七百生目 時超
だいぶ地球の迷宮を進んできた。
何時間か移動しているし大幅なショートカットや大胆な短縮も行った。
管理者しかできないコース取り。
もはや裏道同然の場所まで使い特定の場所に手を当てたら開くドアを無視してその後特定の場所にある石をズラして1度部屋を出ると開いている扉が変わるのでそこへ進む……までをやって。
やっとこさ目的付近の奥地までこれた。
さてはてここからが大変だ。
これまでは手早くエリア移動を繰り返しただけだ。
こここらはエリア内のどこかにいる侵入者をこっそりみつけなくてはならない。
果たしてこんな奥地まで気軽にこられるとは思えないが……
私は手元のタブレットに目を落とす。
このエリア内に多数の反応。
このエリアからは動いていない、
タブレットを亜空間にしまってこのエリアの様子を改めて見回す。
……ここは白エリアと仮に呼んでいる。
今までの場所が様々な環境を再現したような空間ならばここは剥き出しの無機質。
黄色、緑、赤、青、黒、銀エリアト他にも呼ばれるところはあるがここは1番デフォルトに近い。
不自然な……というか明らかに人工物な見た目丸出しで私を迎えてくれる。
システマチック。
あまりに動作がスムーズな自動ドアをくぐり抜けて進む。
ドアめっちゃ大きくしておいて良かった。
中の部屋は見渡す限りどこまでも広い。
以外にも柱や壁や謎の人工物がたくさんで見通しは悪い。
ただ1つ奥にはドラゴンマシンすらいる。
10メートル級の体が出入れ出来なかったら不便だろう。
とにかく駆けていく。
複雑で奥まで広くどこかにあるところまでいかないと。
戦闘はサクッと受け流しつつ。
絡んでくる相手はどうしても何体かいる。
そういうのは実力行使あるのみ。
今もドラゴンマシンを踏み飛ばした。
最初私に急襲してきたのをしのいで避けつつ剣ゼロエネミーを呼び出す。
メタルの体にガンガン切りつけさせながら頭や腕を燃やし痺れさせトゲを刺し。
とにかく油断なく連続で爪や牙を叩き込んで。
イバラの武技でたたきに叩きつけた。
うまく噛み合ってこっちは無傷だ。
武技"正気落とし"を最後に決めたからしばらくしたら目が覚めることだろう。
その間に私はここから離れる。
まだこの近くにはいない。
数十分か1時間かウロウロしていたらまた食べられる壁床ゾーンにきていた。
3Dプリンターによって食事も作れるけれどこれも仕組み的には似たようなもんなんだよね。
私がつくっているというよりかは指示してつくってもらっている感覚だけれど。
……おや?
ここ食べられた跡がある。
さっきまではなかったぞ。
ここらへんから先どんどんと食べられていっている。
自動修復が間に合わないほどなのか。
どうやらビンゴらしい。
この通路を抜けて。
さらに部屋へと舞い行く。
捕食跡を見るに大型ではないしにおい的になんだか懐かしさを感じるような?
なんとかこれた部屋の先。
ここはくねくねと奥まった形になっていた。
こんなところもあるんだなあと感心しつつ。
ここの奥から多数の気配がする。
"鷹目"でこっそり覗き込んでみよう。
どれどれ……
そこはどこかで見た景色。
いつか見た者達。
……時の針が長く鳴る。
「トキハリー!?」
「誰だ?」
声に気づかれこちらへ複数のトキハリーが向かってくる。
というかトキハリーじゃん!
私が2足歩行時に似た……というかホリハリーに似た魔物。
ちがうのは頭から太い針の束が長く垂れ下がっている。
太い針は不可思議なピンクやら紫やらに揺らめく。
私はすぐに戦いの構えを解いた。
向こうから次々と若い衆がやってくる。
若ければ若いほど針が短いのでパット見でもなんとなくわかる。
武器のように自身の針を抜いて束ねたものをこちらに突きつけてくる。
「なんだ? 金属の獣ではない」
「味方か、敵か……」
「知らない奴だな」
「なんだ、誰だ騒がしい」
奥からさらに声。
気配が他と違う。
現れた姿はあまりに長い毛の束。
足まで届きかねないと途中で結われたその針を携えていたのは……
多少姿は変われどにおいに変わりはない。
向こうもこちらを見て目を大きく白黒させた。
「族長さん!」
「ローズオーラか! 武装解除せよ!」
私は集落の中に招かれた。
前のときとは結構様変わりしている。
やはりここにあるものたちが自然なものが1つもないせいで逆に家々を形作るのが最新技術で作られたかのような印象を受けた。
「あれから結構な時間が?」
「ここに至るまでに、果たしていくつもの日が沈むのを数えたか……少なくとも、世代交代はもう終えた」
「ということは……もう族長は族長ではなく?」
「正確には、大族長となる。つまり、隠居の身だ」
族長もとい大族長は老いていてた。




