七百八十生目 人形
今の魔法は計算ドリル。
53+47=□□0って書いてある。
四角を埋めれば発動するのだ。
だから便利で簡単でかたちが決まっていて戦闘中でも何も考えずとも脳と魔法の仕組みが自動で処理してくれて答えがでる。
そんで威力の底上げをしていて気づいた。
いやこれ向き不向きの前にわりと余裕なくね? と。
純粋な火力増加を魔法式から組もうとすると他の必要なものを組んで魔法として現象を起こしてもちろん効率化は適用させたままで……とやると。
それだけで1つの魔法という枠にいっぱいっぱいである。
100という枠に計算式を詰め込むさい基礎攻撃力はすごく邪魔である。
他にもたくさん書きたいのに掛ける2とか3とかで一瞬でキャパオーバーにさせられる。
式をいじくっても足す50とかになるのでほぼ意味がない。
そんな式じゃあ……詰められない。
基礎攻撃力は大事だけれど私の今回アレンジしたものはより別のアプローチをとった。
属性。特攻。追加条件。
基礎ダメージは大事だが跳ね上げる方程式はある。
こういうのってダメージ計算式とかいうよね。
属性は聖属性でないと今回は破綻する。
聖魔法は排除や拒否の属性。
汚泥を一切寄せ付けぬ清らかさ。
これを利用して邪心特攻をつける。
誰しもが抱える自らの心できたなく弱いところ。
そう……これは私ではなく当たる側の感情と思考と倫理に問う特攻。
条件付きで本人が聖なる戦いではないと考えていると強力にした。
制限をつけるとハマッた時効果が跳ね上がる。
特に邪心ありとしたときに麻痺も付与させるのをねじ込めた時は感動した。
そして今ンメル族の督戦隊は倒れ伏している。
人形も驚いているがより驚いているのは味方たちだ。
私は空から舞い降りて告げる。
「キミらを背後から狙うンメル族は倒した!! 今なら逃げることも出来るぞ!!」
ざわりとンメル族に動揺が走る。
動揺が広まって収まらないという時点でめちゃくちゃ効果あるね。
「何だ貴様!! 急にやってきて、何を!?」
「ぞ、族長! 新参のやつらの様子が変だ!」
まだ決定的な動きはない。
ただ互いに互いの様子を見合うような。
深い疑心暗鬼が産まれだした。
いいぞ。
「族長ニ勝てルものがいるノなら、脱走してみるが良イ」
「「…………」」
拡声するように広がる人形の声。
それと同時に皆震えるように黙った。
やはりこの人形が邪魔である。
私は空に飛び人形と同じ目線まで来た。
「お前ハ何者――」
「――チェストおおおおおおぉぉーー!」
「ハッ……!」
急加速。
用意していた"ダイヤモンドブラスト"を後方に吐き出しての反動。
ダイヤモンド自体の威力ではなく
私自身のタックル。
「ぐぐぐぐううううぅーー!!」
「ば……かな……!! ドこまで……!!」
「私もわからん……!!」
深く重いGは私達の身体を捕らえて離さない。
まあ組付きイバラも巻いて私はさらに加速しているのもあるんだけれど!
あっという間に軍の作戦領域内から飛び出る。
ギュンと輝き飛び立つ2つの輝き。
ギギギと人形が無理やり動き出した。
ここが限界か。
私は回転するように人形を蹴り込み地面へ向かってイバラを使い投げる。
蹴り込みが深く刺さった。
ニンゲンではないと主張するような鎧でも蹴ったかのような感触だけが残る。
私は反動でブレーキをつけだし人形はあっという間に地面まで斜めにとんだ。
流れ星落ちる。
凄まじい土煙と共に遠くまで影が滑っていく。
単なる生物ならグチャグチャになったあげく擦り下ろされているが感触的に期待は持てないだろう。
私は力をためて再加速。
土煙の奥へと向かっていく。
煙が揺らめく。
「ッ!」
1瞬の光の後カンで身体を横に反らすとビームが私の腕を軽く斬り焼いた。
いった! あぶな!
初見殺しじゃないか!
ついで人形自体が勢いよく飛んでくる。
その顔は無表情のまま。
しかし足元から凄まじいいきおいの炎を吐き散らして。
「なにそれ!?」
「当該機戦闘開始」
勢いよく迫る人形。
向こうの拳に合わせてイバラでいなすが上からきしむほどの威力。
「うえっ!?」
そのまま地面までぶっ飛ばされた。
ああっぶない!
ギリギリ受け身を取りつつバク転のように後ろへと勢いを流していく。
ガード越しでも痺れるような痛みが走った。
まともに喰らうのは得策じゃない。
空から轟音を鳴り響かせ影が1つ舞い降りる。
あたりの土煙が晴れてそれは降り立った。
「不確定要素乱入。情報修正。軍ニ近づけテはならない。ここで滅ぼス」
[フラプース Lv.50 比較:強い 神力有り 異常化攻撃:錯乱 危険行動:終局自爆]




