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六百六十二生目 接戦

 本当に止まらない連続砲火により私の防御行動は抜かれてしまった。

 いや思ったよりずっと強いぞ!?

 もちろんあらゆる攻撃が私に集中しているのもあるけれど。


 尾からお返しに毒液を放ちつつ飛び回って少しでも被弾を避ける。

 でも私という的が大きすぎて避けきれないー!

 ジュッと言いながら脚や腕を擦っていくのが熱いのにヒヤヒヤする。


 イバラを復活させつつ魔法の効果を見る。

 "サンセッツ"は空から吸引力のある闇の球を落とす魔法だ。

 吸引力とされているが見立てからすると引力に近い。


 もはや万物を引っ張るように闇の塊が落ちて行く上アルセーラ朱竜は真上のそれから逃れる手段はない。 熱弾も多少引っ張られ飲まれたりあらぬ方向に飛んでいく。

 一方その頃"エクスプロージD"はというと。


 別に発動をミスしたわけではない。

 2つの巨大引力がアルセーラ朱竜にむかって落ちている間比較値からすると豆粒みたいな黒球2つがアルセーラ朱竜の周りをうろうろしていた。

 練習で使ったことが有る……頼りないが多分あれでちゃんと発動している……私が巨大化して使ったのは初だけど。


 私自身は少し楽になったところで急降下。

 闇に紛れ影へいくように。

 一瞬だけ普段無意識に使っている"無敵"を強く発動し"空蝉の術"を空中発動。


 当然変わりの土塊は用意できないし別に入れ替わりなどできない。

 しかし相手の敵愾心(ヘイト)を空に向けたまま実際は影で地に私がいるなんて芸当は出来る。

 今私自身は魔法の影響下を受けないよう魔法陣で守られているしね!


 近接戦闘だって出来る!

 さらにほぼ接触している"サンセッツ"により軽い上半身が引っ張られ下半身が重く地面に刺さって。

 問題だった腕がバンザイ状態になっている。


 近場で爪爪牙尾毒!

 連続で途切れないようにコンボしていく。

 もう一回!

 

 右前足を掲げ前に突き出す。

 敵の左肩をえぐったら止まらず身体の筋肉をうまく連動させ右前足を下に降ろしつつ左前足で胸を突き。

 そこまで行くとインに踏み込んで居るので脚が地につくと同時に頭……に生きたいが背が高いので腕にかじりつく。


 全動作は跳ぶように行っているため結構ギリギリの高さ。

 さらに止めとしてサマーソルトキック!

 飛び上がり身体をそって後ろ足で蹴りつつ同時に勢いで尾のイバラを叩きつける。


 先端には毒の花。

 骨身に溶解毒を刺しいれる。

 サマーソルトキックで距離が出来るのでまたいいバランスになる。


 その時ちょうど"サンセッツ"が身体まで降りてきて凄まじい引力と闇のエネルギーで叩き潰していた。

 効くのは微々たるものでも重ねることと動きの制限が大きい。

 遠くから飛ぶ砲撃が正確にアルセーラ朱竜の弱点を射抜く。


「グオ、ガガガガガ、ガガガァ!!」


 うわあなんかいきなりバグったかのような挙動見せないでほしい。

 なんか振るえて声が乱れて同じ音を立て鳴らしてと不気味。

 なによりそれが攻撃や防御に繋がっていないし。


 ただ確実に弱っているのはわかる。

 発狂系の敵は追い詰められるほど行動がわけわからなくなるし。

 ただここまで来ると相手のコアになっている部分を抜くスキにもなりうる。


 次のチャンス時に一気に攻め入るぞ。

 連続で同じ魔法を使うと耐性ができるし今の魔法時間長いから次に使うのは別だけれど。

 とにかく向き合い私は飛んで注目を集める。


 思考パターンそのものは複雑じゃない。

 アルセーラ朱竜の首元にあるアルセーラ像の輝きが強い。

 早くこっちを終わらせないと。


 何せ朱竜のほうはだいぶ苦戦している。

 ドラーグとリバイアサンが同時に組み合っても朱竜が単独で振り払ってしまう。

 そんなに炎の技を使わないようになったのに単に物理攻撃がめちゃくちゃ強いというのは強者の特権だ。

 ふたりにとにかく回復魔法は切らさないようにしておく。


『フン、どうした! もっとだ! その程度か!』


「まだ、まだぁ……!」


「パパ、まだいける……」


 ドラーグがコロロの声に立ち上がり再度立ち向かっていく。

 ああは言っているが限界が近いのは確か。

 回復が間に合わなくなっているのとすでに合計3回もドラゴンロアを切っていると聞いている。


 あれは疲労が凄まじい。

 行動力や生命力がなおせても疲労は休まねば。

 お腹もへるし水もいる。


 そして何より心が削れる。

 それでも立ち上がれるのはドラーグが親に立ち向かう気概ゆえか。

 ドラーグはもともとそんなに戦う気質じゃない。


 そしてドラーグは娘……じゃないけどコロロもいる。

 負けられないのはドラーグのほうもか。

 なにせドラーグは本当はこの戦い別に前線に出なくてもよかったのだから。


 ドラーグは志願してここにいる。

 彼も戦いの理由があるんだ。

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