六百九十生目 試合
四獣像を参考にしたってことはやっぱり私じゃないかい!
個人情報保護……肖像権……
そんなものは特にこんなモチーフレリーフに適用するのは前世でも厳しいな……
「あ、ありがとうございましたー……!」
まさかの猛攻をもらい瀕死になりつつも進行を進める。
店員さんの満面笑顔に見送られつつ次の場所へ向かう。
いくらまだまだコンテンツ作成中とはいえ私が瀕死になるだけでは試験運用としては足りない。
カメラさんとマイクさんを引き連れ台本を話しつつ移動。
「――ということで、今度は少々、動きの激しい映像を届けられたらなと思っています。私たちが今向かっているのは、新規建設中の場所です。その場所とは……」
ここでディレクターの方が指示してカメラが停止。
私たちは素早く移動を開始だ。
高速移動すると当然死ぬほど映像が乱れるのでそのままお送りするわけにはいかないわけで今は一旦閉じているわけだ。
マイクももちろんオフ。
飛んでいこうとするマイクゴーレムをマイク係さんがキャッチして急いで運んだ。
移動先は現在アクセスのいい郊外に設置されようとしている施設。
今もまだ工事関係の機材やゴーレムそれにスケルトンたちが出入りしている。
私はそこから中へと入っていった。
中では複数名がすでに待機していた。
空からは太陽光がふりそそぐ。
……スタジアムだ。
広々とした会場に外側へ大量の席。
陸の部分は端から端まですごく遠くまだ地面が引かれているのみ。
芝はこういうのは使う前に引くしかないからね。
左右に5名ずつ魔物たちが並んでいる。
身体にいくつもの小さなバルーンに似たものをつけていた。
各々の弱点とも言える部位についている。
大まかにいえば2足は額に脇2つそして腰と背中。
4足は後頭部と胸下から腹まわり3つ。
他にも細かく色々あるもののそんな感じになっている。
守りやすくかつ攻められたら危険な場所。
「カメラ回すけど準備できてるー?」
「「おっけー!」」
返事が元気よく返ってきた。
よしよし。
ディレクターからの指示でカメラとマイクがオンになって。
カメラが私たちの姿をとらえた。
「テレビジョンの前にいるみなさーん! ここは新規設営途中の競技場、スタジアムまできました! ご存じの方も多いでしょうが、現在ここで、多くの競技が行えて観光に来てもらえるスポットとして建設中です。どこの国でも合法的な争いは、非常に人気がありますからね。特にアノニマルースでは元々、バトル系競技が誰に見せるでもなく人気でした。より競技的なバトル系の1つを、今デモンストレーションとしてお見せしようとおもいます!」
私がカメラの前で前足を振って伝える。
並びたった両名がちゃんとカメラに収まるようにぐるりと動かし……
それから開始前として互いに離れていく。
スタート位置への帰還だ。
「見てください、この空間に設置された、左右対称の立っている棒たちに吊るされたカゴ。本来ならもっと多くの設置品と飾りそして技術で賑やかなのですが、今回はあくまで実戦形式の練習としてお届けします」
ここでカメラ担当の魔物のところにカンペらしき紙が差し出される。
それをズームして映しているようだ。
書いてあるのはここの俯瞰図。
「仮想定ということでグラウンドに、今お見えのような線が引かれています。実際には障害物となっています」
左右対称にたくさんの壁がある。
向こう側は気配を察知するなリ"鷹目"で見るなりしなくてはいけないため結構見づらいだろう。
まあ今回は侵入できないよくらいの意味合いだが。
そして他の魔物たちがでてきて丸く引かれた場所にボールのようなものが入ったカゴが設置されていく。
玉の入ったカゴはそれぞれが小さくて多数の箇所に設置。
多さにも大小ばらつきがあるが左右対称。
まあ言ってしまえばだ。
「バトル玉入れ、準備が整ったようです!」
正式名称は別にある。
まあ訳せばだいたい同じ意味合いだけど。
ベースボールとかフットボールとかそんな感じでバトルボールみたいな語感だ。
そんなバトルボールだが蓋付きカゴの中にボールを直接たくさん入れたほうが勝ちの簡単なルールになっている。
難しいのは選手たちが身につけているボールだ。
弱点部位についているボールたちはそれぞれが簡単に砕ける陶器のようなものになっている。
攻められれば壊れてしまう。
3つ壊れた選手はダウン扱いになり背後に下げられてしまうのだ。
ダウンしたあと活躍した規定の秒数は参加できない。
再度つけなおして傷を癒やしそれからもう一度だ。
だからこそ戦術が生まれてくるわけで……という説明をしたところで。
「試合開始の合図です!」




