六百八十生目 祝杯
チョッカクさんと会話をして。
これがほとんど最後の報告になるんだろうなと思えた。
朱竜の怪しい動きは判明したからね。
そして同時にこれにてコネを得られた。
少しでもあらゆるところに顔を売れるのはこの仕事をやっていると大事だと思える。
チョッカクさんは色々私と雑談をした最後に深く息をついた。
「それにしても……ピヤア団、旧き国を蘇らせようとしていたものたちか。今やトップが瓦解したことにより、急速に軍部や政府とも摘発や解体が進んでいる」
「そうなんですか!」
「ああ、それに朱竜様の暴れさえなければやはり必要なかったからの。マッチポンプも良いところだ」
マッチポンプ……そういわれればそうなるのかな。
すんごい大枠のマッチポンプになるけれど。
確かにこれなら無限に需要を生み出せていたもんなあ……
「うむむ」
「ただ、大変なことがある。とにかく対象の幅が多すぎるんだ。アチコチで火の手があがり燃え広がるように、人材たちがあぶり出されている。腐ったものが全部燃えて灰にな」
「そしてそのあとは、灰から土に実りを?」
「そうなるとうれしいね」
チョッカクさんのふと見せた笑顔。
それは長い間の重しがとれかのようなふとみせたものだった。
「というわけでぇ、おつかれぇー!!」
「「イェー!!」」
高くかかげられた酒たち。
音頭をとっているのはバレット。
征火隊のうちの隊長格だ。
こんな1月以上もたってからえんかいなのはぶっちゃけ私待ちだった。
まあ戦後処理がとても忙しいのもあったけれど。
ただここに集まるメンツが私のよく知るメンツが多いのは偶然ではないはず。
バレットを筆頭に征火隊の複数名。
アノニマルースでいつものみんな。
それから早速酒を飲みほすペラさんに隅の方で酒ではなくジュースを飲むハウコニファー。
ちゃっかりバルクさんや御者さんそれにツカエさんあたりもいるし。
飲んだり食べたりは出来ないかわりに給仕してもみくちゃに褒められまくっているローズクオーツとノーツ。
他にも多数の面々が。
今回携わった多くの者達がここに集められていた。
イタ吉もボロボロだったらしいのにすでに復活している。
もはやみんな飲めや騒げのドンちゃん騒ぎだ。
「聞いたか? 敵兵がもうひとつの朱竜神の残骸から生きて見つかってるって」
「飛空艇のコアもあるかもってよ」
どこから聴こえる噂話に耳を傾ける。
そう言えばアルセーラ朱竜は城や飛空艇ごとのみこんだんだった。
結構色々手に入りそうだなあ……
特に兵たちの命が無事なのはよかった。
ムダに散らす意味はないからね。
さて私は空のドレスを着ている。
相変わらず時の飾りもつけたまま。
褒められてからまた調子に乗って着てきてしまった。
近場のメンツから声をかけていこう。
「イタ吉! あの時直接攻め込んでたよね、助かったよ!」
「おうローズ! まああそこはチャチャっと乗り込んでやったぜ。俺も見たぞ、またボコボコにやられていて、みている分にはヒヤヒヤしたがな……」
「いやあ、本当に強かったから……イタ吉も大きくなって戦ってみなよ」
「ハハッ、違いねえ」
軽口をたたき合ってみたり。
「インカ兄さんとハックも日が開けてからきてくれていたんだって!?」
「ギリギリ間に合ってよかったよホント」
「僕の力は兵士さんたちが安心して戦える力だからねぇ〜、最終盤には間に合わせたかったんだあ」
「もしかしたら私も、気づかない間にインカ兄さんやハックに助けられていたのかも、ありがとねふたりとも」
インカは凄まじい攻めの技術を持ち。
ハックは集団の防御能力が高い。
即死を防ぎつつ活力をみなぎらせる。
私は知らなかったが日が変わったタイミングで来てくれたらしい。
「お疲れ。はぁ〜、うめえ。まったく、何度も負けるかと思ったぜ。あの飛空艇大放火喰らってもピンピンしているとはなあ」
「でも、あれが繋がってどんどんと良くなっていったよ。ジャグナーも信じて船から指示出してくれていたみたいだし」
「ま、そのぐらいはやらないとな」
ジャグナーは勝利の美酒を飲み干して。
「あれっハコ! 今更だけど、こんなところにきて良かったの?」
「それこそ今更だよー、それより、アタクシの活躍みてくれた?」
「もちろん! バッチシ入っていたね。連携に次ぐ連携だった!」
「えっへへ、本当はアタクシがもっと燃やせてたらよかったんだけれど、やっぱり朱竜様は強かったよ!」
「あ、そうそう。聖職者的には大丈夫な行為だったの?」
「まあ、あまり良くはないかもしれないけれど……でも、あの時はみんなを助けたいって思ったからやった、その心だけは間違いではないつもり!」
ハウコニファーはたくさんの面々に囲まれてにへらと笑った。
すっかり仲良くなったらしい。




