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百七十七生目 威嚇

 冒険者ギルドはイタ吉に任せてと。

 私はテントの前で待たせていたみんなと顔を合わせた。

 アヅキがこっそり耳打ちしてきたのだ。

 『異常事態が発生しました。みな集合をかけてあります。集まり次第ローズ様も来ていただきたい』と。


 いつものメンツに前回いなかったクマのジャグナーに植物のような妖精2匹もいる。

 明らかに普通ではない事が起きたということだ。


「それで何があったの?」

「テントに向かいながら話しましょう」


 それは私がこの群れから離れていた時の事らしい……


「遠方から大きな力を感知したのですが、それそのものは前に知っていたあの大型魔物のものでしたので、その時は大きくは警戒していませんでした」

「あの洞窟の中にいた大人しい毛むくじゃらの?」

「はいそうです」


 ざわつきはしたが、全体的にはそこまで慌てなかったというところ。

 この荒野の迷宮出身ならばたいてい知っているという程度には有名な魔物だったらしい。


「それでその魔物が私たちのテント付近まで歩いてきたかと思うと静止し、強く吠えました」

「強く吠えた?」

「あれは……凄かった……」

「怒ってたように威嚇してたよね……」

「近くにいた魔物たちはみんな倒れちゃったほどだったんだっけナー」


 妖精たちが補足するにそれは警告のようだったと言う。

 あの魔物は前に言っていた。

 自然の成り行きに任せると。


 私たちの存在やここにテントを張るのは明らかに自然ではない。

 そのことが怒りに触れたのだろうか。

 しかし……何が目的なのかがわからない。


 自然傾向とは言え破滅まっしぐらだった大軍2つの衝突にすら不干渉を決めていた。

 だが私達には関わるつもりなのか。

 彼の中の関与するラインがわかりづらい。


 いわゆる、自然であれば死ぬことすら厭わないという考えなのだろうか。

 そうだと私とは真っ向からぶつかる思考になる。

 厄介だ。


 テントに着いた。

 ここには先ほどの襲撃ならぬひと吠えで影響を喰らった魔物たちが運ばれていた。

 数匹程度ではあるが、倒れ込み気を失っている魔物もいる。


「アヅキも近くにいたんじゃあ?」

「私はなんとか耐えましたので……」

「遠くでもあんなに怖かったのにスゴイですね」


 "観察"をアヅキを含めしてみたがみな命に別状はなさそうだ。

 気絶、恐怖の状態異常が見られる。

 平然と立っているように見えるアヅキにも恐怖の状態異常。


 今アヅキが少なくともまともなのはその対象が目の前にいないからだろう。

 しかし恐怖体験はトラウマになる。

 今のうちに緩和しなくては。


[ピースマインド 対象の精神的異常を取り除いたり緩和する]


 聖魔法による治療だ。

 私の魔法力が恐怖などの根深さに負けてしまえば和らげる程度しか出来ないみたいだ。

 唱えると(エフェクト)が細いツタのように複数伸びて頭に絡んだ。


 気を失い苦しげな顔をしている猿のような魔物の頭に伸びて入り込む。

 少ししたらいくらか表情が和らいだ気がした。

 "観察"したら状態異常に恐怖が消えている。


 これを倒れている魔物やうなだれている魔物たちに次々とかけていった。

 うん、こんなものかな。


「ありがとう、ローズオーラさん……だいぶ楽になった」

「どうも。じゃあ次はアヅキだね」

「い、いえ。私は平気ですので」

「ううん、私が観た感じだと状態異常として喰らっているよ。ほら」


 私にせがまれ仕方なくアヅキは魔法を受けてくれた。

 光が形どり伸びて絡まる。


「……はい、治療おわり」

「おお……おお……! な、なんでしょう、今改めて振り返って感じるとわかるのですが、気分がとても軽やかになりました!! ありがとうございます!! さすがローズ様です!」


 どうやら無自覚に重苦しく気分が沈んでいたらしい。


「どういたしまして」

「……変な魔法じゃないでしょうね?」

「失礼な、ただの精神状態異常の回復魔法だよ」

「精神……ああ、たしか心のね」


 ユウレンは納得してくれたらしい。

 確かに現代じゃなければ精神的な疾患とかわかりづらいか。

 あれだよ、だいたい呪いと同じだよ。


 とりあえず治療を終えて場所を移る。

 私のテントこと会議場だ。

 ずらりとならぶみんな……イタ吉を除いたそのメンバーはみなどこかに不安げな気持ちを抱いているようだった。


「ぶっちゃけ直接感じてかなりの脅威だった?」

「まあ正面から殴りに行ったら多大な犠牲が出るか……それでも食い止められないだろうな」

「あの方に立ち向かえと言うだけでみんな倒れちゃいそうですね」


 ジャグナーがその力量を正確に言い妖精が心情側を補足する。

 今回の咆哮1つで多くの魔物たちはすくみあがってしまった。

 テンションが最大限に落ちてしまっているときではどうしようもない。


「ただまあ今すぐどうにかしなくては、ならないというわけでもなさそうよね?」

「ええ、私の知る限りあの方はお優しいので暴虐の限りを尽くすことはないと、そう思います」

「敬って祀ってそして敬意を払っていれば、多分大丈夫、タブン」


 ユウレンの言葉に妖精たちがそう返す。

 慕われているなあ。

 そして同じぐらい恐れられている。


「まるで神様みたいだね」

「カミサマかあ……まあそうなのかもね」

「まあ今のうちに出来る手としては、兵器と防壁や結界の作成かしらね」

「そうかあ……」


 ぶっそうな話になってきた。

 そのうちいるのかなとおもっていたがもう必要になるとは。

 その場ではぱっと解決する案は無くいくつか連絡を取り合って解散となった。

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