七百二十七生目 洞窟
ダカシの悪魔の栄養は恋心と言っていた。
妹のアカネには家族愛を抱いているため一切ダカシの悪魔に栄養が行き渡らない。
概念としてはフワフワしているが『相手との間で発生した感情』と言っていたはず。
つまり受け手と送り手が最悪成立していなくてもなんとかなるのだ。 接待でモテようと本人がいい気になればそれは成立しているだろうし……
本人が何も思わなくてもたくさんの相手がダカシを想えばそれはそれで成立だ。
だから折を見てダカシは映像配信で姿を載せるかもしれない。
それか……もうひとつのやり方かな。
まあそこはさておき。
数日の間にダカシは結構深く話をされていたらしい。
どうやらダカシには相手の話を引き出す能力があるようだ。
慎重であるはずの不死旅団から少しずつ話を引き出している。
それを裏で記録させてもらっていた。
とりあえず不死旅団は不死に対する知識をダカシに入れ込んでそのあとに興味を誘っている。
ダカシは妹が特殊すぎてもはや寿命とか命とかちゃんとあるのかが若干不安なところにつけこまれたようだ。
とは言えダカシも致命的なまでに引き込まれていない。
不死旅団で割と宗教的な独自文化の面を引き出せているようだ。
いわく……
長がひとりと幹部が3人。
長の女性は普段表で活動はしないものの問題なく回っている。
そのかわり全ての方針は長が決めている。
幹部たちは次期長候補でもある。
現在学んでいる最中。
色々……おそらく不死のことも含めて。
教えとして滅私奉公で働く時はより抑えなくてはならない。
鏡のように反射する道具は神秘を秘めておくためにみだりに置かない。
意外にも楽しむことは多くあるとか。
実は彼ら影では結構……アレなのだ。
夜とかに帰って一同に集まると牙が剥かれる。
ぐちや罵りはかわいいほうで誰が老けていたとか誰の子供はしつけがなっていなかったとか。
特に思い込みでも激しいのかと言わんばかりの年齢さぐり。
ああはなりたくない、ああはなりたくない。
その言葉が不可思議なほどに繰り返されていた。
ダカシのほうの話に戻ると。
全然関係ない切り口からとある伝説の話なんかもされていた。
銀の聖杯。
昔むかし神に愛され神の分かれ身として地上に生まれた種族がいました。
その神は分かれ身を子どものように愛していたけれど地上の民はやがて老い死ぬことに気づきました。
嘆き悲しんだ神は1つの聖杯を下賜することにしました。
それが銀の聖杯。
神酒を満たして飲むことでたちまちみな若返り……
神に愛される種族は今だどこかで生きている。
……とのこと。
うんまあ……その。
外野から色々知って見る限り明らかに不死旅団のことを言っている。
不死旅団にその銀の聖杯があるとして何をしてそんな効果をもたらすのか?
もしかして魔王の昔友人だった神の聖遺物じゃなかろうか。
そう思って訪ねたところ。
[少しも思いつかない。もし加速させる・腐らせる・進むのならばそれは間違いなく知っている]
なにそれこわい。
なぜ違うのかというのも解説してくれた。
それは現在の星が持つベースと真逆の動きをするからだそうだ。
時は進み生物は成長しやがて衰え死に腐り分解され循環する。
神という特殊ベースは例外にあたる。
ゆえに若返りの逆行というのは後から誰かが与えた疑似法則だろうとのこと。
ちなみに私は現在進行系で年をとってるため実は神としては未熟もいいところである。
ホルヴィロスにもそろそろ健康的な日常について心配されだしている。
もっと研鑽積まないとね。
逆に言えばそういったことをやるのならば古来からの神よりも若い神の可能性が高いという。
ちなみにこの若いとは『創世紀からいるわけではない』とかいうふざけた範囲が含まれているのであまり参考にならない。
つまり普通に大神クラスと対峙するハメになるかも。
そうなったら私では戦うのは難しい。
やり方を変える必要は大きいだろう。
ともかく彼女らが探っている水源だが……
どうやら水脈を探りたどるスキル持ちなんかもいるらしくあっという間に探索範囲が狭まっていく。
1週間もたたない間に特定をしたらしい。
ある2つの月夜の晩に彼等が出かけていくのが見えた。
数は4人かな。
相変わらずの認識阻害。
長であるシンシャと幹部3人かな。
ここまできてただの慈善団体オチはまずないだろう。
何が困るかって結局水源で何するのかがわからない。
これまでの街でも目立った被害話は出ていないのだから。
彼等はどんどんと迷宮奥へと歩みを進めていった……
ここは?
「こんなところに洞窟があるなんて……」
巧妙に隠された奥に洞窟はあった。




