七百八十二生目 神魔
飛んだ鞭剣ゼロエネミーが人形を追撃するように振るいまくる。
って避けに徹するとすごい避けていくな!
何十という連撃を全部躱していく。
回復にもっと意識割かれてほしい。
避けに徹した相手の嫌らしさよ。
地面を砕く魔法を……あっ!
「同じ手。学習済ミ」
「飛んだッ!」
私が地面有利だからって素直に空へ飛ぶ相手なかなか久々だ。
普通はどちらかにしか適性ないからね。
私は誘われているのはわかっているが逃がすわけにもいかず空へ飛ぶ。
「問、お前の目的は?」
「キミを、戦争を止める! 残念ながら、今回の戦争に正当性は認められないし、そもそも完全な不意打ちを前提に組まれていた。この戦争に、私は良いと思える点がない!」
「部外者ガ何を思おうト結構。自機は創造主の指示を叶えるのみ」
「そんなの、余計に止めるよ! その主さんの思惑がどうであれ!」
私と人形は空中で打ち合う。
つ……強いな!
いや強いのはとっくにわかっていたけれど意思が思いの外強い!
もっと人形なら人形らしく壊れたテープカセットのごとく繰り返すかと思えばそんなこともない。
割と自分なりの理屈の付け方してやってきている。
やっぱレベル高い相手は全然揺さぶれないな……!
私はイバラで相手の腕を打ち払いつつ足裏から出ているブースターを複数の火魔法で狙っていく。
向こうも空を飛ぶのはブースターが命とわかっている。
狙われないように細かく立ち位置を変えながら飛び回る。
空中での移動は大きいというか大雑把だ。
互いにビュンビュン飛び回るように位置を変え行動する。
うっかり戦場のほうに誘導されないようにしな……いやされてるな!
「そっちは戦場!」
「頭脳評価上方修正」
「そりゃどうも!」
煽られつつ行かせないようにイバラを大きく伸ばす。
当然囲まれないように素早くその場を離れる……ので。
私は人形の背後にワープした。
「!!」
真上から散弾銃化したビーストセージで"爆散華"!
派手に光が散らばるように吹き飛び人形を地面へ叩きつける。
私はその後についていき散弾銃の連射。
人形を地面に縫い止める。
いやまあ結局多少穴が開こうが普通に活動するけれど。
ただダメージを与えゴロゴロと転がすと耐久力が増えないことが発覚した。
やはり回復は完全にいつでもできるわけじゃあないらしい。
そこらへんは私も同じだ。
なんやかんや意識を割と物理的に分割してなんとかやっているだけで魔法の枠も潰さなきゃいかないしね。
人形は巨大な相手ではないので攻め入るときに削りやすいが回復も結構な勢いでされる。
立ち回りを普段のジャイアントキリングと同じと考えているとかなりやりづらい。
「なゼイバラがあるノに……」
「あれ、切り離せるんだよね」
「情報提供感謝」
やりづらいと思っているのは向こうも同じらしい。
私がちょこちょこ動き回り片っ端から"ヒーリング"で治すのを見て仏頂面でも声が不機嫌だ。
割と機微がわかるようになってきた。
私達はその後も割と繰り返すはめになる。
人形が攻めて戦場のほうに戻り私が回復し。
私が攻めて戦場から引き剥がして人形が回復し。
つまるところ千日手になってきた。
時間がかかればかかるほど声の不機嫌さが増すのはもちろん……
「戦況不備。この時間はなれテ活動すルことは計画ニありません。至急排除さセてもらウ」
「させない、よ!」
人形が突撃してきて腕をクロスしのばして振り抜いてきた。
もはや何十分戦っているかはわからないが人形が慌てだしたからそれなりの時間はたっているだろう。
私の遅延行動が人形に大きな不安をもたらせていた。
私はイバラを束ねて足のようにし体ごと振り抜いて弾く。
人形本体が突撃してきたので鞭剣ゼロエネミーでさしこんだ。
今まで以上の積極的な攻勢。
これまではなんとなく被弾をさけて出来得る限り余力を残しておこうという魂胆が見えた。
「む、ワープ!」
今も消費の大きいワープを使って私の真上に位置づけあっつ!!
ブースターで焼こうとしてくる!!
うっかりしたら気管支まで焼けるような行動をためらいなくやってくるあたりほんと慣れている。
私に耐性がなかったらあぶなかった。
逃げられる前にイバラでしがみついてトゲを刺しつつ毒の尾花も刺す そして激しい回転と共に着陸。
イバラを激しい抵抗でほどかれついでのようにビームを連続で放ち私は身体のあちこちに熱線の穴を作らされる。
焼くのめちゃくちゃ痛いからやめてほしい。
何より傷口が焼き固まって治りにくい。
「連合軍ヲ背後ニ用意し、各々自由戦闘させたのハ、お前カ?」
「いや、私は駒にすぎないよ」
「神力を持ツ駒……お前マさか、神魔落とし、蒼竜の使イ!」
えっなにその名前。




