六百六十九生目 致命
私はどう足掻いても数打つタイプのアタッカーだ。
そしてどちらかといえば中後衛派。
だからといって前衛はれないわけじゃない。
なんなら"連重撃"は近接攻撃に割り振られる。
イバラと爪と牙でバリバリ攻めている時が1番の威力。
そしてなにより一斉に大打撃を与えるのは相手の防御を突破できる分大きい。
剣ゼロエネミーと銃ビーストセージはそれぞれ実は別のメンツと合流して朱竜の弱点を朱竜のほぼ内側みたいな部分で攻めている。
銃ビーストセージは特に誰かから誰かの手にすぐ渡っているらしい。 圧倒的気軽さだ。
剣ゼロエネミーは勝手に切り開いていくし勝手に守っている。
また別のパターンだ。
闇が炸裂し時空は裂け砕き空間は歪み。
さらに"拷問払い"で朱竜の左半身を執拗に打ち据える。
手応え抜群!
迫りくる両腕に対してさらに接近してひっつくように避けた後……
真上から吐かれる炎を大イバラでなんとか受けアツツツツツ!!
やっぱり威力が半端じゃない! 消火!
すぐに距離を取りつつついでに雷撃を放っておく。
当然のように弾かれた。
うわえげつない。あれぞアースだ。
『フン……やはり隠しきれんか』
「さっき飛空艇に撃たれたところ、ちゃんと治りきっていないんだよね。外側も内側も」
ちゃっかり自己再生したかにみえる半身。
しかしあんなに極大ビームくらって無事なわけもなく。
実態はズタボロだ。
反応もやや鈍くなにより攻撃が通りやすい。
ならば見逃す理由はなし。
ただこちらも今トランスしたドラーグとコロロ以外隠せぬズタボロ具合。
向こうはこちらの弱点をわざわざ狙うような体格差ではないが全身ズタボロなら防御能力の低下そのもの。
エネルギーの循環効率がさがればそれだけ傷が止められないのだから。
生命力は常に回復させ続けている勢いだが私だけでは手が足らない。
あと兵器軍が本当にもう数が削られてきている。
空からの支援もなし私のカバーだけで回していて。
朱竜が私に気を回しつつも普通に兵やリバイアサンも相手どっている。
「みんな、もっと距離を!」
「「うおおぉぉぉぉぉーー!!」」
「ッ……!」
何度か呼びかけて配置をかえようとするもののそれよりも熱くなって突進するばかり。
確かにダメージ効率は跳ね上がっているけれど……適正距離じゃない!
そこを見逃す朱竜でもなくて。
『さあ、そろそろ蚊の刺すような攻撃は打ち止めてもらおう!』
朱竜はほんの少し浮いてから。
地面に向かって炎を――
「ちょっとだけ、わかりました!」
――炎が受け止められる。
誰? と思う間もなくその姿が顕になった。
そう。あの巨体なのに少し下がっただけで異様に影が薄くなっていたドラーグ。
そのドラーグが突如現れたのだ。
ワープとか高速移動とかではない。
景色が歪むように現れたあたり最初からそこにいたのに一切感知できなかったのだ。
うそう……とうとう光の中にまで溶け込めるようになったの?
さらに驚くのはドラーグが炎を受けるごとに水晶鱗の色合いが赤く変わっていく。
……まさか朱竜の炎を吸収している!?
とうぜん吸収をする技というのは困難だ。
朱竜みたいな相手では逆にオーバーチャージされてなにもかもだめにされる可能性も高い。
それでも……受けきった。
『何?』
ドラーグが「ちょっとわかった」のならば安心だ。
ドラーグは頭のキレは折り紙付き。
1を知ればどこまでも知る。
ドラーグ全身の鱗が赤く朱く染まる。
水晶鱗たちが一色に染まり神力が渦巻いていく。
うわもう神力使いこなしているの!?
「クワァコロロ!」
「ん……コンバーション。アタックブレス」
「わかった!」
コロロが頭の上で槍を毒腕で持ち朱竜へ矛先をつきつける。
ドラーグが全身の水晶鱗から光をバチバチ鳴らしながら発して。
槍先に光が募っていく。
ドラーグも口を大きくあけてブレスの準備。
朱竜は今目の前で奪われたことに心底驚いたらしく一瞬固まった。
槍に募った光はあまりにも巨大化して渦巻き槍本体を覆い隠すほど。
変換されたエネルギー。
朱くなく白い……純粋なる破壊の力。
見るだけで怖気が立つ。
何という威圧感。
「パパ、いける」
「発射あああああぁぁぁーー!!」
迸る閃光。
ドラーグが吐いたブレスからの光。
それと共に投げられた槍は共に光の内側へ。
勢いに乗った槍は1つの流星みたく。
朱竜が腕を振るうが間に合わない。
腹部へと思いっきり叩きつけられる。
「グッ!」
「「はああぁぁーー!!」」
合わさった声。
新たなる力が駆け抜けるのにそこまで時間はいらなかった。
なにせあの力の多くはすでに折り紙付きの威力である。
朱竜のエネルギーなのだから。
「「ヤァーーッ!!」」
「馬鹿な……!」
槍が背後まで抜ける。
朱竜の横腹を貫き。
初めての……致命傷!




