六百九十九生目 可食
迷宮の様子チェックするためにタブレットを起動してと。
……えっ。
「侵入者いる!?」
ウッソでしょバチバチに対策していたのに誰か侵入者がいるんだけれど!?
いや別に管理者としては入られたことは歓迎するべくなのか?
うーん難しい!
今迷宮はかなりの発展度を見せている。
あとは外部からの刺激で成長するターンではあった。
だから歓迎すべき……なんだけれど。
正直めっちゃいる。
え? なんでご団体さんに見つかってるの?
正確な数がよくわからないぐらいウロウロしているんだけれど。
しかもまあまあ奥地にいる。
ええ? ここ結構探索大変なはずなんだけれど。
夢の無限に探索できるようなダンジョンなんだけれど。
拡張と変更が常に行われ大量の素材やら物資やらが生み出されまくっている。
若干生き物が食べる食料が少ないくらいか。
一応カバーはしているけれど。
そもそも地球の迷宮にいる魔物ってみんな機械系なんだよね。
無機物性質で全部環境が回っている。
結構ヤバいやつもうまれているらしいしこっそり会ってみたい。
というわけで管理者権限で見つけた有機物たちの存在をエリア検知した。
暴れるのはちょっとやりたくないが……
なあに軽く冒険ならできる。
「行こう!」
管理室からでた私は廊下をつっ走る。
最初の頃白い廊下にサイバーな雰囲気と明らかに公開したら違和感がやばかったのだが……
なんということでしょう。
すっかり建築雰囲気は石や木造やらコンクリやらに寄せられている。
パット見は違和感をなくしていた。
現実としてはこの世界では未知の技術で精巧に真似ているのだがバレなきゃ同じである。
廊下を適当に進んでいけばすぐに部屋へ行き着く。
部屋内もいじっていてパット見は床も壁も普通ではある。
まあほっつき歩いているのが機械魔物の時点でだいぶ様子が違うんだけれど。
金属で出来たうさぎが鉄柵の隙間に隠れモリモリと食べる。
金属の猫科魔物が大きくのびをすれば液体もかくやという柔軟性。
ここらへんは手前ということもあり全体的におとなしい魔物しかいない。
見た目はゴツい魔物が多いがレベルとしてはそんなでもない。
そのまま歩いていけば特に気づかれずに進める。
それかみかけても気にしないか。
これは他の迷宮でも言えることなんだけれど明確に迷宮内で敵味方がはっきりしている場合ふらっとやってきたよそ者に対して興味を示さないことは多い。
そんなことより眼の前の飯とどこかにいる天敵のほうが大事だ。
向こうから手を出さなければ適当にやりすごす。
そんな存在に私もなっているためそのまま通過。
部屋と廊下とを繰り返して進む。
構造は複雑怪奇でちょっとした坂道がまったく違う場所へつなぐのだ。
もちろん私は配置を認識している。
けれどあくまで地図上の話。
めちゃくちゃ中身まで詳しいわけじゃない。
それに魔物たちは生きている。
現状あんまり戦闘をしたくない。
ひたすら自然に紛れるような弱者オーラを放ちつつ進む。
結局軽快に飛ばしつつ使えそうなものを拾って回って移動すればそんなに時間はかからない。
まあ私が事前にあれこれ知っててなおかつ速度はまあまあ出ている前提で交戦もなしだからだけど。
初見時でこれをやって奥の方まで行けと言われたら絶対に無理。
あっという間に奥地へついた。
いやまあ時間に直せば結構たっているけれど。
この迷宮が攻略される速度としては異様に早い。
ここらへんに来るとまた雰囲気の違う部屋になってきた。
ここまでも色々な製作場所や環境が用意されていたがここにきてより変化があらわになる。
この若干緑がかった床や壁……
食べられるのだ。
可食部で構成されている。
洗って良く茹でれば何ものにも代えがたい。
ただギャグかなにかでわざわざこんな苦労をしているわけじゃあない。
というより無機物な機械たちが食べない床や壁が必要だった。
最初その異常を見つけたときは頭を抱えたな……
これまでの常識的に食べられないつくりのものが食べられてしまう。
場所によっては本当に迷宮がボロボロになってしまうので対策は必須だった。
今歩いているなかで感触はしっかりしていて床なのだけれどね……
ヒントはお菓子の城づくりにあった。
こっちのものは別に甘くはない。
食べたことはないけどおいしい素材ぐらいになっているはずだ。
その証拠に穴が空いていない。
修復ロボの巡回もいらないようだ。
そのままかっ飛ばして走っていく。
いやあだいぶ速度が出せるようになってきたなあ。
足が素早く駆けられる。
景色がどんどん流れでっかいゴーレム風の魔物を置き去りにしていく。
魔物が結構強くなってきたなぁ……




