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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
不死身のない不老不死は虫翅の夢を見る
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七百二十一生目 闇夜

 お祭り騒ぎだった。

 アノニマルースは毎月イベントと毎週の企画を目安に運営されている。

 故に突然降って湧いてきたお祭りに対して好印象が抱かれていた。


「これは、すごい活気……まさしく旅団の総力をあげて行っているかのような……あ、値段も安い、これなら誰でも手に取りやすくていいですね」


「我々は商人ではないので、儲けを出すことが使命ではありませぬ。故に価格は、お気持ちとさせてもらっています」


「へえぇ……すごい。見たことのないナッツもあるんだな。保存がきく品や保存のきく加工品がたくさんだ。これは……乳製品かな?」


「お目が高いようで。それは発酵乳の一種でして、乳を固めて加工し成形したものでして」


「……ってことはチーズ!? こ、こんなふうになっているもの初めてみた!」


 ダカシも喜んでいるようで何より。

 ゴロゴロとしたチーズは存在感が凄まじい。

 においが食欲に訴えてくる。


 私たちは適当に食事をとり食べていく。

 乾物は浸し物を加工しおいしく食べられるようにしたものが多い。

 ちゃんと役所から食品の食べられるものを見分けるゴーレムを借りてきているようだ。


「……あのゴーレム、凄まじい機能ですね。組み合わせで認識させるパターンを組み替えれば、とんでもなく多くのことができる、しかし食品の毒性が種族ごとに変わるということに注目させているとはおもわなんだ。種族が多く混在する、この街ならではの発展文化、他所に広まれば、また技術的な進歩が望めるかもやしれませぬ」


「そ、そうなのかな? そこまで深く考えて使っていなかったなあ……」


 アノニマルースは考えなくともトップクラスのゴーレム職人たちがいる。

 あまり気にしてはいなかったけれど異様に汎用性のあるものが生み出されていたようだ。

 アノニマルースの食事事情は結構急務だったからなぁ……


 テクはそういった雑談を交わしつつ案内をしてくれる。

 そのぐらいの余裕が取り戻せられたようだ。

 このままならなんとか警戒心はとけそうかな……?







 その日は結局楽しむだけ楽しむこととなった。

 不死旅団はまだまだこの街にいるらしい。

 今回のことで手応えを感じて自分たちでできる事を探れそうらしい。


 ダカシのことが中途半端になってしまったが心当たりが少しある。

 同時に進行していこう。

 こっちも不死旅団を探らなきゃいけないしね。






 翌日。

 ダカシと再度合流して今度は訓練所ではなく暗がり通りに来た。

 暗がり通りとは1つの区画で昼なのに夜のように暗い場所だ。


 治安最悪なら裏通り……というわけではなくむしろ治安は他より良い。

 理由はここが夜中でなければウロウロと活動できない魔物たちが住む場所だからだ。

 つまり彼らに取っての真っ昼間である。


 白昼堂々暴れる輩なんて速攻でお縄になるわけで。

 コウモリ魔物やら幽霊魔物それに憑依魔物やら影魔物などかなり特徴的な面々が勢ぞろい。

 監視の目が常時有る環境で暗がりに隠れてやりたいことは困難なのに。


 その暗がりすら彼ら自体だったり。

 とは言え素敵な所なのは間違いないので片手にランタン1つでおいでおいでと手招きされる。

 観光文句はさておき。


 私とダカシは慣れたもので暗がり通りをスイスイ歩く。

 私は暗視できるしダカシも暗やみ通り設立当時からいるから多少暗かろうがどこになにがあるかはわかっていた。


「ここにいるはず……」


 私はダカシを引き連れて暗がりのさらに奥へと踏み入る。

 ここは通りの中にあるはずなのに闇が深く。

 暗すぎるというよりも闇がうごめいているような感覚すら覚える。


「ここは、どこだ……? こんな恐ろしく暗いところだなんてあったっけか……」


「まあね、新築だから」


「新築……?」


 闇が集まっていく。

 そう思わせるほどに暗闇は深く私とダカシが互いに見えなくなるほどに。

 だからこそ。


 闇の中に現れる光とはこれほどまでにあやしく輝くのだ。


「目!?」


 先程までそこには誰もいなかったように思えた。

 しかし驚き声を荒らげたのはダカシのみ。

 それもそのはず……


 闇がうごめく。

 今度は『のような気がする』わけではなく本当に。

 ダカシが思わず腰に手をやって顔をしかめる。

 そこにあるべき剣は今ではぶら下がる重りのため持ってくるはずもない。


 闇が息づきこちらに歩む。

 形が徐々に成り立っていき冷たい気配が忍び寄る。

 夜の気配と死の気配はまるで似ていて……


「来たか」


「……!?」


「俺はグルシムだ。挨拶など不要だろうが」


 青白い炎が浮かび上がり周囲を照らす。

 そこには鳥の亡骸でも背負っているような姿の恐ろしげな獣……

 小神グルシムがいた。


「うわあっ!?」


「暗いところで見るとインパクト強いよねえ……」


 ダカシがひっくり返った。

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