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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け
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七百四十二生目 咖喱

 こんにちは私です。

 今私の目の前にあるもの。

 それは……


「大河のカレー」


「大河王国の……」


 私やホルヴィロスそれにホルヴィロスの部下たち。

 最後にシュイがいる。

 シュイは浄化されてしまい漂白レベルのことをされてしまったが嗅覚は覚えていた。


 大河王国とのラインが生まれ商品が流通している。

 そして大河王国の国民食はカレーである。

 チャパティと共に召し上がれ。


 ……とやりたかったのがだいぶ前。

 シュイがカレーのにおいを覚えていたのが発覚したのが最近。

 そしてシュイいわく『ぜんぜん違う』というありがたい言葉をいただいた。


 多分シュイ自体はカレーを食べていない。

 そんないい環境ではなかった。

 だが奴隷飼いは別だろう。


 大河王国では国民食だ。

 一般家庭で食べる。

 そのにおいを再現するために散々苦労した成果物がこの小鉢に入っている。


 カレーは小鉢に詰めて各々にわける。

 皇国でまともに作ろうとしたらこれだけでも高級品だ。

 香辛料を融通してくれるのはありがたい。


 チャパティは逆に簡単だった。

 パンの簡単バージョンのごとくお手軽に作れる。

 このたくさんできたチャパティに小鉢のカレーをつけて食べるのだが……


 そう全員共通規格なのである。

 私は味見していない。

 ホルヴィロスは今も「おいしいよ」と言ってニコニコしている。


「たべんの?」


 シュイが尋ねてくる割に食事前の挨拶したっきり手が動いていない。

 つまり誰も彼も自分がこのにおいの物質をイケるかこわごわしているのだ。

 ホルヴィロスは他者のリアクションを楽しみにしている。


 ホルヴィロスが全員の毒性を把握していないわけがないので食べても平気だろう。

 死なないという意味で。

 このターメリックがたっぷり込められたようなオレンジカラーの中にどれほどの香辛料がぶち込まれているのかわからない。


 そして自然に私へ全員の視線が来ているのがわかる。

 だろうな!

 よーし……ええいままよ!


「やっ!」


 チャパティという円形のパンみたいなものをトゲなしイバラで掴む。

 1口の大きさにちぎってカレーに浸した。

 見慣れないものからしたらカレーの使ったチャパティの色は猛毒の沼にも見えるだろう。


 もちろん蒸気を上げて溶けるなんてことはしていない。

 刺すようなかおりが響く。

 この香りがニンゲンであるシュイや試食したホルヴィロス以外がためらう理由。


 私のマズルの鼻先につけないように慎重な運びで。

 さすがに誰でもわかる。

 過敏な鼻先にこんなものつけたら悶絶ものである。


 そっと口の中に運んで……

 噛む。

 素敵な食感。


 そしてカレーのお味はと。


「……あれ? あんがい辛くない。おいしい!」


「よかったー」


「よし、食べよ」


「ローズちゃんがいけるなら大丈夫かぁ」


 ホルヴィロスの部下たちは普段仕事のときは敬語を使ってくれる。

 仕事以外の時は珍しく私をちゃん呼ばわりするのだ。

 ……ってうん!?


 な……なんだ炎!?

 私の内側に炎がうねりだした!

 ドラゴンたちはブレスを吐くときに自らの内側にある燃料Aと燃料Bと酸素Cを練り上げエネルギーでまとめあげたあと着火し圧力の関係で吐き出されるらしい。


 つまり今私の中で行われてるこの炎。

 痛み。

 熱!


 1つにまとめあげて空へと打ち上げる!


「からあああああぁぁぁ!!!」


「うわっ」


「あおいのがこわれた」


 シュイは私のことをあおいのと呼ぶ。

 それよりも辛い!!

 ひえー! 鼻の奥から遅れてやってきた!


 でもうまいなあ!

 それはみんなも同じだったらしく各々悶絶している。

 ホルヴィロスはいい笑顔をしていた。


 ホルヴィロスめ……私達の味蕾や嗅覚を把握していないとは言っていなかったはず。

 そしてギリ許容範囲だと考えて踏み込んだか。

 いやでもほんと。


「でもおいしい!」


「からっ、からっ、うまっ、からっ」


「なんで甘い茶が先に用意されているか、今わかった……!」


 みんな……私を含むみんなでお茶を飲む。

 ひどい目にあった……!

 ホルヴィロスは笑顔のままカレーを食べ始めたけれど。


「ふん、ふん、ふん。まあ、こんなもんだろ」


 一方パクパクと食べているのはシュイ。

 シュイはまったくもって平気らしい。

 ニンゲンだから以上にやはりお国柄なのものあるのだろうか。


 でも手は止まってない。

 よほどおいしかったようだ。

 私達も口から火を噴き出す勢いのまま食事を進めていく。


 まさしくこんな刺激的な食事は初めてだ!

 私は特に毒への耐性があるからかこういうものに対して奥行きの甘みすら感じ取ってしまう。

 複雑なスパイスの重ねが私の嗅覚を支配していく。


 みんなあっという間に食べきり……

 シュイに至ってはおかわりしていた。


「うん、そうか、こんなもんか、そうか」


 彼女は……納得できたのだろうか。

 漂白される前のシュイが少しでも浮かばれると良いのだが。

 いや別に魂は死んでないが。


 アノニマルースでカレーが流行るまで後少し。

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