七百六十二生目 城下
アルベルトとはそこで別れた。
詳しい報酬の話とかは冒険者ギルドを通してからだしね。
プリトンは事情を説明しアノニマルースへ送った。
たくさんの封魔石と共に。
プリトンがどうするかは彼女次第だ。
というかアンデッドたくさんいるからまだ恨んでるなら難しいんだよね……
封魔石も向こうの面々が正しく解放してくれるはずだ。
ただアノニマルースにきたからにはルールは守って貰う必要がある。
こわい先住民がはりきっているのてまあ問題はないだろうけれど。
私は本命の方である依頼に向かった。
依頼の報酬受取はまとめてできるからね。
目的の遺跡は徒歩で数時間鳥車なら数十分とかなり近い。
まあ私は駆けて行ったんだけどね。
これが1番速いと思います。
あっと言うまに到着。
遠くから見えるその地は……偉大だった。
もはや役目が放棄され長年この場にあるだけの石造りの城。
自然が絡み合い歴史を感じさせる風格はもはや大樹がごとく。
はじまりの城……と冒険者たちは呼ぶ。
正式名称はあるんだけどね。
あんまり呼ばれない。
何せここからだ。
ここから異世界の者たちが一同に集ったり……
冒険者ギルドの始まりが起こったのだから。
ここが廃棄された理由は……実はよくわかっていない。
有力な説がいくつかあるだけだ。
1番それっぽいのは魔王との戦いで壊滅的な被害を受けて近隣に建て直しを迫られたから。
各国あれこれと出したくない記録と紛失した記録がたくさんあって過去の歴史って曖昧になりがちなんだよね……
まあ遺跡の調査はそこを明らかにする歴史的資料集めでもある。
冒険者が潜るようなところは危険と時空のゆがみがよくあるが。
朱竜と関わった城ほど大規模なのはおそらくないけれど小さな時空のいたずらみたいなのは各地にある。
遺跡はどうしてもおこるんだよね。
まあ時空を旅する魔物たちが居る以上いまさらだが。
私の目的そのものはここの探索によって大規模魔法の捜索だ。
世界中の異世界からきた者たちを探してみたい。
そして依頼は……
我らが冒険者の聖地の遺跡にて奥地に上位魔物が発見された。
調査依頼だ。
これが塩漬けされていた理由は2つほどあるだろう。
1つめは上位の魔物だから。
それだけで受けられる冒険者は限られてくる。
2つ目が場所だ。
はじまりの城……つまるところ冒険者の聖地は幅広い魔物たちがうろうろしている。
城下町や外側円周なら割と安全なんだけれど。
そこから踏み込んでいくとよくある迷宮並かそれ以上の危険域になる。
そして奥地はかなり危険だ。
世界に愛された場所というほどでもないが近くはある。
そこからでない濃い魔力漂う空間にはたまに強烈に強いものも巡回しているとか。
その油断出来ない環境下での上位魔物報告……
ようは更に強いということ。
そこから出ないんだからもうほっとけという感覚なのだろう。
ただ私としては嫌である!
はじまりの城が……冒険者の城が詳しいことわからずに放置されていて本当に良いのだろうか。
いや良くない!
ここはもはや志しみたいなものだ。
というわけでとりあえずひとりで乗り込むことにしよう。
「ここで飲み交わして誓ったのかな……」
将来的に全面保護してほしいほど城下町は立派に残っていた。
砕けた家屋に絡みつくツル。
倒れた机と欠けた椅子たちはここでの生活を少なくとも表している。
私はそっとトゲなしイバラで撫でつつ先に進む。
わかりやすいお宝はここらへんにはないだろうし……
あったとしても下級冒険者に残しておいたほうが良いだろう。
目の前をチラチラとして駆けていくネズミ型の魔物や小鳥型の魔物たち。
彼等は警戒心が高いのでこちらから行ってもまったくもって絡んでこない。
楽ではあるが山あり谷ありとは行かないか。
とりあえず城下町をぶらつくだけで当時の面影が脳裏にちらついてとても楽しい。
ここの魔物タチはいくらか好戦的もいるみたいだけれどこっちをじっと見たあとサッと逃げてしまう。
正面から行ったらまずいとバレているようだ。
それならそれで楽なので良し。
やはり相当な強敵じゃないと私との戦いが一方的になるし。
今は私自身がめちゃくちゃアノニマルース勧誘するものでもない。
正面城下町だけで数時間過ごしたのだが本来の目的を思い出し割愛。
いや忘れていたわけじゃないんだよ?
ただしここで特別な魔法に関するモノはなかった。
お行儀は悪いが移動しながら食事を摂る。
昼食を食べると胃に血が行ってしまうしその後運動すると胃の中身が大変なことになるので量とものは考える。
まあようはサンドイッチだ。
現地のおもしろ食事はまた後だ。
というかまだあのお茶が私の中で渦巻いている気がする……




