百七十九生目 量産
こんにちは、ローズオーラこと私です。
今、私はスキルの特訓兼仕事中です。
はい"変装"!!
ぐぐっと持ち上げた身体は二足歩行へと変わる。
こうなると私の足はニンゲンたちから見るつま先立ちがデフォになっているってはっきり分かるね。
まあでもこの身体はこれが自然なので疲れやすかったりはしない。
"変装"もちまちまとレベルを上げたおかげでレベルが上がり7に。
その成果を今見せる時!
前足を変化!
指に変えて神経を通わせる!
ここで維持。
そうしてからペンを掴む。
指先を動かしてペンを正しく持つ!
そう、鷲掴み以外にもこんな器用なことが出来るようになったのだ!
激アツで地味な特訓の末にここまでこれた!
もはや異常に体力や神経をすり減らさなくとも出来る!
まあ手順ごとに意識する必要はあるが……
だいぶの進歩だ。
これをして今机を挟んで向かいにいた鳥系の魔物は驚いている。
まあ私の姿が変わったし当然か。
でも仕事するのにいるのだ。
「依頼の申請ですね、どういった内容ですか?」
魔物から聞く内容を紙に書き記していく。
やはりというかなんというか前世の記憶にある紙やペンがどれほど工夫された末だったのかよく分かる。
私がこの"変装"で書くのが慣れていないのを踏まえても書きづらいなあ。
イタ吉を待ちつつも依頼を受けたり受けた依頼を紹介して過ごした。
イタ吉たちの宣伝活動はうまくいっているらしく、時間がたつに連れてテント内は魔物たちが増えていった。
とは言っても私の身はひとつしかないから説明待ちの魔物だけがドンドン増えていく。
そのため観光気分で見て回る魔物がたくさんだ。
説明がないからここの施設の意味は半分もわかってないだろうけれど大人しくまっててくれるのでなんとかなっている。
「……といった感じの依頼が張り出されていますね」
「すいません、その中の『癒やしを使える者募集』というのは?」
「ああ、それは私が張り出しているやつですね」
魔物たちに説明する。
前に倒れた者たちが出たときにも実質上の治療は私待ちになっていた。
そのために癒やしの魔法やスキルを使える魔物がどれだけいるか調べたいのだ。
そして彼らで常に負傷者を癒せるようにしておきたい。
使えるものは少ないだろうがゼロではないはずだ。
「……まあそういうわけで、癒せる魔物知っていたら教えてね」
「わかりました!」
「ちなみに使える?」
「ムリですー!」
だよねえ。
今のところだあれも応募者がいない。
困ったものだ。
そんな調子で半日やってイタ吉が良さそうな魔物を連れて帰り、彼らに仕事を教えてまた翌日には冒険者ギルドを開いた。
九尾によると例のマシーンがとりあえず出来るだろうと言っていたのはあのときから3日後。
なのでその時間までは忙しく過ごした。
そして。
"ファストトラベル"で九尾家に移動して出来たかどうかの話を聞きに行く。
ブザーを鳴らせばいつも通りの態度で九尾が出迎え中に入れてくれた。
モノがあるのは隠し地下室なのでさらに移動。
「ま、ワシは天才じゃからな。とりあえずモノは出来ておる」
「おお……これが!」
「まあまだ同時発信数を増やしていかねばならないがの」
前のはまだどちらかといえばむき出しの設置機械だったのだが今回のは美しい魔法の光が舞うファンタジーなものだ。
台の上に巨大な水晶玉でも乗っているかのように見える。
実際は複雑な魔法技術と科学を組み合わせている代物らしい。
「さて、ここからが大きな問題じゃ」
「というと?」
「ワシは天才じゃがひとりしかおらん。つまりはコイツの量産ができないんじゃよ」
そう言って九尾が指したのは受信機のリングだった。
前とはこちらもちょっと違う。
アクセサリーと言ってもそこまでおかしくない雰囲気がある。
「作りは単純じゃが材料調達と作成にワシが手を割いたら本体の方がいじれん。お前さんのところで頭数用意できんかの」
「そういうことなら……」
というわけで。
「で、私がスケルトンたちに作らせれば良いのね?」
「教えた通りに作らせるんじゃぞ」
「材料は冒険者ギルドを使おうと思う。だから作成はよろしく!」
"ファストトラベル"でトンボがえりしてユウレンを連れてきた。
九尾から渡された設計図とにらめっこしているユウレンは後で回収するとして冒険者ギルドへ"ファストトラベル"。
冒険者ギルドに新たな依頼を次々と張り出した。
「ローズ、これは?」
「物を作るのに必要な材料集め!」
イタ吉にたずねられ答えた。
金属は火山の迷宮で確保出来るし他の材料は確か外界にある。
どちらも出発と帰還は私を使えば早く出るので問題ない。
さあていそがしくなるぞ。
「俺それをやりたい!」
「熱いの大丈夫な方たちは火山付近の方も受けてね!」
「私、炎を喰らっても平気なくらい熱いの大丈夫」
こうして数日は特に集中して受信機づくりへと励むこととなった。