんで……


 ガス欠ではないので何分か魔法と毒の自己転嫁による回復でなんとか立ち上がるまでにはなった。

 ……牙は回収しとこ。

 あとで生えなかったら困る。

 その時は牙を接合するよう魔法を使うしかない。


 未だ身体のあちこちにエラーを抱えつつ歩く。

 いや歩くのやめよう。浮遊しよう。

 地面ギリギリ行けばそこまでこわくないし。


 ふよふよ受けば少なくとも筋肉が傷まなくなった。

 ああ〜ひねったなあこりゃ。

 骨折も困るがひねって捻挫するとなかなか治らないことがある。


 特に痛みがね。

 ちゃんと帰ったらホルヴィロスに見てもらわないとな……


 しばらくいけばそれが見えた。

 焼け焦げた大地と爆心地の何か。

 もはやそれを人形と呼ぶものはいない。


 しかし砕けた破片の節々に。

 ゴーレム部品らしきものたちに。

 面影を見た。


「はぁ……ゴーレムとはいえ自爆を本当にするなんて。というかあそこまでボロボロだったのに自爆成功するあたり、どんだけ自爆前提の作りなんだ」


 単純かもしれないがやるせない気持ちになった。

 あそこまで言葉を交わせるとただのゴーレムでもまるで生きていた。

 それをこんな扱いである。


 そしてきっと人形も納得して逝った。

 ならば私がそこに余計なちゃちゃ入れするのは無粋なのだろう。

 それでも気持ちはいつわれないが。


「せめて来世は、楽しい異世界へ」







 さて残念ながら戦時中に感傷へひたるわけにはいかない。

 そもそも戦闘である以上ベッドした命に対してあれこれ言うのも多分侮辱的だろう。

 ゴーレムを命に換算していいかはまた別問題として。


 私が出来るのはさっさと戦争を終わらせること。

 そしてこのふざけた一連の出来事のツケを製造者へと払わせることだ。

 私は人形の部品を回収してからその場から飛び立った。


 戦争の犠牲者は戦後にまとめて追悼式が行われる。

 私が今できるのはこの戦争で犠牲者をギリギリまで減らすこと。

 勝手に追悼して立ち止まることじゃない。


 自分を叱咤激励しつつ戦場についた。

 上空から見るだけでもはやハチャメチャである。

 ただ巨大鬼たちはわかりやすく味方は全員黒を巻いているし。


 魔物勢はアノニマルースはフル装備に対してンメル族の従えている魔物たちは素のまま。

 さらにニンゲンたちは見るだけでサイズが違うので敵味方の混乱は下げれているようだ。

 ただ元ンメル族の吸収合併されていた氏族がしれっと服を黒染めして戻っているのが見えて少し笑ってしまった。


 彼らも聖戦ならしたいらしい。

 害はなさそうなので連絡だけしておきつつ膨れ上がって喰い穴だらけのンメル族軍をみる。

 さあてやってみよう。


 神力封印をしてと。

 声を響かせるように光神術"エコーコレクト"を使い。

 さらには私の気配をいじって全力で魅せつける方向にする。


 急激に存在感が増す私は見上げる巨大鬼たちに向かって宣言した。


「ンメル族族長、討ち取ったり!!」









 そこからはもはやグダグダといってもよかった。

 唖然とするンメル族。

 関係ないと暴れ出すンメル族。


 よくわかんねーけど下剋上チャンスだと身内を攻めるンメル族。

 まとめておさめることもできずパニックになるンメル族。

 もはやめちゃくちゃだったので逆に早く対処できた。


 もう私の出番はあんまりなかったと言ってもいい。

 そこから犠牲が増えることはほとんどなかった。

 死傷者は少なく(死んでも私か私からスキルを借りて気合い入れて治した)思ったより損害も少なく。


 私の記憶があいまいになる程度にてんてこ舞いしていたらいつの間にか日が暮れて戦場の猛りも消えていた。

 こうして日が昇ってから沈むまでの半日をかけて行われた大蜂起は無事鎮圧されたのだった。

 もちろん無事ではなかった命もある。


 戦後処理は時間がかかるためまだ後日。

 しめやかに追悼式が行われ……

 追悼式はそのまま勝利の宴へと変わった。


 死した者たちにもう戦いは終わったのだと告げるために。

 高らかな歓声は夜の空へと消えていった。

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