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六百七十六生目 食性

 ここは通称レストラン通り。

 公式名称はまた別に何かあった気がする。

 とにもかくにも私はにおいにつられここへフラフラ〜っときた。


 適当に店を選んで入る。

 こういう時はにおいで感じ取るにかぎるんだよね。

 お腹空いているし。


 中は魔物たちはいたが座れる席はあった。

 まあ時間からは外れているからね。

 こじんまりとしたテーブル少しとカウンターのお店でも十分回るわけだ。


「っしゃーい、席どうぞー」


「こんばんは、はいこれ」


「あいよ……お客さんならなんでも良さそうだね」


 私が席について渡したのは1つの金属板。

 見た目と違いこれは鍵のように魔力回路が編まれている。

 結界技術の応用……らしい。


 これにはあらゆる食事データが込められてる。

 データというと大仰しいが割符みたいな中身だ。

 つまりこれを参照する先がある。


 店の魔物のカウンター内に小さいゴーレムが置かれていて口がカードを差し込めるように開いている。

 差し込めばゴーレムが割符みたいな模様を読み取って登録してあるメニューと照らし合わせてくれる。

 外食するものはこれがないと買えず販売側はゴーレムがないと経営してはいけない。


 アレルギーやら消火不可やら毒性で食べられないものの把握はとても困難なためこれの主導で事故が恐ろしく減った。

 意外とあるのがニンゲンの食事事故。

 彼らは自分たちが何でも食べられると信じている部分が若干あり草を食べて見事腹を壊したりするそうだ。


 私は食べられる範囲が大きい。

 ただ草は無理かも。

 毒系はなんとかできるけれど金属なんな出されても困るし。


 その点この店は大丈夫そうだ。

 何を頼もう。

 お腹すいたからちゃちゃっと頼むかぁ。


「この、魚定食Aで」


「あいよ」


 しばらく待っていたらじゃーんと出てきた。

 魚定食Aなるもの。

 確かアノニマルースのある迷宮近海でとれる魚の香草焼きとサラダ。


 小鉢の煮物にお味噌スープ。

 そして浅漬け。

 とどめに果物アイス。


 うーむ皇国スタイルをとても感じる。

 いわゆる和テイストなのだろうか。

 ならば作法にのっとって2足型になろう。


 周りがビビったような気はしたがまあよくある話だよ多分。

 感謝をこめて食べよう。

 箸をうまくつか……使って。


 イバラ使っちゃだめかな……

 まあ良いや。

 とにかく手で箸を使い骨をとる。


 煮物……うまい。

 なんというか前世もちとしてはここで白米どうこう言わなくちゃいけない気もするけれど。

 私はそこまで白米派ではないんだよね。


 ただここの定食になぜ何も炭水化物がついてこないかは不明。

 まあ店主さんがいかにも肉食という顔をしているからだろうね。

 そういう店だ。


 煮物はタンパクな味わいながら芋と根菜がとても味が染み込んでいる。

 うーん好み。

 味は薄ければ薄いほど良いときもある。


 魚の方は……そうそうこれこれってなる。

 とにかくふんわりと優しい味わいと合わさるようにしっかりと香り付け。

 わざとらしくない味とわざとかってくらい食欲をそそるにおい……!


 食感も良い。

 犬歯というか牙が多い口で気づいたことのひとつにやはり噛み足りないと食べた気がしないということがある。

 このときの噛みとは咀嚼数ではなくぎっしりとした硬さだ。

 肉感といえばいいのかな。


 満たされる……

 漬物も間にちょうどいい。

 いつの間にか食べきっていた。


 ありがとうございました。

 おいしかったです。

 アイスの果物は柑橘類の味がした。


 柑橘類も出せる相手が限られているからか他の魔物たちが食べているアイスは別の果物アイスっぽい匂いがしたなあ。

 お会計して外に出て。


 よし。

 いや……

 お腹へったな?


 あれ?

 まあいいやそういう日もあるだろう。

 次の場所だ。

 

 今度入ったのは麺屋さん。

 普通前世感覚では種類が決まっているけれど麺なら様々のが取り扱っているらしい。

 こっちはまさしく炭水化物食べに来るための店。


 頼んだ商品は帝国麺。

 小麦的なものをベースの粉で麺を作り醤油ベーススープにつけて食べるもの。

 うーん! うまい!


 脂がたくさんでなのにシンプル。

 私はくどいのは結構苦手だしね。

 ありがたく食べました。


 さらに別の店で。

 今度はガッツリ肉屋だ。

 珍しくステーキというものをいただく。


 もはやアノニマルース内に流通する肉はすべて一定の規格と法の審査を抜けたただしく肉しか取り扱っていない。

 昔の狩り部隊が狩ってきた何らかの肉を草食魔物たちと距離を取りながら食べていた時代は懐かしい。

 アノニマルース内で歩む仲間は自分を肉だと思っていないか疑いはたまた誰かを飯だと思っていないか疑惑の目を向けずに済む。


 ここらへんの規格話はかなり細かくてアヅキが語りだすとずっと話していたのを覚えている……

 食事事情はそれだけセンシティブだったのだ。

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