百八十二生目 飢饉
正義の霊獣ポロニアについて話を聞きに赤蛇の元へ来たら食糧問題に巻き込まれた。
何を言っている私もわからないが目の前で起きている。
以上。
「何、コレ、どうしたの」
「どうもこうも、縄張りを広げれなくしたのは、お前が介入したきたせいでもあるんだぞ」
「縄張りの拡大って……やっぱり食糧を求めに?」
「そらそうだ」
赤蛇と黒蜘蛛の大決戦を止めた代わりに蛇側は深刻な食糧問題が表に出てきてしまったらしい。
というより食糧問題をどうにかしようといつものように縄張り広げようとしたら黒蜘蛛たちの縄張りにひっかかってしまったのか。
さらに私の介入によって結局問題は解決できなかったと。
「つまりお前のせい」
「……つまり私のせい?」
「さっきから話し合いはこんな感じで詰んでる。どうにかしてくれ……」
赤蛇がつらそうにため息を吐いた。
目の前では多くの蛇が自由過ぎるくらいに口々意見を言い合っている。
体だけでなく言葉すらも複雑に絡み合って私も混乱しそう。
「新しい食事確保を!」
「どこにあるんだそれは!」
「遠征狩りを行って……」
「前それで蜘蛛ともめたのだろう」
「やはり間引くしか……」
「だからそんなもの一時的にしかどうにもならない!」
ひえぇ。
どうにかしろってコレどうにか出来るのか!?
絶対1アイデアですぐになんとかなるものじゃないぞ!
蛇だから取っ組み合いの喧嘩にはならないが大口開けて威嚇しあっている状況。
"読心"したさいにみんなから読み取れる感情は『お腹がすいた』だ。
腹が減っていらいらが募る。
イライラから攻撃的になり動けば疲れお腹が減る。
うーむわかりやすい悪循環。
「ちょっとだけなら、どうにかする手段は今ある」
「本当か!?」
「ちょっとじっとしていてね」
「お、おう?」
肉球で赤蛇の鱗に触れる。
ひんやりとしていて心地良い。
……よし、唱え終わった。
「ファストトラベル!」
「お前! お前ー!!」
「まあまあ落ち着いて、一応静かなところにはこれたし」
私は空魔法で赤蛇ごとワープして喧騒から逃れた。
来たのはいつもの決戦が行われた土地。
ただしもはや見る影もない。
辺りは荒野の迷宮ではありえないほど豊かな自然に覆われている。
そもそも植物たちがメキメキと言いながら目に見える速度でツタを伸ばし枝を生い茂らせるのめちゃくちゃ怖いんですが。
キノコに至ってはよくわからない。
「……なあ、あの、俺よりデカそうなの……キノコだよな……?」
「……よくわからない」
なんか独自の生態系がここだけで築けている気がする。
問題ない、問題はないはずだ……!
……ああそうだ!
「このキノコとかをみんなで食べたらどうかな?」
「……提案はありがたいが俺たちは生きた動物を食うから多分無理矢理キノコなんて食べたら、みんな倒れちまうよ。まあ、お前らは食うのかもしれないが、少なくとも俺らには無理なんだ。すまない」
ごめん、知ってて提案した。
ほら、魔物だしなんとかなるかなって!
ムリだねごめん!
そんなやり取りをしつつも悩み事解決の前に赤蛇に本来聞きに行った話をした。
霊獣ポロニアのことだ。
しかし、
「いや俺は殆ど知らない」
「え?」
意外な反応が返ってきた。
聞けばたいてい盛り上がるポロニアの事を知らないとあっさり言いのけたのだ。
外部からやってきた魔物でもないのに。
「まあ正確には知らないわけじゃあないさ。ただ周りからそういうのがいたと言うのは聞いたさ。
俺が産まれた頃にはもう殆ど活躍してなかったしくてな、1度もお目にかかったことはないし実際に俺たちを助けてくれたこともない。
だから俺が頑張るしかなかったんだ」
「なるほど……」
赤蛇も黒蜘蛛も見た目に反してほんの数歳あるかないかでかなりの若手のはず。
話題の世代間ギャップが生まれている。
まあ話を聞けなかったのは仕方ない。
一旦赤蛇にここで待つように言って単独で"ファストトラベル"を唱える。
黒蜘蛛の巣付近の崖に飛んだ。
変に警戒させないために正面からてくてくと歩いていく。
奥まで行けば蜘蛛たちが相変わらずワサワサといたが私が近づけばサッと身を引いてくれる。
力量差にビビっているみたいな理由ではない。
この蜘蛛たちはきっと指示されたのだろう。
「ああ! ローズオーラ! 良かった、こちらもちょうど会いたかったのだ」
「こんにちはー」
そう黒蜘蛛の指示だ。
……って会いたかった? ちょうど?
なんだかデジャヴ。
「コイツらに食べさせるための食糧が尽きそうなんだ! 頼む、助けてくれ」
「あー……」
こ、こっちでもか〜〜!!
その相談をしようとしたらこっちも同じ状況か!!
ということはだいたい私のせいだな!
くすん。