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百八十三生目 一時

 こんにちは、そろそろこんばんは。

 ここは私達の群れの近く。

 私はインカと向き合っていた。


「妹、本当に良いのか?」

「うん、頼めるのはインカだけだから」

「妹……」


 私はインカをまっすぐ見つめる。

 インカも私を優しく見つめ返す。

 互いの瞳に余計なものは映らずに耳に届くのは鼓動の音のみ。


 インカの鼓動の高鳴りが耳に届けば私の鼓動も合わせて高鳴る。

 "読心"を通してもハッキリわかるその気持ち。

 2つの鼓動は徐々にシンクロしてゆき最後には溶け合って同じになる。


 お互いの気持ちが交差しあい"読心"により感化される。

 合わさった音が快く響けば私とインカの身体もゆっくりと近づいて……






「あのふた組を連れて外界にか〜!! ムリがあるって〜〜!!」

「そうは言ってもインカくらいしかまとめられないんだもの!!」


 インカが小声ながらも力を込めてそう言い放つ。

 ムリとはうそつきの言葉とどこかの人をこきつかって訴えられていそうな会社の社長も言っていた。

 あれ? じゃあムリなものはムリなのでは?


 私のスキル"見透す眼"による"読心"に思わぬ弱点があった。

 意識して防御しないと相手の気持ちにこっちが影響を喰らう。

 強い憎悪やハラハラなんかは気をつけなければ。


 吊り橋効果でインカに惚れたり……はしないな。

 ドキドキハラハラはしてしまったが。

 "読心"をなぜしたかというとスキル訓練でクセで使っただけだったのだ……

 軽い気持ちでやった、反省はしている。


 そしてインカの背後には蛇軍団!

 さらに蜘蛛軍団!!

 互いに威嚇しまくってて出発前からコケそうでドキドキが止まらんわ!!


「標的……排除……殺す……」

「蜘蛛たちを……食っちまえば……」


 互いにこんな感じの事を口々に言って全力で殺気を全方位に放っている。

 そらあインカもドキドキだろうな!

 巻き込まれたら普通に死ぬ!


 それでもインカは様々な種族をまとめて狩りに行った経験が多い。

 やはり向いていると思う。

 そして彼らは全員受信機をつけている。


 受信機があるから互いの言葉がわかり、蜘蛛たちはおそらくドンドンと未知の賢さを手に入れるだろう。

 それ故に余計にいつ手が出てもおかしくないのだが、あくまで抑え気味なのは理由がある。


「絶っっっっ対に喧嘩するなよ!! ただし必ず蜘蛛たちより多く獲ってこい!!」

「あくまで身内争いはするな! 蛇共に実力を見せつけてこその勝利だ!」


 コレなんかの体育大会じゃないんだから!

 って感じの事を言うのは赤蛇と黒蜘蛛。

 彼等が背後で厳命しているからなんとかなっている。


 インカはこれから赤蛇と黒蜘蛛の目の届かない外界まで行ってそれぞれ十数匹いる両チームを率い大幅な狩りを行う必要がある。

 あまりに重い一大任務に同情を禁じ得ない。

 ほんと、ひとまず何とかなりそうで良かったとか考えていないんだから。


 蛇も蜘蛛も大量の獲物入れ袋を持ちやる気十分と言ったところ。

 背後で炎が上がっていそうだ。

 まあ群れ全体の食事をなんとしてでも確保するというのは色んな意味でやる気にならざるを得ないか。


「まあまあインカ兄さん、文句は向こうで聞くからとりあえずみんなそれぞれ身体触ってー」

「……わかったよ」


 ……詠唱、キャンセル、空魔力獲得。


「みんな触ったかな? 唱えるよー」

「大丈夫!」

「問題ない」

「確認……良好」


 空魔法"ファストトラベル"は自分と触れている相手などの認識した対象を指定の場所にワープさせる魔法。

 そう、本来は。

 ……強化詠唱。


「そうれ、"ファストトラベル"!」


 私の目の前でインカたちの姿が青い光へと変わり空へと消えてゆく。

 そう、私はそれを眺めているだけ。


「あれ? お前も一緒に行くんじゃあ」


 赤蛇が言うとおり本来の魔法ならそう。

 強化"ファストトラベル"で変わり種な変化をさせた。

 そう言ってしまえば私以外を飛ばしたのだ。


「ちょっとイタズラしちゃった」

「おいおい……大丈夫なのかよ」

「大丈夫、何かあったら"以心伝心"で念話が飛んてくるから」

「まあ良いならいいけどよ……」


 赤蛇が呆れつつそう言い黒蜘蛛は何も言わないが内心ため息ついている様子。

 良いのだ、こう言うこともたまには。

 インカは自慢の兄なので。





 狩りに関してはインカに任せつつ私は黒蜘蛛にもあのことを聞いてみた。

 正義の霊獣ポロニアだ。


「かくかくしかじか、ということで知らないかな?」

「ふむ、聞いたことがないな」

「え、聞いたことすらないのかよ」

「悪いか」


 黒蜘蛛はさらに何も知らなかった。

 赤蛇と同じ頃の生まれとは聞いていたが思ったよりもひどかった。

 赤蛇も思わずツッコミを入れる。


「そもそも我の群れは……まあ……見てもらった通り、余計なことは殆ど話してくれないのでな。そういうのがいる、というのも今知った」

「難儀だねぇ……」

「お前に心配される義理はない」

「まあまあ」


 いちいち黒蜘蛛と赤蛇のコントを見ていたら話が先に進まない。

 まあ伝わる環境がないのなら仕方ない。


「直接見たり、助けてもらったりはないかな? こうスゴイ毛むくじゃらでとんでもなく強くて、サイズも黒蜘蛛と良い勝負しているんだけれど」

「無いな。我々の群れは常に我々だけが味方だった」

「うーんそうかあ……

 いや、ありがとう話聞かせてもらって」

「むしろ殆ど実のない話で済まなかった」


 いや実がないかといえばそうでもない。

 黒蜘蛛も赤蛇もかなり若い世代で、どちらも知らないと断言した。

 つまりは確実にヒーロー活動は一定の期間のみで終わっている。

 何か意味や利益があってその期間だけ活動し、契約終了か何かで終わったのか?


 いやーそれだと落ちぶれっぷりが説明出来ない。

 そうまるで正義のヒーローになろうとしてある日にポッキリと心が折れてしまったかのように。

 勇気と愛が友達でも孤独になっていったのだろうか。


 妄想は捗っても答えにはつきそうにない。

 思考を中断し赤蛇たちを魔法でそれぞれの巣へ送り届けた。

 うーん、それにしてもだ。


「弱点が、聞く限り見つからない……」

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