七百二十六生目 不衰
速報。
ダカシ、不死の話を持ちかけられる。
正確には不死の話が出てきたのみである。
ダカシはこうなることを見越して色々いわないでいた。
こっちが中途半端に語ったために明らかによくわからないが悩みを抱えさらにセラピーも受けて。
いい雰囲気になったあたりで少し話が湧いてきて。
まあダカシはまったくピンときていない様子ではあったらしい。
まず不老不死の概念が難しいからね……
いやあ相手には申し訳ないけれどただでダカシのセラピーしてもらったうえ情報もだしてもらって悪いね。
さらに最近不死旅団が街の魔物たちに聞く内容は多岐に渡るが変わったものがいくつかピックアップされていた。
明日の天気から地理の話まで。
何が狙いでもこちらがギリギリに先手打って動かねば。
とりあえずダカシのほうは調子良さそうなので放置。
あれは下手に知り合いが携わっていると拗らせる心の問題だ。
チヤッホヤッされてもらっておいて。
私は目下の目標を見定める。
ひとりの女性だ。
隠蔽結界を張って何してるのかなー?
ちょっと私にも教えてほしいな〜。
なんて思って既に遠く来た。
ここ密林の公園だぞ?
誰も彼女のことを存在するが認識出来ていない。
もしかして彼女も幹部クラスかなぁ。
だとするとサリエか。
川を辿るように歩いていく。
向こうは探しものをしている動き方だ。
周囲の警戒がおざなり。
まあそれは隠蔽結界を張っているゆえだろうけども。
普通はバレない前提だからね。
そこにいると思い続けなければ普通は見破れない。
私だとスキルを回すことで看破はできるかな。
ただ看破するためにはまず存在に気づかなくては。
だからこそこの隠蔽結界というのは厄介なのだ。
発見が先探知が後とかもはや卵が鶏を産んでいるようなもの。
間諜を含む裏仕事してくれるみんなに感謝だ。
なお趣味なところは目をつむる。
彼らは当然のように対認識阻害をする。
そのぐらいはできないとどの国であれスパイ天国になるだろうねとの評。
……あれ? 我らの間諜はどこの国にも入り込むような?
気づかなかったことにしよう……
どうやら目的の場所にたどり着いたらしく動きが止まった。
ここは……昔神海創槍ミフソホを刺したところだ。
こんこんと水がわき続けている。
抜いてあってももう水が止まることはない。
どういうことなのと少し引く思いになったのを思い出したがまあ仕方ない。
なにせこの星の水自体がこの槍を持った神の創造物なのだから。
世界を満たす力のほんの端にあるわずかな水の流れだなんて余裕なのだ。
大本の神が引き出す力ならば誇張なしに海くらいはつくれるだろうからね……
というわけで何をするのかと見ていたが。
「……ハズレカ」
男とも女ともつかない……というよりもまるで声の音すらうっかり頭の中をそのままスルーしてしまうかのような声。
隠蔽結界おそろしや。
よくよく発音の意味を吟味すれば何かはわからないけれどお目当てのものではなかったらしい。
結局その日はなにをするでもなく帰っていった。
夜中。
「――というわけで、無駄骨だったぁ。あの水は魔物や植物に通じてても、ニンゲンたちには通じてないわね。これは捜査に苦労しそうねぇ、人員回してほしいのだけど」
「そうか、外れだったか。そういえばシンシャ様は……?」
「既に寝ておられますよ。今日はたまたま時間が遅くなりましたからな」
「まあ、そもそも彼女の手を煩わせないための私たちなんですもの」
「フフ、でなければあの美酒に酔う資格はないからねえ」
「成功した暁には、ね」
「前回は飲みそこねた……今回こそ、早くせねばな」
というやり取りがありましたとさ。
今回の真夜中テント内会話一部始終です。
いやあ……水源探ってるねえ!
困ったと言うかなんというか。
水源はあるにはあるが実はこっちもはっきりわかっていない。
理由はいくつかある。
地下水が殆どでどこを辿ればつくのかよくわからない。
迷宮管理システムにアクセスしても正直良くわかないからね。
そしてまあ……これが大きくはあるんだけれど。
そもそも水源は探らなくてもたっぷり使えている。
さらに奔流の心配が少ない。
優先事項としては下がっていたのだ。
どこだろうなあ水源……目ぼしはついてはいるんだけど。
何が困るかってどうやら向こうは人海戦術をとればもうなんとかなる段階まで来ているらしい。
こっちは相手の不正をばっちり暴く必要がある。
つらいけど後手に回り続けるしかない。
逆に言えばそこまで時間たたず決着がつくかも。
ダカシの悪魔もついでに復活してくれれば万々歳なんだけどなあ。




