七百四十三生目 農業
こんばんは私です。
こうやってひとり家の中で本を読む時間がめちゃくちゃ好きだったりもする。
アウトドアとインドア両方いける口だ。
「ん……」
この記述は?
今私が読んでいるのははるか昔に書かれ保護されていた冒険者ギルドの成り立ちの写し本だ。
つまりデータとしての側面が大きい。
おかたい文書の羅列なのだがこれはこれで面白い。
難読の塊みたいな魔術系の本は読むというより解読するみたいな体制に入る。
本から学んだ畑をちゃんと作るための魔法アノニマルースで役立ってます……!
そして書かれていた内容だけど。
冒険者ギルドとはまったくもって別の組織だったということだ。
冒険者ギルドの前身は実際の所1ミリも冒険していない。
いやむしろそれを言うことが大きな冒険だったというか。
この本借りてきてよかった。
私のランクを使って冒険者ギルド自体から借りてきた貴重品だ。
貸出ということで魔法で保護されていて非常に堅牢になっている。
この上にインクをこぼしても全部弾かれるだろう
そのぐらい重要視されてるとも言える。
「自由と個の存在を訴える市民団体……」
そう。
つまるところ単なる市民団体だった。
ある程度過程は省くがこんな早い時期に人権に対しての話が持ち上がったのだ。
まあもうこのころ後の歴史書で暗黒時代とか書かれている国すらある。
まだまだ他者と自分の生存権利がふわふわで上位の立場ならば資源として下位の立場を無限に墓地へ送って良い時代。
いや今も大局で言えばまだまだなんだけど。
前身の市民団体は未来の感覚に目覚めたニンゲンたちが自由を掲げたものだ。
そう……おかしいのである。
そんな思想がいきなり湧き出るわけがない。
この本はデータの記録であり憶測は書いていないが……
大元は転生者じゃないかなこれ。
しかもかなりの年代のかなりの国。
最初の頃はまさしく吹けば飛ぶと思われていてなんも気にされてなかった。
しかも当時の思想からすると先進的すぎる。
何言ってるか全然わからないし突けば突けれるだけの反論があった。
……私の前世の世界でも特定人種の奴隷を止めるというので大揉めした。
もっともらしい理屈もたくさん出てきて戦争までした。
結果的に合法奴隷はなくなり奴隷は非人道的という認識がそこの国では一般的となる。
それでも人種的なあれこれは根強かったけれどそれはまた別の話として。
そんな風に隔絶した思想だから注目されなかった。
……権力者たちが気づいたときにはもう手遅れだったのだ。
各国で同様の市民団体が立ち上がり同時に凄まじい自衛力を発揮しだした。
……根回ししていたのだ。
勝ち目があってわざわざ市民団体にしていたらしい。
そして単純な権力者対市民にはならない。
権力者側からも次々支援が入る。
どこまでも手広く手を回していたんだとか。
そして市民団体は徐々に姿を変えてくる。
国をまたぐ自衛団だ。
各々が各々の国の権力と悪徳を監視しつついくらかは自衛し政治を学び農地を耕した。
実は現在の冒険者ギルドも立法や行政そして司法の監視と自立が機能として加わっている。
いっぱしの冒険者にはあんまり関係ないが各国が連携して組織だって行われていた。
前大河王国の冒険者ギルドが潰されていたのがどれほどやばいことだったのかと改めて思う。
相互監視と相互協力というなあなあにならずかつ喧嘩せずの関係を築き上げた。
冒険者ギルドの多大な戦力は傭兵ギルドや護衛ギルドよりも高いかもしれない。
天下無双の冒険者だっている。
なので実は正式な言葉で言えば冒険者ギルドに所属する者たちの武力は認められていない。
同時に否定もされない。
なんとも大胆に各国片目をつぶっているわけだ。
自衛団は細分化したり合流したりしながら自由と個を愛するものたちの集いとしての形を保ちつつ社会貢献の形をはっきりさせてきた。
それが冒険者だ。
自衛団といえば聞こえがいいが片足泥に突っ込んでいるような立場。
それをもっとクリーンに夢を見られるように。
そして社会がこの武力を良いように活かせるように。
国家という枠組みにとらわれずにあらゆる国家たちに潰されずかつ互いにうまいこと利用できるように。
結果的に冒険者ギルドという形になった。
ちなみにその成り立ちのおかげで農業ギルドとめちゃくちゃ仲がいい。
畑の人手が欲しいとかなんか探してつんできてほしいとか害獣を追い払ってほしいという依頼がたくさん舞い込むのはこのおかげだ。
そして冒険者たちは希少な食料を守ることは死活問題と理解している。
農業ギルドに確かなおいしい食料をいっつも頼んでいるのだ。




