六百九十一生目 競技
バトルボールの試合が始まる。
5対5の模擬試合。
とはいえ世界初の配信される試合となる。
ほぼアノニマルース内しか見られないとはいえ全員の気合は十分。
むしろ若干の緊張が見られるかも。
まあパフォーマンスには問題ないかな。
なおこの競技は別にアノニマルース発祥ではない。
もちろん魔物がやることは想定していないし色々やってる場所でルールが変わったりもしている。
世界共通規格なんてそりゃないからね。
だからこそまさしく魔改造をさせてもらっている。
基本のルールさえあってればいいんだよ多分。
蓋のあるカゴ付きの棒は左右対称に5つずつ。
彼ら選手の正面からみて左右に広がって設置されている。
その設置間隔がちょうど道に見立てられるからレーンとも呼ばれる。
逆に壁なんかが多くついでにポイントになる玉カゴ設置数が多いのにカゴ付きの棒は無い中央区間。
ここがエースの活躍する場だ。
まずはシンプルに左右へ広がっていくのが俯瞰視点で見られる。
そして中央にはひとりずつ。
2-1-2という基礎の分かれ方だ。
レーン上にいくつか設置されているボールを回収しつつ前へ。
中央の魔物はあまり前へ出ず片っ端からボールを集めている。
1度に運べる量のボールは持っているカゴの分だけ。
多く入れればそれだけ重くなり鈍る原因にもなりうる。
レーンメンバーはそんなに回収するボールもないのにちょうど半分に割ったさいの真ん中ライン付近にある蓋付きカゴ棒にたどり着く。
ちなみに名前はタワー。
カゴと敵のカゴまでの距離はそこそこあるがはるか向こうというほどでもないし真正面同士だ。
右と左で早速相手を潰してタワーに得点を叩き込もうとバトルが始まった!
「みてください、戦いが始まりました! さあ、奥の方と手前の方、互いの身体についた弱点を破壊しにいきます!」
当然互いの弱点を狙いに動く。
私たちから見て奥側のレーンでは4足の選手が飛び上がるように縦回転し勢いよく敵に突っ込む。
反対側の選手は巨大な2足がガッツリ立ちふさがって胸部で受けた。
その背後から鳥のような魔物選手が来て獣選手の弱点を蹴り込みで2つ破壊。
しかし遠くから残りの選手である獣側の選手が口から大きな炎を吐いて鳥と大型をまとめて燃やす。
2つずつ壊れたかな?
私達が見て手前側。
左の選手はひとり目は早速遠隔から魔法の弾を飛ばしもう片方は葉っぱを飛ばす。
逆側はどちらも近接タイプらしく弱点を守りながら突っ込んでいく。
私達から見て右側は突っ込み左側は引き撃ち。
自陣に引き込んでいるともとれるし敵陣に攻め込んでいるともとれる。
いざ近づかれると遠隔タイプは強くないのも事実。
近づかれタワー付近で引きこもりつつ迎え撃つ。
タワーでは替えの弱点が置いてある。
壊された場合自力にはなるが交換は可能だ。
なので割とタワーに引きこもられると厄介になる。
タワー自体も近くで右側の武器である爪や金棒を防ぐための防御策に使われる。
意外と頑丈に作られているからね。
さて私達から見て奥側。
小競り合いで互いにダメージを負ったのでタワーで修復。
その間に新たなボールの入った袋があたりに複数ある丸い円内に落とされる。
これは手前側も同じ。
時間になったので新しく再配置されたのだ。
空には落っことした飛行魔物たち。
彼らはいわゆるサポーターになる。
彼らへの手出しはペナルティ対象だ。
さてボールが増えれば当然互いに回収タイム。
「おっと!?」
動きがあった。
さっき炎を吐いて余裕のある左側の魔物1体が突っ込んでいく。
狙いを察して右側の2体が急いで自陣のボールをかきあつめるが。
サッと走った炎吐きがいくつかの敵陣ボールをかっさらう。
さらにタワーから離れたふたりを置いて駆ける。
炎を吐いて牽制しつつタワーふもとに寄って。
手に持った袋のボールをカゴの蓋をあけてシュート!
「初得点です!」
全体としては僅かな差異でも雪だるま式に後々響くのがこのゲーム。
残りのボールは入れずにすぐ駆け走る。
こういう時タンク役である巨体さんはあんまり役立たない。
ただ鳥は速く追いすがり炎吐きの弱点を1つ叩き割る。
しかしこのままでは……というところで中央から1体の魔物が飛び込んできた。
中央でボールを集め終えた右側の魔物だ。
左側の魔物の炎吐きは焦っている。
獣がいそいでカバーに入り鳥と戦闘。
右側中央の魔物は片手にナイフを持っている。
一気に詰めより獣に1発。
そのまま3名に詰め寄られる。
炎吐きが2つ割られダッシュで離れる。
攻撃する側と防御だけに専念する側では移動速度が違う。
詰め寄った距離を突き放しもう少しでタワーに2体とも到着。
しかしここでナイフ持ちが懐から暗器を投げつける。
暗器はいくつか炎吐きの身体にあたり……1つが弱点に命中した!




