七百八十四生目 身構
私は私の神域を展開していく。
神力塊1つでできるリーズナブルな神域。
私の場所。
広がる景色。
そこは荒野。
力強く草が生えるがそれ以上にたくましい大地たちが広がり槍のような大岩たちが立ち並ぶ。
そこは大地に支配された世界。
この神域では私が使う一部の武技と魔法……大地に由来するスキルが強化されまくる。
使いまくれるしやたら強い。
私は土魔法と地魔法で大岩で食いつかせたり岩を降らせたり土槍が射抜いたりさせつつ。
「……えっ!?」
待った!
魔法が集中した次の瞬間。
大きな輝きと共に全部吹き飛んだ。
中心からは無事平穏な人形の姿。
嘘だろう……これは最大最高のパワーと神力で攻め立てているんだぞ。
幽霊にナニカ怪しいことをつぶやきつつキェーッ! って言いながら悪霊退散させるぐらい効くはずだ。
しかし目の前の相手は当然のように対抗してみせた。
さすがに接近する私の足が止まる。
「ソコ」
「おわあっ!! アガッ!!」
足から吹き出るブースト炎で加速し一気に攻めてくる。
まさか直撃するわけには行かないので身をねじるように避けるけれど……
鎧針とイバラと"防御"のガード光の上からよく響く重い打撃。
やっぱ目に見えている部分の回避そのものは間違っていないらしい。
盾に当たったイバラ部分は粉微塵だがそうでない部分は潰れ折られるだけに済んでいる。
どちらもまともに喰らったら即死なのは変わりがないけれどね!
私は即死耐性だの食いしばりだのはあるものの概念で殴ってくるのはやはりだいぶ痛い。
生命力がごっそり減るし私の身体が痛みできしむ。
回復はするけどさあ……!
「回復ハ厄介。しかし限定神域展開ハ対神武装。相手ノ神力展開ニ対して限定空間で勝ちうる力」
「うぐぐ……まさか拮抗すらしないとは!」
相手の神力をけずろうと思いつく限りの手数で攻撃をしかける。
しかしどれもこれもバチバチ言うたびに跳ね返され叩き潰されついでに私へ体当たりされた。
卑怯じゃないか!?
「少しハ諦めてくれないカ」
「もちろん、そんなことするはずもない! というか、これはこれで足止めになってはいるし」
「……概ね肯定。戦力ローズオーラ、不意打ちによる城壁突進による突破は失敗。作戦変更」
なんかしようとしているが"地魔牙砕"であのシールドを砕く!
大地の神域で使うこの武技は大幅に強化される。
空中でも使えるし何より。
「限定神域ね……なるほど、こんな感じかな?」
「っ!! 喰らっただけで真似ヲ……!?」
「下地は元々あったんだ」
私の牙や爪が光で大きく彩られ……
さらに神力の輝きが芯に籠もっている。
普段のこういう時使う武技"地魔牙砕"や魔法は単に神力を帯びて適当に詰められただけだ。
今見て自分なりに分析して限定神域とやらを真似っ子してみた。
神力スキルはマニュアル操作だ。
下地さえあれば私にも似たようなことが出来る。
特に自己領域の拡張がいい感じに働いた。
芯を通している部分は私だ。
ここも私という感覚がある。
光ってどうしても身体からはみ出た延長線上に扱いがなる。
しかし今私という芯を通すことでここも自分の先端だという感覚が生えた。
神経の通ってない歯と通った歯。
一般兵の剣振りと達人の剣を肉体の一部とする振り。
だいたいそのぐらい隔絶した差がある。
ついでに言うと神経の通ってない爪をきると無事だが神経の通った爪を切ると惨事みたいなもの。
さてどの程度通じるかな!
「その盾に傷でも入ったら御の字……"地魔牙砕"!」
「神域に対抗できるものは神域のミ……破城盾」
むこうも動きが変わった。
さっきまで身体の前にタワーシールドを配置するのが前提だった。
しかし今は両腕を180度つまりまっすぐ開いて構えている。
絶対にヤバい構えだ。
向こうも余裕がない。
うごめくエネルギーの動きが異様に活発に見えた。
ここで私に勝てずとも神域を突破し逃げる算段だろう。
私としては3%の勝率にかけてもよかったんじゃないかと思うけれど。
私って割と中衛支援型だから前衛攻撃型や後方炸裂型と合わさって初めて真価を発揮するというか。
向こうは限定神域を鬼札のように切りたくないけど切る必要のあるカードして使っていた。
おそらくは神使ゆえの限度。
あくまで神ではなく神力を分け与えられたもの。
人形は手持ちの神力を使い切ったら補充ができないはずだ!
この勝負で相手の神力を出来うる限り削り取る。
それが私の勝利条件だろう。
ぶっちゃけこんなに強い相手を戦場に戻すわけにはいかない。
さあ仕上げの部分だ!




