七百七十六生目 投槍
私の立ち位置はリーダーの観察だ。
あと必要あらば連絡を。
私はその時に全力を出せるようにあらゆる力を温存させられている。
もちろん強化はかけつづけているけれど自分にだけだ。
チャンス時にアイツを全力で叩く。
そのためにいるのだ。
ああ〜〜始まったよ。
バチバチに斬り合ってるよ。
みんなもそれぞれ役割があるんだよね。
とはいえインカ兄さんとかの役割とかは突撃隊。
機会を活かすための辛抱だ。
さて……
戦場の中心から離れて。
こちらは人形の様子を伺う。
ある程度は指示を出しているものの全体目標の共有が1番であとは現場任せのようだ。
あとは1番あの周囲に立っている魔物たちが混乱するスキさえ見せれば……
「前線、順調のようだす。被害は想定範囲内」
「フむ、では兵器準備。放火をすぐに出来ルように」
「はっ!」
こういう情報を私はニンゲン側と連絡をやりとりする。
巨大鬼たちが持ってきた兵装はいくつかある。
シンプルな鐘つきで城門を打ち破る破城槌。
魔法的なエンジンの取り付けられた魔砲台。
敵陣に死を降らす投爆弾器。
他にもいくつかあるがどれもこれも使われたら危険だ。
『だから、やらせないように止めれば良いんですね!』
『頼んだよ! ドラーグ、コロロ!』
『……ん』
轟音と共に空から迫る影。
味方の部隊だ。
空装備はこの街にも多少あったしなによりアノニマルースの空魔物が元気。
ドラーグの背中には今日もコロロが背に乗っている。
巨大なかがやく竜と小さなニンゲン。
しかしこの組合せがとんでもない戦力を生み出す。
「り、竜だ!! バカでかい!! そんな戦力があったとでもいうのか!?」
「対空準備。接近許すナ」
「くっそー! 小人落としなら豊富なんだが、ありゃ話が違うぞ!」
「み、味方……なんだよな」
「情報どおりだ! 怯むな! ……でっか」
「これほどまでに味方と言われて安心することはないな」
空に100メートル級の存在が現れたのだ。
戦場は混乱の渦だった。
さらに空から1つの槍が降る。
「はっ?」
槍はピンポイントに小人落としと呼ばれていた空に向いている砲台に刺さる。
あまりにも当然なように行われたので反応が遅れたのだ。
遙か高いところから槍が1つ落ちで刃が砲台を貫くその異常性に。
動けたのは火の手が上がってからだ。
どうやらよくないところに刺さったらしい。
一気に変な金属音と共に砲台が崩れ爆発していく。
「おわぁ!?」
槍が勢いよく吹き飛んだかと思うと……
空まで戻っていった。
コロロは何の問題もなくキャッチしているだろう。
コロロの槍は特別性だ。
普通ではなかなか出来ない魔物素材たちや竜の鱗と爪で出来ている。
それは元の主に共鳴するかのように元の位置へ戻るのだ。
ドラーグの輝く透き通ったウロコと鋭く太く抉るような爪を重ねて作ってあるのだ。
そんじょそこらの金属に負けるわけはない。
ちなみに私の針や毛も使っているらしい……見劣りする!
それはともかく上空からは雨嵐と落下物が降り注ぐ。
慌てて巨大鬼たちが用意していた傘のような盾を展開するがきちんと被害を出している。
ただ爆発する魔法も含まれているしあんまりふせげていない。
「くっ、族長!」
「被害軽微、落ち着ケ。おそらくは……錯乱狙いカ」
族長の真上に来ていた鉄球らしき影が一瞬影がブレた瞬間に弾き飛ばされた。
おお……今腕が伸びたよ。
そうだよ私にはなんとか見えたよ。目は昔から良い。
あれは危険だなあ。
見た目とリーチが合わない。
そしてリーチと速度も合わない。
あんなに器用な立ち回りが出来るのなら変に距離をあけるのは命取りかもしれない。
私と得意範囲がかぶるという大問題はあるけれど。
ただ接近しなくては話にならないなありゃ。
その後も散発的に上空からの攻撃は続くものの軍隊に致命打は入らない。
特に族長付近のトランス後個体たち。
彼等は大半を適当に払うだけで防いで見せている。
元々の力が違いすぎる……
ただ槍は違う。
空に砲撃1つ舞うたびに空から槍1つ落ちては砲台が潰えていく。
それだけじゃない。
大型の兵装たちが1つ1つ槍が刺さる。
1回で壊れなければ2回でも3回でも。
かわりに地上からも反撃がある。
小人散らしと呼ばれた理由がよくわかった。
空に咲くのは単色の炎。
花火だあれ。
そのかわり華やかさはそこにはなく空に向かって放たれた時眩しさと熱と大量の煙と空気の勢い全てをもって行く。
空軍は避けなくては死ぬから慌てて散っていく。
ただドラーグは受ける。
もちろん単に受けているわけじゃなくて表面に見える反射の輝きを見るに何かスキルを使っているようだ。
まあ何か前も相手の力受けてたえてから全部吐き出したもんなあ。




