七百五十八生目 治癒
私に対して毒にならない光魔法がギリギリ間に合った。
「……"リフレッシュ"」
私を淡い光が包んでアンデッド化と拘束が解除される。
抵抗に成功したわけだ。
単純な状態異常回復の魔法。
しかしそれこそが大きな決定打となった。
もはや宝石剣おそるるにたらず。
下手にいつもの直剣を手放し短剣の宝石剣アンデッドソウルを持っものだから使い慣れない得物にまごついている。
ここを好機とみる!
回復よりも私は前へ出て身を翻すようにイバラを連続で叩きつける。
私自身も踊るように跳ぶようにするとイバラが簡単に威力を持つ。
体勢が崩れたプリトンに受けきれるはずもなかった。
剣を手から弾き骨を打つ。
そのまま鞭剣ゼロエネミーが強烈な縦の振り下ろして斬り裂き吹き飛ばす!
追撃でサブマシンガンを放ちつつここで魔法を決める。
枠を4つ使って……
"二重詠唱"で……
8連続聖魔法"レストンス・アレンジ"!
バラバラになっているプリトンの足元から大量の極光が立ち昇っていく。
そのまま突撃!
「これで、戻れえぇぇ!!」
私は思いっきりかけてあえて武技もスキルも使わず。
単に殴る!
この拳に"無敵"を集中させてねじり込む!
立ち昇る極光と私の拳に纏う"無敵"と力の光。
強い反発を感じながら更に踏み込んでいく。
ねじって力を込めて押し込む!
ピカピカと輝く美しい景色はむしろ目を焼くような力強さで。
やがて光が収束し私の力も手応えを感じた。
残心を取って向き合う。
白骨が組み上がり最後にちょっと大きな頭骨を頭の位置にはまる。
かちりとはまったあと眼窩の奥にある暗闇から視線を感じた。
その視線は……
「あ……れ……? 朝……?」
そのままプリトンは倒れた。
プリトンは正気に戻ったらしい。
ただすぐに意識を失う。
意識を失った白骨ってそれ単に死体じゃあ……
まあ魂は失われてはいない。
そう魂が感じられる。
やはり彼女は天然のゴーレム種アンデッドだ。
封魔石に閉じ込めておいたのであとでアノニマルースで話を聞くのが楽しみだ。
さて。
後は大きな後始末だけだ。
私は建物から外へ出る。
そう。普通に開いているのだ。
実に不気味なことにね。
そして未だ収まらぬ邪気。
建物からにじみ出るおぞましさ。
生命に対して反感するような殺意。
そう。あとひとり相手をせねばならない。
『……ォォォン……』
「この念話は……」
『……オオォォン……』
ズシンと響く念話。
そして物理的に響く地面。
それもそうだ。
『……オオオオオォォンン!!』
最後の相手はこの屋敷そのものだ。
これは憑依系の魔物。
呼び名はまさしく。
「モンスターハウス! そこから出ていってもらうよ!」
モンスターハウスは身体を揺らして響かせ木のような腕と岩のような鋭い脚をたくさん生やす。
そしてなにより大量に飛び交う邪気かわ実体化し影の爪となる。
散々この中でそだてたおぞましい力だ。
ただモンスターハウスって実はモンスターハウス単独だと既に攻略方法は凄く一般的に知られてるんだよね……
相手がこちらを襲いかかろうとしてきて。
ギッと音が鳴ってから動きが止まって違和感に気づいたらしい。
いやまあこの対処法そもそもモンスターハウスだとわかってモンスターハウスに乗り込むなら当然ではあるのだが。
「今トラップが起動したよ。キミの内面にガッツリと除霊魔法陣を刻んである。キミの力を利用して、キミを除霊する魔法陣のね」
そういうキットを使うか私みたいに直でやるか。
方法は違えど結果は同じ。
光があらゆる窓から溢れてくる。
『ウォオ? オオオオオォォ!? オオオオオオ!!』
叫んでいる屋敷がまるで燃えているかのように光が灯っていく。
まるで助けを求めるようにあがいていくがそのあがきすら消えていく。
モンスターハウスが自身の力を使われてしまっているからだ。
だんだんとあたりの邪気が払われていく。
正確にはモンスターハウスが慌てて吸い取ってそのまま浄化のエネルギーにぶん回されているようだ。
すべてをどんよりとさせてしまうような力は失われ夜の力が大地から抜ける。
空から輝かしい光が見えてきた。
そういえばこのエリアに入ってきたときから不自然に暗かった気がする……
昼の力が安定的に供給され大地の植物たちはキラキラトかがやく。
既にモンスターハウスの影の爪は消え去り生えた腕はポッキリ折れている。
こちらを串刺しそうな脚たちはうごめかすほどに変な方向へ折れ曲がっていく。
そして無惨に崩れていくそれにできることはただひとつ。
『オオォォォーーン』
憑依がとけて中身が逃げ出した!




