七百八十三生目 神域
神魔落とし。神魔落とし……
もしかしてあれだろうか。
朱竜神と魔王を落とした者ということ?
えぇ……
朱竜との戦いはまさしく騎士たちの活躍という風にされているし。
魔王は当然勇者軍による討伐になる。
つまり私の活躍ってまあまあマイナーというか。
確かに知られてはいるけれど私を指してわざわざ神と魔王を落とした者と書かれることはない。
本とか資料でもそんな書かれ方はしていなかったはずだ。
「……その呼び名って、製作者が?」
「要注意人物照合。一致率95%。ローズオーラ。我々はデータベースを共有シている。不覚……勝率低減。3%……撤退、撤退」
「あ、待て!」
人形は私をピピピと音を鳴らしつつチェックしたらさっさと逃げてしまった。
当たり前だけれどさっきからやっていることは逃さないことだから私はすぐに追う。
というか3%ってだいぶ弱気な計算だな……
全力で遠隔ワープしようとしたところをイバラでバシバシ叩きつつ武技"拷問払い"で追撃する。
相手の弱いところを連続で攻めて相手の能力が落ちていると効果が倍増する。
私のアレンジした"パニッシュメント"のような制限をつけて効果を引き上げる技だ。
"猫舌打ち"は防御性能をさげるのでシナジーがある。
当然嫌がるし衝撃でワープが中断される。
遠くへのワープなんて簡単にできるはずもない。
ただイバラは硬い相手にあまり通らない法則は人形にも適応されるらしい。
頑丈ではなく硬質なタイプは攻めにくいというか。
こういう時は大きくなりつつ鎧針をまとって重量乗せた爪のほうが通る!
「形態変化。危険率さらに上昇。そんなことも出来ルとは……噂モ参考ニなる」
「低い確率だからって斬り捨てていたかなッ!?」
「っ!」
割と人形は確率が低いことは効率的に切り捨てるようにしていた。
合理的だとは思う。
ただだからといって何でもかんでも切り捨てていいわけでもない。
「神力バースト。出し惜しミして切り抜けられル相手では、無イ」
故に人形はここで神力という切り札を思いっきり使うことを選んだ。
神力は花開き人形の全身を覆う。
強烈な光で神性をあびた上人形は虚空を掴むように腕を伸ばす。
「限定神域解放、高性能自衛剣・ライトランパルト」
人形は高らかに唄うように兵装を展開する。
神力によって生み出された兵器は彼女の握った手につき光の塊として形成される。
眩しいはずだが不思議と眩しくない。
光ではあるものの周囲にビカビカ撒き散らすタイプではないようだ。
しかし……
それは小さな城壁。
出てきた武器は敵を斬り殺すものではあらず。
自らを守るためのもの。
両腕分あわせればその身を完全に隠し消せた。
「うわ、両腕タワーシールド?」
「自機の能力ヲ考慮されて与えられタ兵装。勝率向上、ここで片を付けル」
両腕にとりつけられたのは美しい機能美を魅せるタワーシールド2つ。
存在感がえげつない。
身体より大きな大鎌や竜すら叩き潰す鉄塊剣に並ぶファンタジーロマン武装だろう。
ざっくり言ってしまうと普通なら取り回しが最悪すぎて戦えない武器。
両腕ダブルタワーシールドはまさしく動く壁である。
空中で維持していても圧迫感が凄まじい。
そこまで大きくない人形がいきなり大きめの壁になってビビらないモノがいるだろうか。
勢いよく突進されて避け――
なあっ!?
私はいつの間にかふっ飛ばされていた。
「無意味」
「あっぐうっ! いだだ……!」
ギリ無意識で受け身を取れて衝撃を逃した。
今危なかった。
全身に何かがぶち当たってバキバキに折られるところだった。
そうかあ……
これそういうことかあ!
「ってて……危なかった。まさかその盾、衝突の概念を付与してあるなんて。その力が振るわれる範囲ならば目視の結果に関わらず、概念を振るったからインパクトを結果としてぶつけられた、と!」
イバラを振るい回復しつつ話す。
しかし鞭剣ゼロエネミーやイバラそれにサブマシンガンビーストセージで四方八方囲んで叩いているのに全部叩き落される。
素晴らしき匠の技術でふっ飛ばしているのではなく振るうだけで片っ端からふっ飛ばされてしまうのだ。
ず……ズルぅ!
これが限定神域展開武装か。
神の技は格が違うというのを思い知らされる。
幽霊に殴りかかっているかのようなものだが実際は片っ端からイバラを叩き潰されるわゼロエネミーがグニャグニャになるわレベルが違う。
「だったらこちらも、"大地の神域"!」
最近少しずつ増えて余裕が出てきた神力の塊を1つ砕く。
最大ストック数4だ。
……それだけ神に襲われしばいたということでもあるが。




