七百四十六生目 依頼
ランクが増したことはまあ想像がつく。
朱竜とバチバチやりあったからね。
城の攻略もしたし。
ただついにラストへの王手がかかった。
生きている冒険者ではランクWプラスが最上限だ。
なんだか感慨深くもある。
「ありがとうございます。なんというか……ここまで来られるとは、はじめの頃はまったく思ってなかったので」
「まあ、あんたを伝説の英傑だと疑わんやつはおらんよ! ま、トップランカー特有の気配の消し方は、何度見ても心臓には悪いがな!」
「ああ、ごめんなさい。クセづけてるというのもあるのですが、何分普通に解放するだけでまあまあ迷惑な気配になるんで……」
「わかっとる! 歩くだけで英傑の気配振り回される側を考えたら、そらそうなわな!」
ギルドマスターは声が大きい。
ただ威圧ではなく快活といった雰囲気。
昔から誰かを引っ張っていく姿を幻視する。
そこでまずは一服茶を呑む。
……ん! なんだこれ!
「わっはっは! その顔は初めて呑む味かな、自由の英傑! これはワシのお気にでな、ここらではメジャーな魔物である痩せ身の牛がいてだな、そいつらがめちゃくちゃ出すミルクを加工した酒だ! まあ、実は酒精はほとんどないんだがな! それに合う茶葉で煮出してある!」
「お、おいしいです。すごい、なんだか酸味と僅かな辛みとまろやかさと……飲んだことのないお茶だ……」
嗅覚がグングン刺激される奇妙なお茶。
パット見ミルクティーなのに味が全然違って味覚がバグを起こす。
ヨーグルト食べてるようなのに突き抜ける香りが高級な茶だと訴えかけるし刺激は酒じゃないかと騒ぐ。
なんという異国スピリッツ。
「さて! 勿論ココにわざわざ来てもらったのは、単なる祝いのためでも、自由の英傑から興味深い話を聞き続けるためでもない!」
「ですよね……溜まってますか?」
「ああ! バッチリガッチリ溜まってる! これらだ!」
ギルドマスターが机の上に並べたもの。
それは……不良在庫と化した依頼たちの紙だった。
5枚ほどもある。
当たり前っちゃ当たり前だけど依頼には人気不人気がある。
そして個人指名と全体公開。
そのうちの全体公開かつ掲載期間が1月とか1年とか場合により10年でもうしまわれているもの。
ちなみに緊急性が高いものや期日が迫ってるものはギルド側が押し付けるように投げる。
ただ難易度が見合ってなかったり期日がなかったりするとずっと貼られたままで……
なおかつ生命や文化の危機みたいなものでなければ放置される。
ちなみに生命や文化の危機だとだいたいどの国も威信をかけて出兵と徴兵するので冒険者ギルドとしてやることは少なかったり。
それにしてもまあものの見事に……
「2つ名つきと上位魔物ばかりですね」
上位魔物というものは通常魔物に比例して強く良い場所に住まう魔物たちのことだ。
上位魔物はその存在で周囲が影響を受け通常よりも良い素材が取れる他ここでしかみないものもある。
何より上位魔物は2つ名がつかないということでその場ではたくさんいる1つでしかないのだ。
もちろんあくまで冒険者たちの区分なので何か大きな変化があるわけじゃないんだけどね。
つまるところ……
レベル10のイタチ魔物たちの住むところがあって。
その奥地にレベル50のイタチ魔物たちが住む場所がある。
前者が通常魔物で後者が上位魔物だ。
めちゃくちゃ強い。
通常個体が住むところと比較するとやはり上位のところは富んでいる。
同じ迷宮でもだ。
そしてそんな迷宮から抜け出して特殊な技を身に着け別のところに潜み被害を出している魔物なんかが2つ名がついたりする。
あとは単純に『ここの支配者!』って風格を漂わせているやつにも2つ名はつく。
ちなみに私はそれよりも前に動いたせいで冒険者として自由の称号を得てしまいそれが2つ名になっている感じだ。
「おお、まあな! 1つ目、上位種の類人型が近くの迷宮でいるから、ハントして持ってきてほしい依頼だ!」
「うーん、ハントかぁ……」
「その2! 街の近くに有る採掘場の1つに上位種の大型虫たちが住み着いちまった! 蟻型が確認されているから、集団で来るぞ! ただあまり表に出ない! 生死問わず!」
「あ、それなら後でどうにかできそうかな……」
「3つ目! 戦っている様子を絵に収めたいらしい。護衛と上位魔物との戦闘、迷宮は困るらしい、なるべく勇ましいヤツで! 相手は要相談!」
「うーん、勇ましさか……」
「その4! モンスターハウスと化している1軒家の解呪願いだな! 中の幽霊魔物たちはそろって上位、ただあくまで慈善事業、中に入らねば危険がなく、持ち主は既にこの世にいないため、報酬が雀の涙だ!」
「町中の、呪われし家か……」
どれも迷うなあ……
なんと!この下に各話にいいね!をできるようになっていることをさっき知りました!設定を変更しておいたのでぜひお気に入りの話にいいね!をしたら特に何もないですが作者とその話の主役たちがよろこびます!




