七百六十生目 螺旋
教会へつれられてきた。
……町の祈り教会かと思ったらこの国の本部教会だとは聴いていなかったけど。
王都に有るようは光教教会がこの国でやっていくための超巨大な施設だ。
勿論ココも観光施設である。
古くからあり荘厳で華やかなのにどこかしら落ち着いている。
多分空から見たら森の中に抜き出る白い建物と螺旋のシンボルがものすごく目立つんじゃないかな。
正直光教にはあまり好印象がない。
昔螺旋軍が帝国との共同戦線で多少ひとあてしたらさっさと帰ったからね……
それでいていつの間にやら華やかなる戦勝と書かれているんだから関係者たちは頭が痛くなった。
ただあくまでそれははるか遠い地と正規軍たちの話。
ゴロツキみたいな格好で茶をしばいている目の前のアルとはまた別だ。
「まず、今あらためて調べさせているがパットみてもうあそこに邪悪な気配はないぞコラ。本当に助かったぞコラッ!!」
ゴッという鈍い音と共にアルの頭が机に叩きつけられた。
凄まじい勢いで頭を下げた……
行動1つ1つが全部エネルギッシュ。
すぐにがばりと顔をあげる。
額は大丈夫そうだけど机が少し凹んでいるような……
「オレはアル、アルベルト・ロンド。まあここの建物と組織を任せられているぞコラ。まあそこんとこ夜露死苦だコラ」
「う、うん……私は今更だけど、ローズオーラ」
「もちろんご存知だコラ。冒険者なのに多額の寄付金をくれてたみたいだなコラ。まったく頭上がんねえぞコラ!」
その話し方はなんとかならないのだろうか……?
あと顔もいかついままなので空気感がおかしいままである。
「そして、あの屋敷、もちろんモンスターハウスなんつーもんをのさばらしておくわけにはいかねぇからさ、オレらとしてはさっさと倒してほしかったし、なんならオレがシバキに行くところだったんだコラ。事前調査の情報が入るまでな」
「……上位個体の住処、ですか」
「そうだコラ。やべぇ奴らが量産されている、とんでもねえ化け物屋敷になってたんだコラ。普通はありえねえ。もしここが長年放置されていたんならともかく、街中でモンスターハウス化したその日だコラ。異常な場所には異常な検知、調べたらプリトンがいることがわかったんだコラ。プリトンはウチでも特別視されているアンデッド狩りのアンデッド、プリトンがいるんならっつーことで、こっちでも安心したんだコラ。アイツは、死してもアンデッドを憎む、下手な聖職者よりもらしい存在だからなコラ。それに……」
なるほどプリトンってそんな扱いなんだ。
アルベルトはさらに続ける。
封魔石を爪でつつきながら。
「あそこの屋敷に来るプリトンと聞いて、オレや他のやつらが思い浮かべるやつが、ひとりいたんだコラ」
「今までの話からすると……もしかしてあの屋敷の持ち主、聖職者だったとか?」
「そうだコラ。こっちでは有名な聖職者で……その……後輩だった。ただ、最期まで戦い抜き先に天へ召されちまったがなコラ。アイツの屋敷にアンデッドへ執着するアンデッドが行ったと聴けば、そりゃあまあ、人一倍アンデッドへの対策をしていたアイツがその執念が形になったと思っても、おかしくはないからなコラ。まあ、こいつが本当にそうなのかはわからない、わからないが、繋げて考えたくなるのはサガってやつだなコラ……」
だったら伝えるべきことが有る。
「そのプリトン、奥地で意識が混濁して眠りについていましたけれど、実は彼女の肋骨内側に、アンデッドころしの剣を抱いていたんだ。心当たりは?」
「うーん、そもそもアイツは全身アンデッドころしの装備だったぞコラ。でも剣じゃあなく、セイクリッドチェーン、つまり聖なる鎖が武器だったぞコラ」
あっ覚えがあるぞ。
「それはこの武器?」
私はバックから絶対出ないサイズの剣とそれに巻かれた鎖を出す。
まあ武器類は回収するよねそりゃ。
ただこれって剣な気がするんだけれど……
アルベルトは少し驚いたが魔法のカバンだと納得したらしい。
「おっ!? って剣……いやこの鎖、まさか!」
アルベルトがガバリと鎖を掴む。
布で磨くと銀色の輝きが取り戻されてきた。
すると細かい細工がされているのが見える。
「鎖は螺旋のように繋がり、邪なるものに神の裁きをくださん……この文、本物だコラ! やはり、アイツだったかコラァ……まさか身体がアンデッドになってまで狩りをしているとはなぁコラ」
「もしかして、亡くなったというのは死体が回収できない状態だった?」
「ああ、正確には任務にだしたら部下たちは逃して……ってやつだなコラ。応援に駆けつけて殲滅したが、もう死体もなかったんだコラ。魂の救済はちゃんと儀式を組んだから召されただろうが、まさか肉体に染み付いたアンデッドキルの意思だけで立ち上がるとはなコラ」
凄まじく濃いエピソードが投げつけられてきたな……




