七百六十六生目 氏族
光の奔流はいまのが強烈な武技だったと主張している。
ンメル族の脚からは勢いよく血が吹き出て思わずしりもちをついている。
「お、おああ!? ワシの足が、小人ごときにぃーっ!?」
「はぁ、はぁ……」
ただ戦士の方もなんのリスクもなしというわけではないみたいだ。
行動力もわりかし減ったし生命力も削れてて肩で息している。
多分オーバーチャージして技を繰り出すみたいなタイプの反動技だ。
それでもこれほどの威力とは!
今のはまさしく会心の一撃。
すぐに血は止まったものの赤黒い顔を青くする勢いでンメル族の最初に絡んできたやつは後ろへと下がっていく。
「こんな馬鹿な……!! ワシはンメル最強の……!!」
「フン!! ンメル族も堕ちたな!! 貴様ごときが最強だと!? さっき金属を交わしてわかった!! 貴様、鍛錬すら怠っているようなありさまだったな!! それでよく自身を持てたな!! いや、弱い仲間とつるむことで自尊心だけ高めていたのか!!」
「や、やめっ」
「おうらっ!!」
そしてトドメの1発がバメロ族の巨大鬼から振り下ろされた。
キレイに前頭葉あたりに吸い込まれた金棒は相手の意識を軽く刈り取ったらしい。
「我が勝利なり!! 卑劣漢、破れたり!!」
「か、勝った……!」
「どうなるんだこれ」
勝どきをあげるバメロ族には悪いけれど言葉がわからなきゃ恐ろしい吠声にしかならない。
ただ冒険者たちの武器をおさめていいかわからなさそうな態度をみて把握したのだろう。
小さく「ム」と声を漏らす。
「もう今は戦う気はない。我らの地へ足を休めに来ないか……フム、伝わっている様子が無い」
ほうほうそれはそれは。
私はそそくさと準備をする。
亜空間から輪っかを取り出した。
いわゆる翻訳機だ。
「話をしたいのなら、これをつけてみてください!」
「む、小人の言葉がわかる!? な、なに、この奇っ怪な腕輪を……? わ、わかった」
冒険者たちは私達の動きを見ているが理解ができないため首をかしげているばかり。
腕輪は勝手にサイズが調整され巨大鬼の指にはまった。
「フム、これでよいか……?」
「「えっ!?」声がわかる!?」
「吾の名前はワ。ワ・バメロだ。そちらは?」
アノニマルースに来てくれた相手恒例のやりとりをしつつ。
巨大鬼は私達を自分の集落へと案内してくれた。
巨大鬼換算で近所にあるところまで行くとわりと木材な石材が積まれちゃんとした建造物たちが。
この城の内側メチャクチャ広いな……
多少空間拡張されているのかもしれない。
いや城の全貌なんてちゃんと見えないからなんとも言えないんだけれど。
「この場所は我らからしても巨大だ。同じ建造物を真似て作っている」
興味ありげにみんなで見ていたので解説してくれた。
真似だけでここまでやれるのだからあなどれない技術力だ。
彼は同じバメロ族に挨拶し味方として招き要れてくれた。
おかげてトラブルもなく入れる。
なんなら歓待モードだ。
「またンメル族か!!」
「ンメル族は殺したか?」
「いや……さすがに殺しはしていない。死者が出ると、止まらなくなる。ただ、鼻っ柱は叩き折ったな」
「ハハハ!! それでいい!!」
同じような服装で同じような姿だからめちゃくちゃややこしい……
それとは別に2メートルほどしかないちょっと姿の違う鬼もいる。
おそらくは子どもだ。
そして"観察"する限りトランス前の様子。
鬼たちはどことなくあどけなくかわいらしさがあるからそこから巨大でゴツい巨大鬼になってしまうのか……
時にはトランスとは残酷である。
彼等は何かの肉の丸焼きと飲み物であろう酒を持って言葉を交わしている。
私達の前にも来た。
……当然器代わりの物からして巨大鬼サイズだが。
冒険者たちと共に四苦八苦している間にも話は進む。
「ンメル族などという卑劣漢の集まりはもはやどうでもいい! それよりも小人たちだ! 彼等はどうした? 拾ったか?」
「むしろ、吾の命を救われたかもしれん! ンメル族は卑怯にも、聖なる戦いに割り込んで来たくせに、それを理由に防いだら、襲われただなのと叫んで仲間を呼び寄せた。元々は吾とそこの小人4人との聖なる戦い、穢された吾らは猛り狂い、勇猛果敢に倒した! アイツが無様な叫びをあげて、小人たちに射抜かれ弾かれ斬り裂かれる姿、もはや痛快愉快!!」
「ほう、それは見てみたかった! 特に戦いに負けただけで無様な悲鳴を上げるンメル族の姿をな!」
うーん戦闘脳だ。
「そういや、ワ・バメロさん」
「ム、氏族の中ではワでよい。発音は……まあわかるから良いか」
ワという表記だけれどなんとも言えない音を含んでいるんだよね。
1つの中に3つくらい音が閉じ込められているような感覚だ。
冒険者の戦士はたどたどしく再開する。
「ええと……ワさん。そのンメル族というところと、仲が悪いんですかね?」




