七百六十一生目 亡霊
じゃあどうしよう。
アノニマルースに勧誘しようとしたんだけれどなあ。
「この封魔石の中に御本人が、しかも私がなんとかしたんで正気でいるんだけれどどうしようか」
「んだコラ、そいやそんなことを言っていたな! まさか正気を失ってモンスターハウスに取り込まれていたとは驚いたがコラ……」
多分モンスターハウスではないんだよね。
第三者としてモンスターハウスにも力を貸してしまっていただけで変に宝石剣アンデッドソウルに混じってしまっていただけで。
そしてもっていた剣はアンデッドのものっぽいから多分死後に獲得したんじゃないかな。
「まあ、魂はないとはいえ、話はしてみたいたなコラ。ただ……ここはまずい」
「教会だものね……」
「もちろん宗教の意味合いもあるぞコラ。しかし、ここは対アンデッド用決戦地でもあるぞコラ。大量の浄化力が常に不活性状態であたりに漂っているが、もしアンデッドが触れればたちまち活性化、一瞬で浄化されるぞコラ!」
思ったよりもちゃんとだめだった。
私達は郊外の森の中へ行く。
ここなら良いというお墨付きを得たので封魔石を解放だ。
ちなみにそういう作業は本職であるアルベルトに任せている。
……うん本職なんだよね。
どうみてもゴロツキなんだけれど。
「〜〜〜、開け、天の裁きを待つものを、最期の言葉を聞かせよ!」
キラリと封魔石がかがやくとカラカラと音を立てながら揺れ動く。
当たりに魔法陣が生まれて封魔石から暗黒が立ち昇った。
どうやら出てきたらしい。
組み上がった骸骨が座った状態で顕現する。
「……ん? 朝……?」
相変わらず私から見ても小さい。
プリトンだ。
小中学生くらいしかないんじゃないかな。
まあでも成長やトランスの方向性で大きさっていくらでも変わるしなあニンゲン……
「これが……プリトン……いや」
展開した魔法陣さプリトンの周囲に広がっている。
まあようは結界みたいなものだ。
暴れられても困るからね。
アルベルトはプリトンのそばへとよって目線を合わせる。
「……クルス・ロンド隊長! 報告せよ!」
「は、はっ! 我が隊は作戦遂行が困難と判断、わたくしを殿に撤退を決行! 不肖わたくし、致命的な傷害を受けつつも今、帰還しました! ね、お兄様……ってあ、あれ……? 今のって何……?」
思わず私もアルベルトもため息と共にどうしても顔が沈んでしまう。
今わけのわからないようにキョロキョロしているプリトンはもはや紛れもなくアンデッドプリトンなのだ。
しかしアンデッドゆえに生前に染み付いた残滓が垣間見えた。
しかも帰還……かあ。
出来なかったよなあ。
こういうのはつらい。
「……クルス」
「え? それって誰ですか?」
ちなみにこっそり私がスケルトン語を翻訳している。
音を出す位置を気をつければ変な違和感もないだろうし。
……それにしても。
その後はアルベルトが何を訪ねようがもう何も『クルス・ロンド』が答えることはなかった。
最期の言葉を確かに私達は聞き届けた。
「義理の妹なんだコラ。孤児院育ちだったからなコラ」
「ああ、だからさっき……」
「恥ずかしいところをお見せしたなゴラァ! 忘れろ!」
本気で照れているらしい。
あのとき封魔石を抱えるように手で包み込んだからビックリしたもんなあ少し。
「こ、これってどうすれば!? わたしって妹さんなんですか?」
プリトンは状況がうまく飲み込めずオロオロするばかりだ。
「いや別に、アンタはあくまでアンタだ。いろいろ混在しちゃっていたようだけどな……問題は、どうするかな、アンデッドだもんなぁ……」
「今思ったんだけれど、アンデッドへの絶対的な敵視、みたいなのがないんだね……」
「ああー……もしかして、螺旋軍にでも会ったことがあるかコラ? まあ大小あるが、たしかにオレたちはアンデッドを嫌っているなコラ。ただ、住む者たちとしてはそれなりに折り合いをつける者や、オレみたいに聖典と実情は切り分けるタイプもいるなコラ。まあそれはそれとして殆どの実戦はアンデッド相手だがなコラ。多かれ少なかれ嫌ってはいるが、螺旋正規軍は格が違う。厳格な信仰が求められっからなコラ」
「ああ、たしかに正規軍とかですね……」
そういえばアノニマルースにきた光教の面々はなんやかんや折り合いをつけていた。
まあやっぱりアルベルトよりはあたりが強かったが。
「とりあえず、魔物ならばこっちの管轄なので悪いようにしないよう、ちゃんとしたとこに送り届けます」
「ん、そうかコラ。なら悪いようにしないと信じて任せるぞコラ。正直オレでは、どのように浄化させるかしか思い浮かばんからなコラ」
「ど、どうなっちゃうの……!?」
プルトンが震えているが……
まあ悪いようにはしないって。




