七百四十四生目 植魔
さてこの冒険者ギルド立ち上げの流れで面白い記述を見つけた。
それはこの世界であらゆる観点で保護のない転生や転移者に対する記述。
彼等は冒険者ギルドが拾い上げることになることは非常に多かったらしい。
全員が全員いきなりオンリーワンやトップワンを持っていたわけではない。
国家という最大多数から不必要と切り捨てられたりそもそも身分がないため国家不法滞在者として犯罪扱いされたり……
生まれつきなんやかんや忌み子扱いで教会行きになったりまあ様々。
だからまあアウトローというかガラが悪い集団というイメージは間違ってはいない。
信用家業なのでアウトロー貫き通すやつはよっぽど実力があってよっぽどカリスマがあってよっぽど捻くれてるやつだけだけど……
まあそんなこんなで。
「異世界来訪者歓迎会、ねえ……」
これこれこの記述!
冒険者ギルドは記録に残る範囲のはるか昔に異世界人来られるやつみんな集めて相互扶助会を組んだらしい。
もちろん悪の転移転生者はこなかったようだけど。
ここで気になるのは集め方である。
なにせこの時1つの国の王から森の端っこで暮らしている野生児まで集まったらしい。
その肝心の集める魔法がない……!
ここに書かれてないんだ!
多分異世界人だけを世界中から探す魔法があったはず。
しかもおそらくメッセージを届ける。
この書き方から察するに……メッセージを送れたことはわかる。
けれど誰のどこへ届いたかは不明なのかな?
それとおそらく返信もできる。
それでどうにかして集まったはずだ。
この会はニンゲンしかいない。 魔物に転生した者はいなかったのかはたまた危惧したか……読めなかったか。
それと当時は現在よりもずっと世界の行動できる範囲は狭かった。
早い交通手段はないからね。
いざ本当に全世界へ届くのかは不明だ。
でもこれ気になるなあ!
どうにかしてわからないだろうか。
お……記述があった。
魔法じゃなくて場所だ。
1回目が開かれた場所は蒼の大陸の……西の方っぽい。
なるほど東側はよく行くがあんまり西は行ってないなあ。
青蒼の大陸は大きい。
行っていないところという観点ならめちゃくちゃある。
ぜひ小旅行でこの場所まで行ってみようかな。
というわけで。
こんにちは私です。
今日はどこへやってきたかというと。
みんなとの魔法共有で得ていた"ファストトラベル"地点についた。
つまり私自身はココは初めて。
青蒼の大陸にある帝国から思いっきり西の少し北。
ここの国家は今はそこまでめちゃくちゃ栄えているわけではない。
かといって貧窮極めてたり悪辣潜んでいたりもしない。
そう……言うなれば平和。
私は王都にたどり着き周囲を見回ってそう感想付けた。
非常に質実剛健というか豪華絢爛や意気軒昂という感じでもない。
ただひたすらにここは多くの時が流れずっと人々が住んで積み重なってきた。
そんな生きてきた道が見える。
古びた街という感じはない。
常に人々が直し壊し建て直して。
生きている街だ。
ただ今回私は目的があってここにきている。
ひとまず宿をとる。
適当な宿を見繕って泊まるのも旅の醍醐味だ。
今回泊まった宿はなんとこの王都で3代続く由緒正しき宿。
ちなみに1代目も2代目もなかなか譲らなかったらしくそのスパンは実に50年以上。
家族経営ではなく会社経営なので孫やひ孫が経営しているわけではない。
建物は数度の増築と数度のリフォームで不可思議な大きさになっている。
踏み込んだエリアでいきなり雰囲気が変わってああ増築したんだなとわかったり。
いきなり古めかしい柱が出てきて昔から支えてくれたんだなと触ってみたり。
館内案内図に書き足され直されたものに歴史を感じて。
ぐっすりと眠れるベッドと現地のあたたかみを感じる食事。
特にカレーを食べた後だとそう思う。
1階に止まったので素晴らしい庭が目の前に広がっていた。
庭ではこの国周辺の森林を人工的に再現してある。
ニンゲンたちが多少踏み込みやすく整えてあるが荒々しい部分はわざと残してある。
なので植物に混じって魔物植物がいる。
……気づいて……は、いるよね?
うんたまに動いているしさあ。
さすがに気づいてないことはないとは思う。
サッと誰か来たら動き止めるけど。
環境を見ていると早く冒険に生きたくなる。
しかし私が挑むのは残念ながら森のある迷宮とかではない。
遺跡だ。
異世界人の集会はこの王都から行ける遺跡にある。
いやあ……シンプルな冒険劇はいろんな意味で久々だ!
こういうときにワクワクできるあたり私もなかなかの極まり方をしているらしい。
なまった身体を叩き起こし危機管理能力を再稼働させて。
何より1歩足を踏みしめる感覚を今!




