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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け
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七百七十七生目 聖戦

 ドラーグはまさしく空の防壁だった。

 ドラーグが防御に集中している限りおとされる心配はないだろう。

 そしてドラーグは防御に集中していて問題ない。


「フ」


 空から槍が落ちる。

 竜の代弁者として。


「ン」


 槍が引き戻される。

 竜の一部なのだから。


「フ」


 何度も落ちる。

 重力に従っているとはいえその投げる腕と力は剛腕を越えていて。


「ン」


 強烈に何度も落ちて必要なものを破壊し戻っていく。

 壊す壊すこわす。

 戻る戻る戻る。


「厄介ナ……計画修正。ンメル族よ、空へ送ル。あれヲ落とせ」


「なっ!?」


「ワシらを離して平気か族長!? ここのまもりが薄れたら……」


「騒がしイ」


 人形が族長として下す目線。

 それはまさしく有無を言わさない絶対的なものだった。

 意見をした側近たちはすぐに自身の過ちに気づいたかのように震え汗を流し固まる。


「返事ハ?」


「「は、ハッ!!」」


 有無を言わさない圧倒的な発言力。

 何やら話し合ったあと代表を決めたらしく人形の周りに集まっていく。


『ドラーグ、そっちにこっちの鬼たちがワープするから迎撃して』


『ええっ!? で、できるかな……』


『……問題ない。パパとコロロなら出来る』


『う、うん! やるよ!』


 会話の瞬間にワープしていくつもの巨大鬼たちの姿が消えた。

 おそらくは天高く上空。

 ドラーグの背中に飛ばしたのだ。


 槍が降ってこなくなった。

 向こうの戦いが始まる……


 そして地上でも動きがあった。

 突撃部隊が一気に巨大鬼たちを蹴散らしていたのだ。


「と、止まんねえ!」


「直進してくるだけだぞ!? 盾でなぜ止まらない!!」


「横殴りしろ!! 前からの勢いはまずいが……」


「ばか、もう試したよ!! そこでノビてるやつが試したヤツな!!」


 先頭にインカ兄さんが見える。

 突撃隊列を組み(エフェクト)が遠くからでも見えている。

 なんで巨大鬼が群れている中一瞬も止まらず走れるのか……


 正直我が兄とそれを率いられてる軍の能力はかなりおかしいらしい。

 インカ兄さんは個人芸だけじゃなくああいうのも強いよなあ昔から。

 狩りの時にみんなを率いてたくさんとってきたもの。


 軍魔法というか軍武技というか……

 陣形を組んで特殊効果を発動させるものって私はなんやかんや使えないのよね。

 あれは限られたひと握り先頭のときただしく扱えると思う。


 だからインカ兄さんは冒険者向きではない。

 ああいう場で次々巨大鬼を跳ね飛ばして蛇行しているのが似合うのだ。


 さて突撃部隊が隊列を大きく乱すと巨大鬼たちも動きを変えざるを得なくなる。

 突撃部隊をどっかから抜けて逃さないように取り囲む動きだ。

 前線を張りつつそれもしなくてはならないので気を回すところが多くなって大変そう。


 ということで前方に戦力が集まってきたところに。


「で、伝令! 急襲軍後方!」


「なんだ? 小人か?」


「それが……!」


 鳴る足音は小人……つまりニンゲンに鳴らせるような音量ではなく。

 たなびく旗は真っ黒に染め上がり。

 手には1つの金属の得物。


「何? 今更他氏族カ? どこノ所属だ」


「そ、それが! 不明! そもそもンメル族に迫るほどの頭数を揃えられる氏族など、他には……!」


「ホう……連合軍カ。あいつラが組むカ。たダ、急造軍ダろう。どうせどの氏族ガ頭ヲはるかで揉めていル。そこヲ突け」


「はっ!」


「しカし……いや、可能性、低」


 人形が何か察したようだがその可能世を切り捨てる。

 一方攻めている氏族連合軍。

 黒旗のそばにアヅキもいた。


「アヅキ、このまま氏族を進めれば良いのか!?」


「いちいち声がデカい。問題はないはずだ。タイミングよく釣れて引ければいいのだから」


「教えてもらったことだが……そんな作戦でいいのか?」


「問題ない。むしろ、かなりやりやすくなる。お前らに1から集団戦のやり方を教えるほうが非効率でなにより下手な使い方だ」


 アヅキに任せた連合軍の動きは……端的に言ってバラバラだった。

 まあ始まる前から空中分解しかけていたのが同じ黒の印を結んでいるだけでも凄まじい進歩だけれど。

 バラバラと揃わない足音はどことなく頼りない。


 しかし前を歩くものたちはそれぞれが勇ましい。

 ワ・バメロもそこにいた。

 さっきから問いているのがそう。


「本当にこれで勝てるのか!?」


「説明はしただろう。勝てる。問題なく」


「しかしだな……」


「もしかしてンメル族と我々全体、その勝敗を考えているのか?」


「そうでなければ、一体何だというのだ?」


「果たしてお前らの言う聖戦とは全体の勝敗に関することだったのか?」


「っ!?」


 アヅキの言葉にワ・バメロが怯んだ。

 アヅキは聖戦の内容を聞きかじっただけにすぎない。

 けれどそのことを利用できる程度には噛み砕いていて飲み込んでいた。


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