七百八十一生目 躍動
[フラプース 個体名:NF3778 翠の大地にて産出される特別な木材を用いてそれあれかしと目的のために造られたゴーレム。特別な能力と神力を持った特殊個体。美しき姿と全てを破壊するような力を持ってして交渉ごとを行う]
いくらなんでも交渉が物理的すぎる。
それに自爆持ちとはまた……
翠の大地の名がここで出てくるとは想わなかった。
しかも比較も強いときた。
神力持ちでこちらも解放して強い……
単独戦闘に持ち込めてよかった。
「こちらを見定めタな!? ハッ」
「うわっ!?」
やっぱりカウンター持ちだった。
即バレたしたくさんの細い糸みたいなのが光でとんでくる。
イバラや鎧針でどう来るかを見つつ剣ゼロエネミーを高く飛ばす。
大きく振りかぶって変形し鞭剣ゼロエネミー。
鋭く強く大上段で……
「ぎゃっ!」
「……!」
私のほうはイバラが斬り裂かれ鎧針が僅かな抵抗しか出来ず裂けた時点であまりに嫌な予感がして全力でしのぎ避けた。
身体から黄色い私の血が飛び散る。
髪の毛のように細い糸は殺意の塊で私を細切れにするところだった。
ギリギリで抜けられたのはゼロエネミーの反撃が通ったおかげ。
向こうは鞭剣でしばかれ避けようとしたが勢いと速度に負けて吹き飛んだらしい。
そのおかげでこっちの攻撃が止んだ。
私は4足で地を蹴り一気に詰める。
こっからのプランはないぞ!
息もつかせぬ連続攻撃を畳み掛ける!
私は急いでイバラを振り回しつつ人形を見る。
恐ろしく何も映さないその瞳は
確実にこちらへ向けていた。
「悪いけど! キミの目的を達成されるとこっちに凄まじい被害が起こる! どうやってンメル族をおさめたかわからないけれど、ここで倒させてもらうよ! キミがやめてくれるなら別だけれど!」
「作戦中断の可能性0。不確定要素を排除シ作戦を決行」
「そもそも造られた理由がそれって、どうしてか考えたり、自分の主人のことを知ろうとしたり、そもそも記憶共有とかないの!?」
「問1、ゴーレムは道具。創造された理由の創造は必要なく、力を磨きその時に備えるのみ。問2、記憶共有なし。必要ナ情報を集めテ渡されていル。自機は創造主ノ道具として役目ヲ果たすのみ」
「そんな扱いの道具なんて……なんて悲しい……!」
「理解しテもらわなくても結構」
道具とは丁寧に磨き手入れして共にあるものだ。
剣ゼロエネミーや銃ビーストセージたちがそうだ。
なのに目の前の相手は……まるで使い捨て。
大量生産大量消費に似合わぬ鍛え上げ方。
ここまで苦労しているゴーレムがこんな扱いなのか……
大量に作るゴーレムでも大事にしている死霊術師のユウレンが見たら怒り狂いそうだ。
「接近」
「ッ!」
人形が連撃をかいくぐり目の前通り過ぎたぐらいまで接近してくる。
まさしく息がかかるかのような。
真横を通り抜けられるかと思った時私の身体に何かががっしり組み付く。
やべッ腕が伸びて組み付いている!
関節の部分から腕の中に仕込まれた中身がギュッと出ることで伸びているらしい。
常識ハズレの角度から掴んできて……
すり抜ける勢いを利用して私をぶん投げた!
「うわわわわ」
円を描くように遠心力たっぷり込めての地面への叩きつけ。
うっぐぐぐぐ受け身!
必死に背中受け身をとったあと鞭剣ゼロエネミーの切り裂きで人形の意識を割きつつイバラと針鎧を無茶苦茶に出して押し出す。
むりやり身体を振るって抜け出したところに追撃のビームが来たので転がり避ける。
耳元でジュッて言ったぞ!
這々の体でなんとか安全な姿勢に戻り同時に仕込んでおいた地魔法"クラッキング"発動。
地面が大きくひび割れて人形ごと巻き込んでいく。
身体を縫い付けるような停止効果と高い威力で使いやすい。
人形は振り切れずに魔力の渦に巻き込まれる。
「逆転!」
「分析。強力ナ加護ヲ受けているト推測」
おっといきなりバレた。
私の土の加護は強烈な強化を施してくれる。
人形が大きく怯んでいるスキに銃ビーストセージで連射しつつ。
イバラを武技"猫舌打ち""連牙""龍螺旋"の連続攻撃!
"猫舌打ち"は相手の防御性能を下げてくれる。
"龍螺旋"は1回舞ってから襲撃し……
2重爆破!
大技ゆえにこれが決まると相手の生命力を大きく削れるコンボだ。
相手の生命力が半分ほどになったのを見つつバックしていく相手を追いかける。
「待て!」
「自己修復開始」
「おおお本当に待って!!」
やばい私も使うからわかる。
自分治す系の相手はつらい!
相手の耐久力がぐんぐんと治っていく。
「ぬおおおッ、ゼロエネミー!」
鞭剣ゼロエネミーが待ってましたと言わんばかりに躍動する!




