七百六十ハ生目 本丸
ンメル族は……正確には族長は上位個体。
そしておそらくは大蜂起をねらっている。
大蜂起にぶち当たるのはあたりの魔物たちもそうだしニンゲンの街も巻き込まれる。
大蜂起は大氾濫のわかりやすさと違い戦略を持ってして行われる。
多く増えたからあぶれて新天地を食いつぶしにいくのと集団がなんからの目的を達成しに行くのとの差だ。
そこらへんのことも話してみた。
「つまり、ンメル族の族長の狙い、か」
「俺たちは先に戻って報告することにするよ。冒険者ギルドとしても出来ることがあるはずだ」
「うん。私の依頼はたまたまその族長を調査するものだったみたい。誰かもわからないままやるより、だいぶ詳しく調べられるから、そこは任せてください」
「貴様の実力なら、並のンメル族は問題にはならないだろうな。吾らは吾らで情報を集め、戦いの準備を進めよう。ンメル族が卑劣な争いをするというのなら、こちらもやることがある」
各々がやることを交換しその場で別れた。
私は私がやれることをしないと。
もうちまちま進んでいる場合じゃない。
ここからは速度重視だ。
私だけが突っ込んでいくのはさすがに上位個体がいる奥地には不安が残る。
そもそも探索しなきゃいけないんだし道もしらない。
"以心伝心"で連絡は終えていたので……
さあこい! 空魔法"サモンアーリー"!
これでアヅキとダカシをよびだす!
来てくれたふたりは隠密にむいているふたりだ。
しかも速い。
体が黒いからで選んだ面は若干否めないが優秀なのは確かだ。
「主、こうして共に旅立てるのは光栄でございます。だから、お前も遅れをとるなよ」
「言われなくとも。今回は、直接戦闘じゃないんだろ? ん、なら役にたてる」
「頼んだよ。今回は速度を重視したいから」
「ええ、迅速に、そして華麗に敵の情報を手に入れて見せましょう」
ダカシはまだ全快ではない。
ただ前の事件で感情に関することについて理解を始めたらしい。
今はそういう文献を読み勧めているとか。
ただ難しい言い回しが多く誰かと共に読むことがほとんどらしいけど。
アヅキは今や若干時間をうまくとることが出来るようになった。
ひまではないのは確かだが……
ごみ処理とリサイクル施設がきちんと稼働をしていると聞いているあたりからサボっているわけでもないだろう。
むしろアヅキに任せた仕事量の割にテキパキこなしている。
アヅキは調理と清掃とか割とまとめて投げたからね……
みんなに補助をかけつつ駆けていく。
もう説明済みだが要は城の中にまで行って調べれば良いのだ。
中庭……中庭? あたりの同じここの空間ではアチコチに戦う音が響いている。
冒険者と巨大鬼や巨大鬼同士がなにもしらず戦闘を繰り返している。
こうやって少しずつ強くなっていくのだ。
それを横目に奥へと進んでいく。
巨大鬼エリアはある意味平和だ。
たくさんの絡んでくる魔物がいるものの秩序がそこにある。
荒れた環境も少なく駆けていくだけで過ごせた。
さて。
すぐに通り過ぎたここはまだいいとして。
「こっからが本番か……」
「1つ門をくぐるだけで、肌に感じる空気感が違いますね」
私達は大きな崩壊した門をくぐる。
それだけで毛皮に触れる圧力が段違いに上がった。
荒々しさを感じる。
ココから先は秩序が崩壊している……
そう感じるのに十分だった。
最近私は城ばっかにいってるなあ。
まあ前の城と今回の城は作りから年代までまるで違うのでそこまで気にするほどではないが。
いきなり時が巻き戻ったりもしない。
あくまで現代に生きる終わった城だ。
「ん……わざわざ見張りもいるのか」
ダカシが目を向けた先。
だべっていてやる気のなさそうな巨大鬼がふたりいる。
どうみてもンメル族だ。
「あれが……?」
「うん、ンメル族。気づかれても良いけれど、さっさと抜けよう」
「さすがに雑魚1体1体に相手している暇はありませんね。主の手を煩わせるのも問題ですし」
彼等は所詮だべってかなり高い視線を保ったままである。
あくまで危険視しているのは他の巨大鬼ということだ。
こそっと通り抜ける。
壁内部にはいくつもの建物が所狭しと並んでいる。
まあ1番所狭しの原因は植物たちが縦横無尽に生えているせいなんだが。
「うーーーん、本当はじっくり見て回りたかったのにーー」
「主、了簡を」
「まだこの後見て回れるからさ」
「うん、まあね……」
3名も隠密しながら先に進むことでありえないような速度で進んでいく。
相手の気配も全員気を配っているから問題なく拾えている。
くぐり抜けるのに問題はなかった。
いくつもの城壁を越えてあっという間に本丸についた。




