六百八十一生目 感謝
目線を向けた先にはペラさん。 ハウコニファーのとりかこみのひとりだ。
「ほんとお嬢ちゃんはよくやってくれたよ。まだほとんどよくわかっていない死滅の能力、それを土壇場で使いこなすことになんらためらいがなかった」
「あの空を飛ぶ作戦は、ペラさんが提案を?」
「ま、おじさん思いつきではあったけど、うまくハマってくれた。目の前にコバエがいるから追い払ってくると踏んで、ロープを投げて逆に飛びついたりね」
「おかげで助かりました」
そんな陽気に呑んでいるペラおじさんの向かいにいるのは。
あのやたらと目が冷たくバレットを見貫いていた女性だ。
征火隊の服装とはまったく違うしバレットに向けていた目線とハウコニファーに向ける目線が違いすぎる。
「たしかあなたは、バレットさんのそばにいた……」
「ええ。よくお気づきになられましたね。あの時は我が隊の隊長が失礼しました。征火隊のうちがひとり、ハンマンと申します」
「ご丁寧にどうも、ローズオーラです。あなたのつけていた香水ですぐにわかりました。空では私たちを守ってくださりありがとうございます」
「いえ、あれが役目ですから。むしろ、ついには多くの役目をこなし朱竜様と対峙してくださった。あれは私には、例え同じ力があってもできなかったでしょうから……」
またまた謙遜を……なんて返す。
ハンマンさんは華やかな出で立ち。
自信に満ち溢れていてよく彼女をあらわしていると思う。
そしてスッ……と。
それこそ自然に目を細めて。
見る先はキリッとした顔をしているバレット。
明らかに美女たちに囲まれていてあの顔……私にもわかる。
バレットがいきなり背筋を立てて驚いているのを尻目にハンマンが目をそらした。
私も他の面々と話をしつつその場を離れる。
「――とすると、アヅキだったんだ、イオシクラスの敵飛空艇叩き落としたの」
「ええ、ええ。主を付け狙おうと城内に攻め入る姿をみて、この敵は看過できぬ不倶戴天の敵として見定めました。そこからのワタクシは放たれた矢鉄砲の如く。隊と共に降り注ぐ雨嵐となり、
疾風迅雷として駆けつけました。敵は急な雷雨が降り注ぎ、さぞや困ったことでしょうね。ワタクシたちになすすべなく、雷により撃ち抜かれてしまったのです」
「……アヅキは詩人にもなれるね」
「お褒めに預かり光栄です。主の素晴らしさを称えるため、日々勉強をしているところです」
嫌すぎる。
皮肉というかちょっと困って言ったことばの受け止め方がストレートすぎる。
めちゃくちゃ活躍してくれたのは間違いないみたいなんだけれど。
別の面々はまだまだいる。
「ドラーグ、朱竜のことは……」
「うん、まだぜんぜんわからない。こっちでもさぐっているし、元僕がいた場所にも行ってみたんだけれど、なんにもなくなっていたよ」
「パパのパパ……全部燃やした」
「うーん、ドラーグの故郷も例外なく、か……復活時はすごい無防備だから、多分誰にもアクセスできないところだとはおもうんだけれど」
「正直考えても答えは出ないですね……」
「うん、それより今を楽しもうか!」
「はい!」「おー」
ドラーグとコロロはトランスしても相変わらずだ。
ただこころなしかドッシリと構えているようにも感じる。
朱竜という親との戦いを通じて多くを学んだらしい。
意外な姿もいた。
「たぬ吉!? 今日はこれるかどうか微妙だったって聞いていたから」
「なんとかこれました……たまには息を抜かないとやってられないですから」
「それは本当に。たぬ吉たちが後方支援をたくさんやってくれて、戦い以外のこと……それこそ戦後処理も含めて。一番地味ではあるけれど、一番大事だよね」
「それをローズさんにいわれるだけで、だいぶこちらとしては助かる気分ですよ。力を入れて手数を増やせば増やすほど、今の所より大変になってて……」
たぬ吉の愚痴にゆっくり耳を傾ける。
たぬ吉はあまり前線に出るタイプではない。
いざとなれば別だけれど後方支援がめちゃくちゃ得意だ。
元は野生の魔物というのがわからないほどに数字へ強い。
本来なら複数名が担当してもいい仕事を淡々とこなす。
イタ吉なら秒で発狂するような複雑かつ動かない仕事を全部こなせるのだ。
今回も信じられない作業を滞りなく進めたらしい。
たぬ吉の負担が大きすぎるので有能な人材や設備それに資金を増してほしいけれど……
どうやらそれを増やすことへの負担というものも凄まじいらしい。
なんという……
パーティーはまだまだ続く。
他にもたくさんの面々がいて。
私はここまで支えてもらっていたんだと実感する。
朱竜は生まれつきすべてを支える側だった。
そしてそれを酷とは思わない性格と力があって。
結果的には朱竜を苦しめることとなった。
……もっと感謝しなきゃな。
フォウ君とリバイアサン(模型時)の絵をいただきました!
以下からどうぞ!
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