七百五生目 獣拳
銃ビーストセージが工房から運ばれてきた。
さてどうなっているのかなと。
……ん!?
完璧に整備され経験を元に最適化と強化が施された銃ビーストセージは。
2丁拳銃になっていた。
なんで?
どのように変化したのかチェックの時間。
2丁になったが両者の間で強烈なつながりを感じる。
これはイタ吉と同じような感覚かな。
あくまで肉体2つの魂1つ。
これ全部で銃ビーストセージのようだ。
えーっとほかには……
なるほどこの銃はより様々な状況に対応できるように……
変形合体ができるようになっているのか。
機能は……
「マシンガンモード」
私の意思に反応して勝手に組み合わさっていく。
原型がなくなるほどの変化をしたあと。
1つの銃が完成した。
両腕で持てるようにグリップと弾倉がついたものだ。
取り回しがいいのと……
前の反省でちゃんと射撃訓練場もどきをつくってある。
前に向けて。
イバラを通して射撃!
「うわっ!?」
連続で射撃が出続ける!
拳銃の状態でもよく射撃は出ていたけれどこっちはむしろイバラが引っ張られる勢い。
射撃の勢いが強すぎてしっかり固定しないと……!
あっという間に的は穴だらけ。
1秒間に十何発撃ったのだろうか……
大変な力だ。
ええーっと。
「し、ショットガンモード」
形が切り替わって銃口が大きな長い銃になる。
発射するとこっちはこっちで武技"爆散華"みたいに弾が細かくひろがり飛んでいく。
"爆散華"より遠く飛ぶけれど広がりが大きいなあ。
連射もある程度は利く分威力もそこそこかな。
"爆散華"と織り交ぜると近距離の相手に非常に有効打だろう。
「スナイパーモード!」
狙撃銃へと変化する。
やたらと長い銃だ。
取り回しはこれまでで最悪である。
なぜか重量すら増した銃をターゲットに向ける。
さっきよりも遠い。
慎重に……発射。
遠くまで届いた1発。
狙いはまるでズレなかった。
無風の環境だからというのもあるけれど素直で使いやすく飛んでくれた。
チャージしなくても遠くまで破壊力維持してくれるのはありがたい。
武技"雷雷轟華"よりも威力や速さは控えめだが使えないわけではない。
むしろ率先として妨害ができるだろう。
「ツインハンドモード」
これで分解され2つの銃に戻る。
2つの方向へ向けて連射。
取り回しは最高にいい。
そろそろ銃ビーストセージの鞘も考えておくべきか……
いわゆるホルダー。
いくら亜空間にあるとはいえ本来はあんまり剥き身はよくない。
込められたエネルギーがそのままま放出されつづけるのはもったいないのだ。
剣ゼロエネミーみたいにより純度を高める仕掛けがあってより強くなる。
……またいつもの服屋さんに頼むかな。
とりあえず満足した。
こういった変化を遂げるとは思っていなかったけれど。
それにガンナーとしての職業レベルは10……カンストを示した。
次なる職にも備えないとなあ。
というわけで自宅。
ちゃんと封印保存されてあった職業本を使う。
この本は特殊だ。
まず事前に何か自分が欲しいものを思い浮かべる。
ざっくりとした検索だ。
中にはあまりに詰め込まれた神域のデータが入ってて必要なものだけ選ばないと脳内にダスクデータだらけになっちゃうのだ。
簡単に言うと何も読めない割に頭痛でぶっ倒れる。
これは本の中にあるものを読んでいるというよりも膨大な世界の知識を検索している機器で端っこから全部読もうとしているに等しいからだ。
ただしく使えれば安全安心。
さて転職か……
ガンナーにより遠距離能力は随分上がって何度も助けられた。
だとすれば今度は真逆を目指すべきかな。
自分に向いた近接戦闘スタイルを呼び出してもらおう。
「検索!」
パラパラっと本がめくれていく。
ここに書かれる答えは……
[獣拳士 圧倒的な威力と速度により相手を圧倒する近接職]
おっ。
獣魔とはよくスキル系統であったけれど獣拳は初めてだ。
ニンゲンならばまさしく獣のようにというところだろうが私は獣だ。
完全に適合した使い手になれるはず。
選択だ!
就職条件は……一定レベル。クリア。
他の職になったことがある。クリア。
武器の使い方の心得がいくつかある。クリア。
他にも細かい条件はあるようだけれど普段から殴り倒すとかたくさん倒すとか魔法は使わないで倒すとかやってるからなあ。
つまりもうなれる。
「転職!」
本から淡い光が溢れ私を包む!
身体に満ちる感覚が別のものに置き換わったような……
そんな感覚が走った。
光が収まると本は閉じられる。
再度封印しておいてと。
もうちょっとで管理する施設ができるらしいから辛抱しててほしい。




