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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
不死身のない不老不死は虫翅の夢を見る
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七百二十四生目 翻訳

 ダカシをどうしようかなとグルシムとダカシで歩いていたら暗やみ通りのところでわいのわいの騒ぎが出来ていた。

 暗がり通りが騒がしくなるのは珍しくない。

 1つは犯罪者がボコボコにされたところ。


 もう1つは夜闇の中で騒ぐのはわりかしみんな好きなこと。

 そしてもう1つは……


「迷子なんだろ? ほら、明かりすら持ってやいない」


「暗視があるのでは?」


「だったらこの段差ですっ転んでるのはなんなんだよ……」


「あ、これはよくわかってないね。わかってない」


「あ、ああぁ……」


 迷子だ。

 しかし今の声は聞いたことが有る。

 近寄って見よう。


 魔物たちの集まりの中にとてとてと近づけば自然に間を割って入れてくれる。

 中にいたのは予想通り……テクだった。


「テクさん!? ここまできたのですか!?」


「あっ!? ローズオーラ殿、ダカシ殿! ここは何なのですか!? 悪霊の長、冠の骸骨、悪樹の祖、悪虐の霊、あまりに生きとし生けるものに残酷さをもたらすとされる魔物ばかり!!」


「ああ、それは……」


「おー、すごい言われよう」


「一個も言い返せねえ!」


「事実しか無いな!」


「「ガハハハ!!」」 


 いやまあ知っているよ。

 暗がり通りに住む魔物たちは総じて怖い。

 基本一般的な界隈では襲いかかってくる魔物扱いだ。


 ただ別に初期からこんなんだったわけじゃなくて割とちまちまと闇のエレメント的な弱い魔物たちがいた。

 ただ彼らがトランスしたり仲間を呼んだり新たに引き込んだりわあわあしていたらこうなった。


「まあともかく、彼らは悪い魔物じゃないよ。それは保証する」


「なんと……」


「種族全体はわからんがな!」


「俺らいたずら好きではあるよな?」


「威厳たっぷりの話し方しようか?」


「もう遅えよ!」


「「ガハハハ!!」」


「深淵には届かぬ耳障りな……」


 最後につぶやかれたグルシムの言葉は……まあ訳さなくていいか。 





 テクは昨日と同じく私を探しに来ていた。

 暗がり通りを舐めていたらとんでもない環境で腰が抜けるかと思ったらしい。

 いや見かけた時は腰が抜けていたけれど。


 まあ暗がり通りの魔物は一般的にニンゲンたちのホラー要素詰め合わせだからね。

 正直私もビビる。

 ただ彼らがもう愉快な面々だとわかってるだけだ。


 そして愉快さはこちらをビビらせる魂胆につながる。

 うーむあいつら……

 テクさんは昨日のことで手応えを感じて改めて私を探しに来ていたらしい。


(それがし)は途中までは普通に入っていけたのですが、人為的に暗くされているのを察しました。濃度があれほど濃い闇の魔力を感じて、空間一体がとんでもない領域になっていると察したが遅く、足元を死者の手招きに捕まり、ああなってしまい……」


「なるほど、つまり思ったより暗くてころんだと」


「あれ、テクも訳さなきゃだめなタイプだったか?」


「全力で抗議申し上げたい」


「闇を恐れろ。同じ扱いなどヘドが出るぞ」


 みんなで雑談しながら進んでいく。

 ちなみにテクは翻訳者としての才能があったのかもしれない。

 ダカシより先にグルシムの言い回しの理論を感じ取って組み上げている。


 翻訳者がふたりに増えることでかなり楽ができた。


「ふむ、『もっと暗いところでは気をつけた方が良い。それと自分と同じ扱いだなんてやめてあげてほしい。彼が嫌がだろうから』ですかね? いえいえそんな、(それがし)は神の一端に並べられるなど恐れ多いと愚考したのみです」


「よくわかるな……」


「そういえば、テクさんはグルシムのこと全く平気なんですね、さっきは暗がり通りの面々にあんなに驚いていたのに」


「ふむ、何故でしょうな? どことなく他とは違う神々しさ……つまり身の芯にある美しさや、それに……なぜだか、畏れ多くもどこか(それがし)とシンパシーを感じまして。初対面の相手にたいして過分だとは思いますが」


「フム……?」


 もともとグルシムも多く語る方ではない。

 それで会話が終わってしまった。

 まあよくあることだ。


 私たちは適当にぶらつきながらテクに案内される。

 今日は前回よりこっちのやり方を汲んだ動きをしているようだ。

 1つのアイスクリーム屋の前まで来てみると。


 そこでは列を捌いている不死旅団の面々がいた。


「はーい、最後尾でーす」


「列は折り曲がってくださいねー」


「在庫追加、運んできました」


 アイスクリームは今日も盛況。

 そういえばアイスって前世では暑い夏より寒い冬のほうが売れていたはず。

 年中気候が安定しているアノニマルースでは毎日がアイス日和だ。


「凄いですね……臨時スタッフみたいに働いている」


「ええ。ここの方たちは想像以上にすごい。ただ、だからといっていきなり参加させてもらうのは不自然かつ邪魔になってしまう。まずは催しで我々のことを認知してもらい、それからアノニマルースでの技術の粋を学び取っている段階なのです」


 テクがどことなく誇らしげに語った。

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