六百九十四生目 判断
戦いは続いている。
とりあえず奥の右1つめタワーは機能を喪失。
残りわずかで折れる程にポイントも叩き込まれた。
時間はまだ進む。
もはや場は大きく乱れだし互いに陣地を敵陣まで行き追い返しを繰り返し。
新たにコンテナや砲台が設置されれば集団の波が押していく。
攻防は結局的に互角。
互いに2つずつタワーが折れてのこり3つずつのタワーを擁していた。
それぞれのホーム近くにあるホームタワーはともかくそれぞれのタワーは消耗されている。
互いに大技を使うようにもなっていた。
獲得ポイントや経過時間に応じてそれぞれ個別でサポーターから連絡が入る。
必殺技の使えるチャンスだ。
試合中そんなに数は打てない。
必殺技は事前に申請されていた大技で使うと再使用可能連絡される時間まで使用禁止になる。
その分派手だ。
それで互いに不利をはねのけつつ試合は進む。
左チームが序盤の不利を引きずってて右チームが優勢なまま終盤。
戦いの終わり際になってきた。
タワー全倒壊以外に時間切れでも試合は終わる。
というよりよほど一方的な試合展開以外は時間切れが勝負の分け目だ。
そして蹂躙かどうかはこれから決まる。
「きましたみなさん、終盤にやってくる100万点ボックスです!」
派手な色合いをした結界に包まれた四角い物がちょうど中央に現れる。
100万点……なんてことは実際ない。
実際は取れば勝ちとも言われる箱なのだ。
今までの戦いを覆しかねないものではあるがそう簡単な話ではない。
まず結界は勝っている方に優位性をもたらす。
勝っているチームは結界に虚弱性がもたらされるのだ。
勝っていれば勝っているほど結界は脆くなる。
これは敵味方識別の応用らしい。
ただより早く壊せるということは負けている側が勝っている側のスキをつく可能性もある。
それに本番では他に効果があるものの結局は中身を得られなくて意味がない。
中身を開けたチームがボール確保と敵タワー機能回収と敵タワーのカゴの蓋回収を起こせる。
そう今までなかなか入れにくかったのは蓋があるからこそ。
ロックを外し蓋を開けて中に入れる。
しかも高い位置に。
蓋を外されタワーとしての機能が死ぬというのはあまりにも重い。
一応効果は短いがそもそも終盤なためかなり厳しい。
とられても敵を殲滅できればなんとかといったぐらい。
幸い結界は硬いしなおかつ中央にみんな集まる。
つまりめちゃくちゃ集団戦が起こるわけだ。
鳥が急襲し襲ってきたところを遠隔ふたりが一瞬で弱点を溶かす。
金棒が獣の素早い身のこなしに翻弄されナイフ使いと蹴り使いが交差する。
炎吐きの炎を爪使いが切り裂き大柄が中央に乗り出す。
大柄のスキルは……必殺技だ!
無理やり自分中心に引き込む力を生み出していて敵をひっぱりつつ大きなダメージを与えてそうだ。
ああ、鳥も逃げ切るために必殺技発動。
大きく空に飛んだ。
魔弾使いは凄まじい勢いで連射をしだし葉弾使いは地面から太いツルかイバラかを生み出し襲っている。
炎吐きは周囲を回りつつ炎の渦を生み出している。
爪使いは叫んだ後爪が巨大化して踊るような連撃。
この凄まじいまでの光景を遠くから見られるのは特等席だ。
ナイフ使いが大量に光で生み出されたナイフを空中に掲げて。
蹴り使いは大きく地面を蹴りつけると地響きが生まれ周囲を爆発的に巻き込んでいく。
わずかな攻撃のズレや位置の見通しで結果は大きく変わる。
必殺技というのは聞こえはいいがそれが弱点破壊につながるかは別なのだから。
果たして土煙の中結界は砕け散り暴風の中どちらかが箱を奪取した……
「これは……!?」
結界内の箱を奪ったのは……左チーム!
互いにボロボロな状態だが確実に蹴り使いが手に持っている!
蹴り使いの弱点は2つ破壊されているし他の面々もほぼギリギリのライン。
右チームは結界を壊したさい中身だけ奪われた形だ。
行かせたくはないが左チームは勢いに乗っている。
右チームもボロボロだ。
幸いなことに左チームの残りは3体。
右チームの残りも3体だからうまくぶつかればほぼ抑えられる。
右は勝っているから抑えれば勝ちなのだ。
蹴り使いが早々に集中砲火を受ける。
蹴り使いによるあがきで敵のいくつか弱点は壊せたが落とせない。
蹴り使いは金棒の一撃をもらい弱点が3つ砕けた。ダウン。
しかし道が空いた。
攻められてこのまま落とされるのを嫌った右側面々が引いてしまったのだ。
そこを見逃すほど彼らは不慣れじゃない。
ただ当たり前だけど引かなければそれはそれで非常に無駄死にしやすいのだ。
2匹が敵を無視して走り抜けたとしても判断そのものは文句言えないだろう。




