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六百七十二生目 力量

『勘違いされる前に言っておこう。我は確かに1度死を得るドラーグの攻撃を直撃した。そしてその中で……再構築を受けた。対魔王のために新たに得た能力、不屈の魂。1度だけ、全生命力を完治する。その後再使用には時間を要する』


 うへえ。

 朱竜が語ったスキルは私のギリギリ耐えるだけのスキル上位互換だった。

 私も欲しいな……


 というかそれだいぶ絶望的だ。

 ちょっと現実逃避してしまった。

 ただ……朱竜の鱗が落ちて。


 そこから光が漏れ出すことでただそれだけではないことを悟る。


『その光って……』


『フン、ドラーグ。お前の力らしいな。元々ドラゴンロアは敵対するものをすべて滅する力。その中でも、例えうち漏らそうと我を未だ内側で蝕み、消し飛ばそうとするとは。まあいい、我の能力そのものも、時間制限がついている。常時生命力を削りながら……常時力量向上(・・・・・・)しつづける。短時間で決める、我の最後に見せる力』


 え?

 いやいやレベルが上昇し続けるってうわあ!?

 "観察"したらもうレベル90が100になっている!?


 そのかわり生命力もすでに1割減ってる。

 1割10レベル。

 こ……これは……


「もはやズルじゃん……」


『そうだ。貴様らがこれから体験するのは、その理不尽なる世界。せいぜい逃げ回れ。生き残れ。見せてみろ、我に、その……生きぬく力というものを!』


「し、シャレにならない……! みんな!」


 朱竜の顔にヒビが入る。

 本来ならば致命的な傷の1つ。

 2割。レベル110。


 ……朱竜の姿が掻き消える。

 はい?

 いや何かずっとチャージしているなとは思っていた。


 朱竜は話しているからといって戦闘行動をやめてくれるようなタイプじゃない。

 それなのにずっと棒立ちの時点で怖すぎて様子見をしていた。


「あっ!」


[まずい]


 声とログに文字!

 振り向くと朱竜がリバイアサンに向き合っていた。

 嘘だろう……あれが朱竜の限界を超えた速度!?


 当然遅れてソニックブームが来る。

 まあこっちは普段飛んでいるときに散々対処してきた。

 わかっているならば簡単に風のような感覚で防ぎ受け流せる。


 問題は朱竜である。

 すでに体勢は振りかぶっていた。

 片腕をリバイアサンの頭に叩きつける。


 そして流れるようにリバイアサンの首へと切れ味鋭い(エフェクト)を振り抜き。

 1回で抜いた。

 首が……撥ねられた……!?


『まずは1つ』


[やられちゃった。死んだふりしておくからあとはよろしく]


 え……死んだふり?

 その文字と共にリバイアサンは地に倒れ伏す。

 頭が空に飛んで。


 ……ああっ! そうだ。

 リバイアサンって真ん中に重要な器官が集まっているタイプか!

 頭だって3つある。


 致命傷にかわりはないがフォウたちは無傷だろう。

 また修理に苦労するだけだ。

 実際まだ私たちの強化と朱竜の神威解除は続いている。


 ただ今やることは!


『さあ、次はどいつだ』


「朱竜ッ!」


(パーレント)、よくも! 僕が相手だ!』


 数十秒あるかないかの瞬間で決着がつくこの最中で。

 限界まで防ぎきれるかだ。


『まとめて、相手にしてやろう!』


 朱竜が地面へと勢いよく着地し。

 その大口から炎を吐く。

 地面に向かって。


 なにより炎が地面の内側に吸い込まれるように消えていく!

 朱竜の腕に大きくひび割れが入る。


 朱竜を中心に次々槍のようや岩山が形成されていく。

 これ意外と高さも速度もあるからなあ!

 あと今回はとにかく範囲が広い。


 遠くに設置されていた兵器たちすら破壊されていく!

 あと私も余裕がない……ッ!

 直ぐ側を岩山が飛び出してきてヒヤリとする。


 実際は熱が凄まじまいので炙られそうになるけれど。

 今私の生命力は絶賛回復中。

 1回"頑張る"発動済だからほとんど切れる予備札がないんだよねえ。


 多くの兵士たちが戦場から離脱している。

 おそらく現場では多くのドラマが生まれギリギリで離脱して。

 そしてそれでも間に合わないものたちもいて……


 魔物兵やみんながそこらへんは油断も容赦もなくかっさらうよう同時ワープしているだろう。

 ただ……


『チイィ……距離を取っていたのに、これは無理だな』


 ジャグナーからの念話。

 遠く離れた飛空船が岩山たちに挟まれ貫かれるように。

 遥か高くそこにあった。


 見ただけで察するにあまりある。

 ……あの船はもうだめだ。


『うん、あとは任せてみんなは脱出を』


『頼んだぞ……生き残れよ!』


 そう。

 私たちも生きるだけならワープして逃げてしまえばいい。

 朱竜はそれを防いでいない。


 だけれども。

 それじゃあだめなんだ。

 朱竜の問いかけにこたえるように勝たなければここまでした意味がない。


 朱竜とここで向き合うきることで乗り越える。

 そうして私たちは朱竜に勝ったのだと叩きつけられるのだから。


 

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